今まで学生だった人が新卒の社会人として仕事を始めるときや、今までと全くやり方が違う会社に転職したとき、また同じ会社であっても異動したときなど、「何がわからないかわからない」「わからないことがわからない」という状態に陥ってしまうことがあります。
すると上司や先輩から「わからないことがあったら聞いてね」と言われても何をどう質問したらいいかわからず、また検索しようにもどんな言葉で調べればいいかわからなくて、つらいものです。
本記事では何がわからないかわからない原因やすぐできる解決方法を紹介。困っている新人への上司の接し方もまとめました。
仕事で「何がわからないかわからない」となる原因とは
「何がわからないかわからない」というのは、何もかもが初めてのことだらけ、わからないことだらけで、自分自身が迷子になっている状態です。
以下でもう少し細かく、「何がわからないかわからない」原因を見ていきましょう。
与えられた目標や仕事が、自分にとって大きすぎて分解できない
自分の取り掛かろうとしている仕事が大きすぎると「まずは何から着手すればいいのか」「どうやってやればいいのか」「正解は何なのか」「どの程度の時間を掛ければいいのか」「自分に足りていないものは何なのか」など、ゴールへの道筋が全く描けません。
例えば入社した会社で営業部に配属されたあなたが、上司から「3カ月後に、○万円を売り上げなさい」とだけ言われたとします。
もしあなたが営業経験がある人ならば、
- 自分が取り扱う商品の大体の単価はいくらか
- その上で、何社(何人)に何個ずつ買ってもらえれば目標金額に届きそうか
- この営業部の傾向として、商談に対する成約率は大体どのくらいか
- その上で、何件の商談をすれば良さそうか
- この営業部の傾向として、テレアポの取得率は大体どのくらいか
- その上で、何件電話をすれば良さそうか
- そもそもターゲットは、顧客リストが割り当てられるのか、自分で0から開拓する必要があるのか
など、目標や課題を達成するための道筋を思い描くことでしょう。
さらに「テレアポは得意なので対策はそこまで必要なさそうだ」「商談に備えて、自社の商品知識を身に付けなければ」「商品情報がわかりやすくまとまった資料が無いか、上司に聞いてみよう」など、自分がその目標や課題に対してどういう状態にあるのか、何が足りないのか、そして足りないものを補うために何をしたらいいのかなどを考え、質問したり行動したりするのではないでしょうか。
もちろんこれは一例であり、細かい方法に正解はありません。しかし、目標や仕事を自分なりにかみ砕いて、小さくしていくということは共通するでしょう。
しかしあなたが新卒で、営業経験が全く無い場合はどうでしょうか。売り上げを作るためにはどのようなステップがあるのか、0から想像するのはなかなか難しいですよね。
仮にステップを教えてもらえたとしても、ざっくりすぎるとそれを細かくしていくのはまだハードルが高いです。
そうすると上司や先輩から「わからないことがあったら聞いてね」と言われても、「何がわからないかわからない」「全部がわからないのだが、素直にそう聞いていいのだろうか…」「自分に何の意見も無い状態では聞きづらい」などとなってしまいます。
また新卒でなくとも、その組織特有の業務についての引き継ぎがない、マニュアルが無い、全体概要の説明が無いなどの場合に、「とにかく進めておいて」と言われたら困ってしまうでしょう。
このような場合、必要な手掛かり無しに仕事を雑に振っている、その会社や部署の環境にも原因があると言えそうです。
今まで言われたタスクしかやっておらず、自分で考えて分解することができない
また今までも結果的には同じような仕事を経験したことがあったとしても、細かいタスク単位で指示されたことをやったのみで、なぜそれをやっているのかや、全体像が見えていなかったという場合もあるでしょう。
この場合も、いざ自分一人で大きな単位の目標や仕事を細かくしていかねばならないときや、トラブルが起きたときなどに応用ができず、「何がわからないかわからない」という状態に陥りやすいです。
タスクを指示されたときは、「わかったつもり」でただ手を動かすだけではなく、自分事としてその一つ一つの意味や影響を考えながら動くからこそ、経験や知恵になるのです。
「何がわからないかわからない」ときの対処法とは
では実際に「何がわからないかわからない」という混乱状態のとき、どうすればいいのかを見ていきましょう。
自分を責めすぎない
まず覚えておいてほしいのは、「何がわからないかわからない」という状態は、誰にでも起き得るということ。
「自分がダメだからわからないんだ」「私はなんで無能なんだ」などと、自らを責めすぎないようにしましょう。
マニュアルを再度確認する
「何がわからないのかわからない」ことに対して、もしマニュアルやオリエンテーション資料、説明のメモなどがあるのなら、一度読んだとしても、もう一度じっくり目を通してみましょう。
一回読んだだけでは何もわからず混乱してしまったとしても、何度か読むうちに少しずつ意味がわかる箇所が出てくる可能性があります。
あるいは、どこの部分が特にわからないのかが見えてくることもあります。特にわからない部分には印をつけたり、疑問に思っていることをできる限りでメモしたりするなどしてもいいでしょう。
頭に思い浮かんだこと紙に書き出す
「何がわからないかわからない」ときは、それについて今自分が思っていること、不安なこと、想像できる選択肢など、頭に思い浮かんだことを書き出してみましょう。
分類や時系列などが、きれいにまとめられている必要はありません。全く的外れの内容でもいいのです。とにかく何でもいいので書き出してみてください。
書いているうちに、だんだんと思考が整理される可能性があります。また書き出したことの中から、質問する際や検索する際の取っ掛かりが見つかる可能性もあります。
