Windows 10が用いるバージョン表記の1つに「BuildLab」がある。レジストリの「HKEY_LOCAL_MACHINE¥SOFTWARE¥Microsoft¥Windows NT¥CurrentVersion」キーにあるDWORD値「BuildBranch」をベースにしており、Windows 10 バージョン20H2であれば、「19041.vb_release.191206-1406」、後者は「vb_release」だ。なお、BuildLabにプラットフォーム名を加えた「BuildLabEx」もある。
BuildLabの値は「バージョン番号.ビルドブランチ.日時」という表記を用いており、最後の日時はMicrosoft Azureの開発部門下にあるWindows Coreチームがカーネルをビルドした時期だと思われる。たとえば、米国時間2020年11月4日にリリースされたWindows 10 Insider Preview ビルド20251のBuildLab値は、「Build 20251.fe_release.201030-1438」だ。ちなみにブランチは「枝」を意味しており、ソースコードを複製し、各ブランチで品質向上や新機能の検証を行う。ソフトウェア開発では一般的な用語である。
ここではビルドブランチ名に注目したい。過去のWindows 10では「th1」「th2」といった開発コード名を用いていた。だが、Windows 10 バージョン2004に至るInsider Previewは、途中で「vb」という表記を採用。DevチャネルのWindows 10 Insider Previewは「fe」、過去には「mn」を用いた時期もあった。
著名なMicrosoftウォッチャーであるMary Jo Foley氏は、自身の記事で「Microsoft Azure開発部門は開発コード名として元素名を採用している。その命令規則に従った」と述べているが、Microsoftは公式見解を明らかにしていない。
もう1つ注目すべきは、開発コード名の後に続く文字列。こちらは状態を表し、過去のビルドを一通り確認したが、「prerelease」「release」の2パターンのみ。DevチャネルのWindows 10 Insider Previewも、それまで前者の「rs_prerelease」を用いていたが、米国時間2020年10月29日にリリースされたビルド20246から「fe_release」に切り替わった。つまり、「ビルドブランチを切り替えて、次期Windows 10のリリース準備に取りかかった」ことを意味する。近い時期にベータチャネルにもWindows 10 Insider Previewの提供が始まるのだろう。
2021年の春に登場するであろうWindows 10 21H1に、Windows 10 Insider Previewの機能がどれだけ取り込まれるかは、いまの段階では分からない。加えて、コロナ禍で使用頻度が高まったPCの安定性を重視し、新機能の実装を控える可能性もある。筆者もメインPCは通常版に切り替え、Windows 10 Insider PreviewはサブPCで検証するようにしたほどだ。UIの刷新などのうわさが飛び交う21H1だが、実態はベータチャネルやリリースプレビューチャネルでの提供を待つしかない。