未経験での転職の場合、自分の能力をどうアピールしていいのかわからず志望動機の作成に困ってしまうという方も多いでしょう。
しかし、未経験であることをデメリットに感じる必要はありません。自分の情熱や仕事に対しての姿勢、前職から応用できるポイントを伝えることで「採用したい」と思わせる志望動機を作ることができます。
本記事では、未経験の業種・職種に応募する際の志望動機のポイントを例文も交えてご紹介します。
未経験者にも種類がある
新しいキャリアを作るために未経験可の求人を探しているという人も多いのではないでしょうか。求人でもよく「未経験者歓迎」や「未経験可」という文字を目にします。これはどういった意味なのでしょうか。
応募する前に企業がどのような未経験者を募っているのか、よく募集要項などを通して確認することが大切です。まず、未経験の種類について紹介します。
業界未経験
業界未経験とは、一度も働いたことがない業界に転職しようとしている人のことを指します。業界が変われば同じ職種でも細かなルールや慣習が変わります。
例えば、同じ経理職に応募する場合も、食品業界から医療業界への転職であれば「業界未経験者」です。志望動機を書く際は、前職から変わらず生かすことのできるスキルなどをアピールするのがいいでしょう。
職種未経験
職種未経験とは、その職種自体初めて経験するという人を指します。
例えば、同じアパレル内でも販売員からマーケターを目指す場合は「職種未経験者」です。職種自体が初めてとはいえ、業界の慣習や利益が出る流れを理解できていることは採用に有利に働きます。
完全な未経験者
業界も職種もまったく異なるところから新たな職種に挑戦しようとしている人がこれに当たります。知識や経験がないと不利ではないかと思われがちですが、実はそうとも限りません。企業が完全な未経験者を採用するメリットについて、以下で詳しく説明します。
企業が未経験者を採用するメリットは?
経験者採用が一般的な転職市場で未経験者を採用するメリットはどのようなところにあるのでしょうか。企業がどのような未経験者を探しているのかがわかれば、志望動機を作る際や自己PRをするときにも役立ちます。まず、企業が未経験者を採用するメリットをご紹介します。
意欲がある
未経験者は、わざわざ今まで職業を変えて新たなキャリアを形成しようと応募してくる方ばかりです。やる気に満ち溢れていて、学ぶ意欲もあります。仕事に慣れている経験者よりも、一生懸命に吸収する未経験者の方が成長が早く、活躍する人材になってくれる可能性があります。
そのような前向きで意欲のある人がくるように期待を込めて「未経験者可」の求人を出している企業も多いです。
他分野での経験を生かしてくれる
業種・職種自体は未経験であっても、今まで他の会社で働いていた経験のある方も多いでしょう。基本的な社会人としてのマナーやPCスキルなど、業界が変わってもそのまま今までの経験やスキルを活かしてほしいと企業は考えています。
さらに今までとは、まったく違う空気を持った人が入ることで社内に新しい風を呼び込む働きもありますし、慣れている人では出せない斬新な業務改善のアイディアを出してくれるかもしれません。
未経験可とはいえ、今までの職歴がすべてなかったことになるわけではありません。今までの職歴や経験をしっかりと評価してもらうことが大切です。企業は今までの経験から得たスキルや、新たな目線を期待しているのです。
人員不足を解消したい
一般的に、職種経験者を募集するよりも未経験者を募集する方が窓口が広く、多くの応募がきます。職場の人手が足りず、とにかくたくさんの応募がほしい際にも「未経験可」の募集をすることがあります。この場合、企業は未経験の方の熱意や新たな目線を期待して募集しているわけではないので、経験者が応募してきた場合はそちらの方が優先される可能性もあるかもしれません。
経験者の人に負けないよう、熱意や他の職種でも使える社会人としての基礎能力をアピールしましょう。
未経験だからこそ志望動機で盛り込みたいポイント
企業が未経験者を募るメリットを知ることができました。企業が求めている未経験者像に合った自己PRができれば、採用される可能性も高まるのではないでしょうか。次に、未経験者だからこそ志望動機で盛り込みたいポイントをご紹介します。
「なぜ興味を持ったのか」を伝える
まず企業が知りたいのは、「なぜ今までの職業から新しい仕事に転職しようと思ったか」というきっかけです。自分が新しい職場で1から頑張ろうと思っているという姿勢を表すために、なぜ興味を持ったのかは具体的に伝えるようにしましょう。
