コロナ自粛のなか自宅ですごす時間が増え、ペットを飼う人が増えているようだ。犬との触れ合いは時に人を変え、家族や恋人の関係も変える。しかし、犬を飼うということは大切な家族が増えるということ。実際に飼う前にクリアしたい条件や飼わずに犬と触れ合うための方法などについて、ドッグライフカウンセラーの三浦健太さんに聞いてみた。
犬はファミリー。人生を変えるきっかけをくれる存在
欧米と日本では人間と人の付き合い方に違いがあります。犬がいる家庭が当たり前な欧米では、犬は「パートナー」。共に猟をする相棒的存在でした。ですから猟ができない出来の悪いパートナーはもういらなくなります。
一方、日本では犬は「ファミリー」なので、できが悪くてもかわいい。犬は私たちの日常風景の必ずどこかにいて、飼い主の人生を変えるきっかけを与えてくれたり、傷ついた心を癒してくれたり、家族の絆をつなぎとめてくれたりします。人を噛んでも悪さしても、まだ庭の片隅で飼ってくれる。日本人の方が犬への接し方がやさしいと思います。
犬の寿命は15年前後。「犬の1年は人間の6年」と言われるように“犬の一生はあっという間”です。その短い一生の間、飼い主にたくさんの気づきや幸せを与え続けてくれる犬たちと、私たちはどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
「今日も元気で良かったな」と思えれば、それだけで幸せ
犬と上手に付き合うにはまず、「犬の性格をよく見てあげること」が大切です。あまり「こういう犬が欲しい」とか「こういう犬がいい」とか思わないこと。その子を「どういう子にしたい」ではなくて、その子の良いところを探してあげてほしいのです。人間も一緒で、親が「こうなってほしい」と思うようには子は育ちません。思いやりを持ってその子の特技や能力をのびのびと伸ばしてあげたほうが、人間も犬も幸せに育つものです。
「うちの犬は引っ張り癖が激しいのでどうにかなりませんか? 」「噛み癖がひどくて…」などと相談を受けることがよくありますが、それも個性。こちらの見方ひとつ変えれば「あ、今日も元気で良かったな」って思えるようになるものです。
逆に良い子の方が、思い出が薄いということもあります。ある飼い主さんは同じ犬種を6代にわたって飼い続けていて、ご自宅の仏壇には5頭分の遺灰がありました。「この5頭の中で1番思い出深いのはどの子ですか? 」と尋ねると、「1番悪いやつだね。この子の時にはよく近所に謝って歩いたし、郵便屋さんも危なくて来てくれなくなるところだった」と笑って答えてくれました。
犬を飼いたい! でもその前に最低限クリアしたい条件とは
これまで「犬と共に暮らすとこんないいことがあるよ」というお話をいろいろしてきました。でも残念ながら犬を飼いたいと思えば誰でも飼えるというわけではありません。若い人、特に独身の方にはあまり飼うことはおすすめできません。
その理由としてはまず、犬を飼うと泊まりや長期の旅行には簡単に行かれなくなるからです。日本ではまだ犬を預ける文化が浸透していませんし、きちんとしたところに預けようと思えば結構お金もかかります。餌代や医療費などの経済的負担も増えますし、特に単身の方が犬を飼うと1人でも淋しさがまぎれるためか婚期を逃してしまう傾向があります。
もしどうしても飼いたいという場合は、少なくとも恋人、友人、実家などに、いざという時に世話を頼めるかどうか、相談してからの方がいいと思います。生き物を飼うということは、それなりの覚悟が必要なのです。
ファーストステップは犬と触れ合うことから
安易に犬を飼うことはおすすめできませんが、犬に触れ合う時間を持つのはいいことです。いちばん簡単ですぐにでもできそうな方法は、ご近所に老夫婦や独り身のご老人などで犬を飼っている方がいれば、挨拶をして顔見知りになってから、飼い犬と触れ合ってみるのがいいと思います。
また、老人施設に犬を連れて慰問しているボランティア団体や、小学校の生徒たちが犬と触れ合える機会を提供している団体、保護犬の面倒を見ている団体などがありますから、そこでボランティアとして活動してみるのもおすすめです。
人間社会の中だけで日々揉まれているよりは、月に1~2日でも犬の世界を知ることは、コミュニケーションのスキルアップにもつながります。言葉を交わさずに相手を理解したり、自分と違う感性の他者を認める、ということを自然に学ぶことができます。