阪神電気鉄道は31日、武庫川線で運行され、今年6月に引退した「赤胴車」を都市再生機構(UR都市機構)へ譲渡するセレモニー「赤胴車引継ぎ式」を開催した。譲渡された「赤胴車」は2021年春、武庫川団地内に設置予定となっている。
「赤胴車」は上部をクリーム色、下部をバーミリオンに塗り分けたツートンカラーの車両。昭和30年代の登場当時、人気のマンガキャラクターだった「赤胴鈴之助」にちなみ、「赤胴車」の愛称が付けられた。以来、急行用車両の「赤胴車」は阪神電車の伝統的なカラーとして、普通用車両の「青胴車」とともに長きにわたり親しまれた。
急行用車両のカラーが変更された後も、武庫川線に「赤胴車」が残り、2両編成で武庫川~武庫川団地間を運行していた。しかし車両更新にともない、5500形を改造した新デザイン車両が導入されることになり、今年6月に「赤胴車」は武庫川線から引退した。
阪神電気鉄道とUR都市機構は今年3月、地域の交流、暮らし、健康等の分野で相互に協力し、阪神電車沿線のUR賃貸住宅団地を中心とした地域の活性化に資することを目的に包括連携協定を締結。連携のシンボルとして「赤胴車」1両が譲渡され、武庫川線沿線のUR団地である武庫川団地内に設置されることになった。
「赤胴車引継ぎ式」は阪神電車の尼崎車庫で開催され、武庫川線で活躍した「赤胴車」の中から7890形を展示。「赤胴車」を置き換えた新デザイン車両「タイガース号」との“対面”も果たした。武庫川団地の小学生と保護者らが式に招待され、尼崎駅管区駅長から小学生へ、「赤胴車」で使用されたブレーキハンドルと贈呈証明きっぷを贈呈。あわせて絵画コンクール「ぼくとわたしの阪神電車」の表彰式も開催され、大賞受賞者(大阪市の小学2年生)は尼崎駅の1日駅長に任命された。
式の終了後、「赤胴車」の見学会が行われた。展示された7890形の方向幕は手作りで、「ありがとう 阪神電車 → よろしくね UR武庫川団地」とデザインされていた。最近まで武庫川線で活躍していた車両だけに、車内では「懐かしい!」との声も聞かれた。運転台も見学可能で、小学生たちが列を作り、中にはマイクを使って車掌のものまねを始める子も。武庫川線の新デザイン車両「タイガース号」による洗車機通過体験もあり、普段の電車では味わえない体験を楽しんだ様子だった。
譲渡された「赤胴車」は、武庫川団地内で2021年春の設置を予定しており、地域の人々が交流するコミュニティスペースとして活用される。60年以上にわたり親しまれた「赤胴車」が、UR団地内でコミュニティを支える役割を担う。
阪神電気鉄道とUR都市機構は、他にも連携施策として、子育て支援や女性活躍支援、ウォーキング等のイベントをUR団地で実施予定。今後の人口減少や少子高齢化といった課題を共有し、コミュニティ形成や各種支援を充実させることで、地域の活性化に取り組むとのこと。