転職にはさまざまな理由がありますが、あくまでもスキルアップのための前向きな転向であるということは忘れずにアピールするようにしましょう。
「残業が多かった」や「自分には向いていなかった」などとマイナスなことばかり述べていると採用側に暗い印象を抱かせます。「自分から努力できない人なのか」や「うちも合わなかったらすぐにやめてしまうのか」などと思われてしまうかもしれません。
現在勉強中であることを伝える
未経験可の求人の場合、「一から勉強する」姿勢は大切です。しかし、最初からすべて受け身でいると「自分から学ぶ気がないのだろうか」とマイナスに捉えられてしまう可能性もあります。
転職に向けて資格をとろうとしていたり、オンライン講座などを受けたりしている場合は、ぜひ積極的に伝えるようにしましょう。転職にかける真剣さが伝わりますし、「時間を見つけて自分から進んで努力ができる人」というイメージになり、好印象です。
積極性や適応能力をアピールする
未経験の応募者に企業が期待しているのは、積極的に学ぶ姿勢です。さらに、職場の中にすぐ溶け込めたり、新たな業務でも柔軟に対応できたりするような適応能力の高さも重要です。
適応能力が高いことをアピールすると「伸びしろがある」「入社してからもっと成長してくれるかもしれない」というプラスの評価になります。自分が1から何かを学んだ経験のある方や、新しい環境に飛び込んだ経験のある方はその姿をアピールするのもおすすめです。
新しい業種でも生かせるスキルをアピールする
PCスキルやコミュニケーション能力など、新たな業種へ転向しても生かせる能力は多くあります。
同じ未経験者であっても、新卒とは違い転職採用で期待されているのは社会人としての基礎能力です。未経験だから、と謙遜せず今までに培ってきたスキルを自分の魅力として捉え、新たな場でも活かすことができるようにしましょう。
上司との細かい連絡や社内での情報共有を密に行うことや、マルチタスク管理能力など、自分ではそれほどアピールすることではないと思っていても、先方からすれば採用したい人材だと思ってくれるかもしれません。自分が前職でどのような経験をして、どのようなスキルを活かすことができるのかは必ずアピールすることが大切です。
未経験の志望動機のNGは?
反対に、未経験者が志望動機を作るときに気をつけなければならない点にはどのようなものがあるのでしょうか。未経験の志望動機のNGをご紹介します。
興味を持ったきっかけが見えてこない
未経験から転職する際、なぜ新しい業種を目指そうと思ったか、なぜ数ある会社からうちの企業を受けようと思ったのかというきっかけが見えてこない志望動機はぼんやりとしたものになりがちです。
志望動機として説明しなくても、面接などで必ず質問されるので答えられるようにしておきましょう。新しい挑戦としてこの業界を選び、中でもこの会社で働きたいということをしっかり言語化することができれば、強い意欲が感じられるいい志望動機になるはずです。
受け身の姿勢である
未経験の場合は新しく仕事を学ぶことになるので、挑戦するという意欲を見せることは大切です。しかし「勉強させてもらう」「成長していきたい」などあまりにも受け身な姿勢が見えすぎると、逆にマイナスイメージになってしまいます。
「自分から成長する気がないのかな」「逆に今いる社員の負担になってしまうのでは」と判断されてしまうと不採用になってしまう可能性もあります。
自分は会社に貢献できる人材であるということは、必ずアピールするようにしましょう。「今までの経験を活かしながら自分から積極的に学び、会社に貢献する」という姿勢を崩さないことが大切です。
活躍できそうなポイントが見つからない
前職で華々しい活躍をしていても、それが新しい職種でどのように活躍できるのかが見出すことができなければ評価をすることができません。しかし、前職での経験がまったく自分に身についてない訳ではありません。
応募したい業界・職種にあった自己PRを行うためには業界研究が必要です。応募先の求める人材と、自分のアピールできる能力が結びつく志望動機はいい志望動機といえるでしょう。転職活動をする際も新卒のように業界研究を怠らず、自分のどのような能力が仕事のどの部分に生かすことができるのかという答えを自分で出すようにしましょう。
ネガティブな内容である
転職の理由として「さらに休みたい」や「福利厚生のしっかりした企業に勤めたい」「職場の人と合わなかった」というのは多く見られます。しかし、志望動機として言及するのは避けた方がいいでしょう。
後ろ向きな内容ばかりの志望動機は聞いていても暗い気持ちになってしまいます。「うちの会社が合わなかったら、同じようにいってやめていくのだろうか」と思われてしまっても印象が良くありません。
