テレワークでメイクが控えめになり、「肌荒れが減った」「マスクで肌が潤った」など、肌トラブルが減ったという人がいる一方で乾燥に悩む人も。そんな読者のために、マスクや化粧水など、乾燥対策の正解を、医師の木村至信氏(通称、キムシノ)に聞きました。
マスクをしているのに乾燥するの?
マスクを着けると、吐く息の中の水蒸気がマスク内で循環し、潤ったような気になります。が、それが逆効果になることがあるらしい!?
――マスクを着けるとしっとり感がありますが、逆に乾燥するってどういうことでしょう?
キムシノ氏: マスクを外したり着けたりを繰り返すこと、また、着用中にマスクの生地が肌に擦れることで肌に摩擦が生じます。それが肌への刺激となると、角質層がはがれやすくなって、バリア機能が低下します。それが原因となり、潤い成分が蒸散し乾燥することがあるのです。また、肌はダメージを受けやすいデリケートな状態になってしまいます。
――確かに、寒くなるとマスクを外した時の冷気がきつい……と感じることがありますね。
キムシノ氏: マスクを外すと、「マスクで覆われ肌に接していた空気」と「外の空気」との間で、温度差が生じます。また、マスクを着けている時は呼気の中の水分量が増えますが、外すと急激になくなり、肌は一気に乾燥状態です。こうした温度差や湿度差を繰り返し受けると、バリアと保湿力を乱されて肌荒れを起こすことが考えられます。
――「マスクで肌荒れがひどくなった」という声もあります。マスク生地でなく、乾燥が原因かもしれませんね。
キムシノ氏: そうですね。現に、今までにない「尋常性ざ瘡(いわゆるニキビ)」がマスクの内側にできたことで受診する方がたくさんいらっしゃいます。マスクで蒸れている間に、口の周りの雑菌も繁殖し、皮膚に炎症を起こす例もあります。
マスクで迎える2回目の冬はこう過ごす!
マスクはすっかり暮らしに浸透しましたが、意外と知らないこともいっぱい。せっかくの機会なので、いろいろ聞いてみました。
――マスクの基本的な取り扱い方法を教えてください。
キムシノ氏: 基本的には、家では外しましょう。仕事柄、終日マスクを外せない方は、口周りに汗をかいたら、清潔なハンカチなどでこまめに拭きます。それでも、マスク内で唾液などにより、雑菌が繁殖するものです。顔に付いた菌や汚れを落とすため、洗顔は丁寧に。日中、マスクで擦れてカサカサになりそうなところには、あらかじめワセリンを塗って保護するのがお勧めです。
美容大好き女医直伝の美肌テクニック
キムシノ氏は、美容整形外科でのキャリアも豊富。秋冬のうちに美肌をゲットし、キープする方法を聞いてみましょう。
――肌ケアに重要なのは、洗顔と保湿ですよね。基本を教えてください。
キムシノ氏: 洗顔料や化粧水などは、低刺激なものを選びましょう。刺激が少ないもので、マメに、しっかり洗顔するのが基本です。洗顔料は、しっかり泡立てから使いましょう。私は普段、ハイドロキノン配合のサンソリットの黒の石けんを使ってシミ対策をしています。非常にきめ細かい泡ができる石鹸です。
シミや黒ずみなど、顔や体の気になる部分に泡を乗せて、5分くらい置いてから洗います。洗った後の乾燥感は少なめです。4タイプあるので自分に合ったものを選んでください。冬場は、普段より低刺激のものに替えるのが理想的です。
――サンソリット、いいですね。もうちょっと手に入りやすいコンビニコスメで、お勧めできるものはありますか?
キムシノ氏: ファンケルの「洗顔パウダー」(税込1,320円/50g)は無添加でもあり、良いですね。
パウダータイプなので、うまく使うにはコツがいります。まず、手が肌に触らないくらいしっかり泡立てて、手でなく泡で洗いましょう。毛穴のゴミを浮き出させるよう、3分くらいかけて丁寧に洗ってください。そして、洗い流す時、皮脂を洗い流しすぎると乾燥につながるので熱いお湯はダメ。十分な量の水やぬるま湯ですすぎ、髪の生え際や小鼻などに洗顔料が残らないように。
拭く時は、タオルで押さえるように水分を取ります。少し水が残っていても大丈夫です。洗顔後、肌の乾燥が始まる30分以内に化粧水やクリームなどで保湿をしましょう。化粧水は手の平で温めながら行うと良いです。
――やっぱり、保湿は重要ですね。
キムシノ氏: 乾燥が続くと小ジワが確実に増えます。化粧水で水分を補い、乳液・クリームの油分で閉じ込めるという基本のスキンケアが「シワを予防する」「肌のバリアが強くなる」と信じて毎日やります! 乾いたなと感じる時はすでに乾燥が進行しているので、早め早めに。
私は乾燥肌なので、保湿機能に特化したヘパリン類似物質のスプレーをたっぷり使います。乾いたら、もう一度。首、鎖骨までしっかりマッサージしながら3回繰り返します。最後にうっすらベビーワセリンで閉じ込めて終わり。夏の昼間は美容液かつUVカット効果のあるものを、水分の閉じ込めに使っています。
美容ケアを続けるコツ
――美肌のためとはいえ、手間も時間もかかりますね。ケアが続くコツを教えてください。
キムシノ氏: 基本的にズボラなので、化粧水と美容液が一緒になったオールインワンで、保湿効果の高いものを探していました。ですが、「帯に短したすきに長し」のようなアンバランスを感じていたのです。その中で最近気になっている成分はサクランという成分。
サクランは保湿剤の主流であるヒアルロン酸や、健康食品に用いられるコンドロイチン硫酸などと同じ「多糖類」という物質です。2006年、北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科金子研究室の研究者らは、日本固有の食用藍藻でスイゼンジノリからサクランを抽出することに成功しました。
サクランの大きな特徴の一つは保水力。化粧品の保湿剤として、一般的なヒアルロン酸と比較すると、純水では約6倍、塩水では約10倍の保水性を示します。またヒアルロン酸の80倍の粘性を示し、触れた瞬間劇的に粘度が上昇するという珍しい性質があります。
化粧品に配合すると、肌に乗せた瞬間にしっかりとしたつけ心地が感じられます。アトピー性皮膚炎患者へのサクラン塗布実験で、炎症部位がステロイド塗布よりも症状が緩和されるという結果が出たというデータもあります。これならオールインワンでも、深層まで潤うはずです。
サクラン入りで、無香料、無着色、アルコール、パラペンフリーのものがないかなと探したところ、楽天市場やAmazonなどでいい感じのアイテムが見つかり、中にはサクランの原液を販売しているショップまで。
ただ、素早く肌になじむという点では、久光製薬の「ライフセラ ダーマボーテ 100ml」(税込3,850円)が優れています。私はいつも化粧水を3回繰り返しつけますが、30分間隔で2回でもかなり潤いますね。
キムシノ氏: 最後にひと言。肌がヒアルロン酸を生成、保持する能力は20代を頂点に、どんどん減退して、ハリがなくなり乾燥します。値段の高いものをケチケチ使うのではなく、コスパのいいものを繰り返し使うことが大切。
肌が良くなるイメージを持って毎日続けましょう。睡眠やバランスの取れた食事も大事。できれば22時から3時の間は睡眠に充ててほしいところです。
取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)
横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。