京都府内でトロッコ列車を運行する嵯峨野観光鉄道は11月6日、「嵯峨野トロッコ列車ライトアップ」試乗会を開催した。夜間に行われ、昼間とは異なるトロッコ列車の旅を楽しむことができた。

  • 嵯峨野観光鉄道が「嵯峨野トロッコ列車ライトアップ」試乗会を開催。ディーゼル機関車DE10形が牽引する

嵯峨野観光鉄道はトロッコ嵯峨~トロッコ亀岡間を結ぶ全長7.3kmの路線を運営。1989(平成元)年の山陰本線複線化にともない使用されなくなった線路を活用し、1991(平成3)年に観光路線として再出発した。開放的なトロッコ列車が運行され、保津峡の渓谷美を存分に楽しめることから、国内外を問わず多くの観光客から人気を集めてきた。

「嵯峨野トロッコ列車ライトアップ」試乗会は、11月6日の通常運行が終了した後、18~19時台にかけて行われ、招待者や報道関係者らが参加した。嵯峨野線(山陰本線)嵯峨嵐山駅に隣接するトロッコ嵯峨駅を出発し、トロッコ亀岡駅まで往復した。

  • トロッコ列車の始発駅、トロッコ嵯峨駅

  • トロッコ列車の走行区間は1989(平成元)年まで山陰本線だった

  • DE10形には「嵯峨野」のエンブレムとともに寝台特急のマークも

  • トロッコ亀岡側の客車には運転台があり、トロッコ亀岡行の列車はDE10形が客車を押し上げる

  • 5号車は窓ガラスのないオープン車両「ザ・リッチ号」

  • 他の車両は側面に窓ガラスがある

トロッコ列車は18時17分にトロッコ嵯峨駅を発車。18時台とはいえ、日没からすでに1時間以上が過ぎ、沿線は暗闇に包まれていた。旧山陰本線の線路をディーゼル機関車の牽引で列車が走り、その姿はかつての寝台列車も想起させる。今回、筆者が乗車した車両は窓ガラスのないオープン車両「ザ・リッチ号」ということもあり、ひんやりと張り詰めた空気が気持ちよく感じられる。

トロッコ嵐山駅を過ぎると、いよいよライトアップ区間に入る。沿線のもみじは約1,000本もあり、約800のライトが木々を照らした。

嵯峨野観光鉄道におけるライトアップは2005(平成17)年からスタート。今年はライトアップをより楽しんでもらえるように、ライトの調整を行ったという。トロッコ列車はライトアップを行う箇所で停まり、車掌による解説も行われた。11月初旬のため、紅葉は所々で見られる程度ではあったものの、青々としたもみじも幻想的で、参加者を魅了した様子だった。

  • 紅葉は見頃を迎えていなかったものの、青々としたもみじによる幻想的な風景を楽しめた

鉄道好きならトンネルにも注目したいところ。嵯峨野観光鉄道のトンネルは明治時代、旧京都鉄道によって建設され、レンガ造りとなっている。2019年には、「嵯峨野観光鉄道の構造物群」として、土木学会の選奨土木遺産に認定された。車内からもレンガ積みの様子や、蒸気機関車の煙によって黒く煤けた跡が確認できる。トロッコ亀岡駅には18時50分頃に到着し、同駅で折り返した後、トロッコ嵯峨駅に戻った。

嵯峨野観光鉄道では、沿線のライトアップを楽しめるように臨時列車を設定。12月6日まで「嵯峨野81号」(トロッコ嵯峨駅17時10分発)・「嵯峨野82号」(トロッコ亀岡駅17時40分発)を毎日運転するほか、11月12日から12月1日まで「嵯峨野91号」(トロッコ嵯峨駅18時17分発)・「嵯峨野92号」(トロッコ亀岡駅18時55分発)も運転される予定だ。なお、トロッコ列車の運行にあたり、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、ガイドラインにもとづき十分な対策を行うとのこと。