自分が採用担当者だったらどのような人物と一緒に働きたいかという目線を忘れず、前向きな言葉で言い換えるなどの工夫をしてみましょう。
未経験の志望動機のいい例・悪い例
次に、未経験の志望動機のNG例と修正ポイントを紹介します。どのような部分が悪いのか、今までの内容踏まえて考えながら志望動機を読んでみてください。ポイントを受けて悪い例から修正したものも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
例1 : 営業→事務
悪い例 :
前職ではコミュニケーションを大切にし、顧客との信頼関係を築いてきました。
「〇〇さんなら信頼できる」と仕事を任せてもらえた経験もあり、部署内の月間ランキングで1位を獲得したこともあります。
新しく事務の仕事にも挑戦し、自分らしく頑張りたいと思っています。
修正ポイント
・「なぜ」事務の仕事がしたいのかが見えてこない
良い例 :
前職では顧客とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築いてきました。
月間売り上げ1位を獲得したこともあり、顧客や社内の人から信頼され仕事を任せられることにやりがいを感じてきました。
今後はより深く信頼関係を築き、働く人のサポートをしたいと仕事を探していたところ、貴社の求人を見つけました。
新しい職場でも社内でのコミュニケーションや情報共有を密に行い、社内の人をサポートしたいと考えています。
例2 : アパレル販売員→法人営業営業→マーケター
悪い例 :
学生の頃からマーケティング業界に憧れがあり、いつか働きたいと思っていました。
未経験ですが御社で学び、成長していきたいと思っています。
前職の営業では情報収集能力を発揮して、取引先それぞれに合わせた斬新な提案をしてきました。
新しい業界でも1から学ぶ姿勢を忘れずに取り組んでいきたいと思っています。
修正ポイント
・受け身すぎて自主的な姿勢が見えない
良い例 :
学生時代から消費者の行動原理を探るマーケター職に憧れがありました。
現在は独学ではありますがマーケティング論を学んでおり、実際の営業業務でもそれを活かした情報収集や消費者目線に立った新たな提案を積極的に行ってきました。
営業で培った情報収集能力や積極性を活かし、御社に貢献したいです。
例3 : 歯科助手→介護職
悪い例 :
前職では休みが少なく、自分らしい生活ができてないと感じていました。
ワーク&ライフの両立をはかるため転職活動を行っていたところ、今回の求人を見つけました。
歯科助手として患者さんの声に耳を傾け、歯科医との橋渡しを行ってきた経験を活かし、介護職員として利用者さまの目線に立ったサービスを行なっていきたいと思っています。
修正ポイント
・転職理由が前向きなものではない
良い例 :
歯科助手として医師と患者さんの橋渡しを行なってきた経験を生かし、介護施設でお年を召した方へのサービスをしたいと思い志望しました。
前職の歯科助手の仕事では、年齢を問わず多くの患者さんの声に耳を傾け、より良い治療ができるようお手伝いをしてきました。
また、貴施設ではワーク&ライフバランスの実現に向けた施策を多く行なっているのも魅力に感じています。
例4 : 経理→医療事務
悪い例 :
病院の一員となって、看護師と患者さんの間に立ちサポートをしたいと思ったからです。
前職は経理を担当していましたが、社内のお金の流れが見えにくくなっていたのを修正し、わかりやすい資料を制作、一人一人が資金を把握しながら営業できるような仕組み作りを行いました。
修正ポイント
・前職の経験をどのように活かすかが見えてこない
良い例 :
PCスキルを活かして患者さんと病院の間に立つことができる医療事務の仕事内容に魅力を感じたからです。
前職では新たな請求書のテンプレート作りやお金の流れの「見える化」など、Excelを駆使してさまざまな資料を作成してきました。
新しい挑戦にはなりますが、持ち前のPCスキルやタスク管理能力を活かして貴院に貢献したいと考えています。
***
新しい挑戦となる未経験の転職は、不利に思われるかもしれませんが、新しいことに挑戦したいという熱意や前職での経験を企業は評価してくれます。
志望動機の内容に不安がある場合は、一度作成したものを転職エージェントなどに持ち込んで添削してもらってもいいでしょう。自分で読んだものを録音して聞き返すなどの作業も有効です。
未経験者として評価されるポイントを志望動機に盛り込み、選考を突破しましょう。