大切そうなことに下線を引いたり、関連しそうなことを矢印で結んだり、グループになりそうなものを囲ったりしやすいよう、紙に書くのがおすすめです。
上司や先輩に悩みを聞いてもらう
一人で悶々(もんもん)とするうちに解決の糸口が見つかることもあるので、自分だけで悩む時間も大切です。しかしますます迷子になってしまったり、いたずらに時間が過ぎてしまったりする可能性もあります。
そこで、「何がわからないかわからない」ことについて、上司や先輩に悩みを聞いてもらいましょう。このとき「質問があるのですが…」と切り出すと、ややハードルが上がってしまいます。
ですから「○○の件について、悩んでいるので相談に乗ってもらえませんでしょうか?」などと切り出すといいでしょう。そして、正直に「何がわからないかわからなくなってしまった」ということを伝えましょう。
ただし聞き手によっては、そうは言われたもののどう話を進めていけばわからない、という人もいます。そこで「自分なりに考えてみたのですが、こういう流れでいいのでしょうか…?」などと、簡素で的外れなことでもいいので話のたたき台になることを持っていくと、相手もまずはそれに訂正したりアドバイスをしたりすることから話を発展させられるので、教えやすいでしょう。
あるいは、「○○の件について、何がわからないのかわからなくなってしまって…。大変申し訳ないのですが、もう一度説明していただけますでしょうか」「もう少し細かく説明していただけますでしょうか」などと依頼してみましょう。
そうすれば相手は説明する際に、簡単な言葉に言い換える、話す順番を工夫する、より詳細に説明する、ここまでの話について来られているか適宜確認するなどの工夫をしてくれるでしょう。
ChatGPTなどの対話型AIチャットサービスに聞いてみる
上司や先輩にいきなり聞くのは緊張してしまう、忙しそうで声を掛けられないなどの場合は、ChatGPTなどの対話型AIチャットサービスに聞いてみるのも一つの方法です。
間違った情報を返される可能性もありますが、人間と違って気を遣う必要はなく、イライラし出すということもないので、何度も何度も、気兼ねなく質問することができます。
「何がわからないのかわからない」事柄に対して、「○○とは何?」「○○の基本的なやり方を教えて」「○○にはどんな方法があるか教えて」などと、ざっくりとでもいいので質問をします。得られた回答の中から、気になることはさらに深掘りして聞いていきます。これを繰り返すうちに、何となくの全体像が見えたり、質問や検索をする際の糸口が見つかったりする可能性があります。
分解していく
今まで説明してきたことを試しながら、「何がわからないのかわからない」事柄を小さく分解していきましょう。
するとただ漠然と「何がわからないかわからない」という状態から、「ここがわからないということがわかった」「ここはわかるけどここはわからない」「ここは概念はなんとなくわかるけど具体的な方法がわからない」「ここに何かが足りないのではないか」といった考えができるようになっていきます。
分解したら、自分なりに整理したりまた先輩に質問したり検索したりして、その結果を基にさらに分解して…ということを繰り返すことで、自分が扱える粒感のタスクにしていきましょう。
わかったふりは厳禁
なおコミュニケーションが苦手だったり、評価が下がることを恐れたりして、「わかったふり」をしてしまう人がいますが、これは厳禁です。
「わかったふり」をするのはありがちなことですが、わかっていないのに「わかりました」と言ってしまうと、その後質問しづらくなります。
またわからないのにわかったふりをすることで解決が遅れ、締め切りに間に合わなくなったり、問題が大きくなったりしてしまいがちです。結果的にはこの方が、評価が下がってしまうでしょう。
「何がわからないかわからない」状態に陥った新人への、上司や先輩の接し方
さて、逆に自分が指導する立場で、新人が「何がわからないかわからない」状態に陥っていたらどうすればいいのでしょうか。
一番大切なのは、イライラしないこと。部下や後輩がせっかく勇気を出して助けを求めてきたのに、「で、何が知りたいの?」などと冷たく言ったり、表情や態度にイラつきが出てしまったりしては、彼らは萎縮してしまいます。
要領を得ない質問をされてやきもきしたり、同じことを何度も聞かれてイラついたりしてしまうのは理解できますが、最初のうちは大目に見てあげましょう。
質問をしてこないことに対してイライラしてしまうのもNGです。
また「わからないことがあったら聞いてね」「わからないことはない?」などと声を掛けるのも、一見親切ですが、全くの新人に対しては難易度の高い問い掛けです。
代わりに、「○○について、今理解できている範囲だけでいいから、どんな感じか聞かせてくれる?」「○○について、今想像で思い描けている範囲だけでいいから、道筋を聞かせてくれる?」などと声を掛けるといいでしょう。
それに対して新人が答えることを、否定せずに対話しながら、整理してあげましょう。もちろん、答えがたどたどしかったり、的外れだったり、答えることができなかったりしても、イライラしないであげてください。
何か糸口を見つければ、あとは新人も解決に向けて自走できるようになるはずです。根気強く導いてあげましょう。
「何がわからないかわからない」「わからないことがわからない」に打ち勝とう
「何がわからないかわからない」「わからないことがわからない」ということは誰にでもあります。
もしそんな状態に陥っても、自分を責めすぎる必要はありません。
まずは自分が「何がわからないかわからない」という状態にあることを認めて、他者の力も借りながら、少しずつでいいので前進していきましょう。