毎日を過ごしていると、仕事や人間関係、買い物など選択を迫られる機会は多く訪れます。しかし、自分の選択に後悔してしまうことはありませんか? それは、誰しもが陥りやすい心理現象である「認知バイアス」が原因かもしれません。

本記事では、認知バイアスについて具体例を交えながら説明します。自分や周り人の行動や考えに当てはめてみてください。

  • 心理学用語「認知バイアス」について解説します

    「認知バイアス」の理解を深めましょう

認知バイアスとは? わかりやすく解説

まずは認知バイアスの基本的な意味を見ていきましょう。

バイアス(bias)の意味は「偏り」

そもそもバイアス(bias)とは、布などに対して斜めであることの他、先入観、偏見、また調査の回答に偏りを生じさせる要因を指す言葉です。

認知バイアスとは、思い込みや経験により非合理的な判断をすることを指す心理学用語

そして認知バイアスとは、自分の思い込みや周囲の環境、これまでの経験といった要因により、非合理的な判断をしてしまう心理現象です。

例えば、「良かれと思ってやった行動が、相手に迷惑をかけた」「『1万円』の値札に二重線が引かれ『5,000円』と書かれた商品を『お得だ』と思い購入した」といった行動は、認知バイアスによって引き起こされていると言えます。

前者は、自分の思い込みや偏った常識から引き起こされたもの。また、後者は認知バイアスを使ったマーケティング手法によって引き起こされたものかもしれません。販売者は、意図的に定価を引き上げることで、格安に見える効果を狙った可能性があります。

このように、認知バイアスは日常にあふれています。その仕組みを理解することで仕事や人間関係を円滑にできるようになることでしょう。

  • 認知バイアスとは

    認知バイアスによって、無意識に不条理な選択をしているのかもしれません

認知バイアスの種類一覧 - 日常の「あるある」を例に紹介

認知バイアスにはいくつかの種類があり、それぞれの現象によってとる行動が変わります。ここでは、みなさんに当てはまりやすい有名なものをまとめてご紹介します。思わず「あるある!」と言ってしまう現象が多いかもしれません。ぜひ自分の身の回りのことに置き換えて考えてみてください。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分に都合のいい情報ばかり集めてしまう現象です。例えば子どもの頃、ほしいゲームを「みんなが持っているから買って!」とおねだりした経験はありませんか?

よく考えてみると、みんなと言ってもせいぜい3人ぐらいではなかったでしょうか? 自分の欲望のために情報が正しく見えないことがあります。これは確証バイアスによる現象です。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、自分に都合の悪い情報を無視してしまう現象です。有名な例が、災害の避難についてです。大地震などの災害が起きた際に、人間は最悪の状況をイメージすることができず「まだ逃げなくても大丈夫だろう」「すぐに収まるだろう」と考えてしまい、逃げ遅れ、被害が広がってしまうことがあります。

後知恵バイアス

後知恵バイアスとは、物事が起きたあとに「予測が可能だった」と錯覚してしまう現象です。「だから言ったのに!」や「やっぱりそうだと思ったよ!」とつい言ってしまうことはありませんか? それはこの後知恵バイアスによる現象が起こっているからかもしれません。

例えば、周りの人が破局したときに「最初から2人は合わないと思ってたんだよね!」と言ってしまうことがあるかもしれません。実際に予測できていた場合もありますが、後知恵バイアスにより予測していなくてもこうなることを知っていたような気分になってしまうことがあります。

アンカリング

アンカリングとは、先に得た情報によって選択が変わってしまう現象です。例えば、同じ商品でも定価1万円が5,000円になっているときと、初めから5,000円で売られているときとでは、前者の方がお買い得に思え、購買意欲が高まってしまうものです。

自己奉仕バイアス

自己奉仕バイアスとは、成功したときは「自分が頑張ったおかげ」、失敗したときは「周りの環境が悪かったせい」と思ってしまう現象です。

例えば、企画したイベントが大成功したとき、自分の頑張りのおかげだと思ってうれしくなることがあるかもしれません。反対に、失敗したときは、周りの人が手伝ってくれなかったからだと思ってしまいがちです。

成功要因が周りの尽力のおかげであったり、または失敗要因は自分の努力が足りない場合もあったりするのに、自己奉仕バイアスによってこのような考えに至ってしまうのです。

ゼロサム思考

ゼロサム思考とは、「Win-Winは存在しない」と思ってしまう現象です。自分が損しているとき、相手は得しているに違いないと思ってしまうのです。このようなゼロサム思考が強いと取引などで相手と自分にとって良い方法を模索せず、自分が得する条件をいかに通すか、固執してしまうことがあります。

ツァイガルニク効果

ツァイガルニク効果とは、完成されたものよりも途中で終わったものの方が、強く印象に残りやすくなるという現象です。

このツァイガルニク効果がよくわかる例がCMです。CMで「くわしくはウェブで!」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。そして実際に商品名を検索するなどの行動を起こしたことがある人もいるかもしれません。

必要な情報がすべてCMに入っていたら、このように自分から深く調べようと思わないでしょう。中途半端だからこそ気になってしまうというのがこのツァイガルニク効果なのです。

偽の合意効果

偽の合意効果とは、自分の考えが一般大衆と同じと思い込んでしまう現象です。例えば、「自分が痩せている人が美しいと思っているので周りもそうだろう」と思うことです。しかし、自分の常識は相手にとって非常識であったり、自分が良いと思って言ったことが裏目に出たりすることもあるので気を付けましょう。

コンコルド効果

コンコルド効果とは、それまで行った投資を惜しみ、今後も損失が出るにも関わらず投資をやめられない現象のことです。クレーンゲームでぬいぐるみを取ろうと頑張っているとき、「ここまでお金を払ったんだから取れるまでやろう」と意固地になった経験はありませんか?

これはコンコルド効果によって、後には引き下がれない気持ちに自らを追い詰めてしまっているのです。

ダニングクルーガー効果

ダニングクルーガー効果とは、自分のことを実際の姿より美化したり、過大評価したりしてしまう現象です。うぬぼれがこれに当てはまります。ダニングクルーガー効果が強い人は、例えば自分は他の人よりおもしろいと思っているので、実際の話がつまらなくても話し続けてしまう傾向があります。

内集団バイアス

内集団バイアスとは、自分の属している集団は他の人に比べて優れていると思い込む現象です。自分と同じ会社の人だから、意識が高くて優秀に違いないと思ってしまうことがこのバイアスに当てはまります。身近な言葉で表すと「贔屓(ひいき)」がこの内集団バイアスにあたります。

  • 認知バイアスの種類一覧

    認知バイアスは日常の多くのシーンで見られます

認知バイアスとうまく付き合うための対策法

認知バイアスの要因は自分が正しい、優位でありたい、願望を通したい、と思ってしまうことがほとんどです。そのせいで、良い選択や出会いを逃してしまうことはもったいないのではないでしょうか。

大切な選択が迫ったときに、認知バイアスに支配されることを防ぐために、これから紹介することを思い出すといいでしょう。

違った視点に立って考える

何かを選択するとき、A案が良いと思っても一度立ち止まってみることをおすすめします。少数派の人の意見を聞いてみる、他の可能性は考えられないかといった視点に立って考えてみると、より良い選択ができるかもしれません。

一つの情報に流されない

自分に都合の良い情報しか取り入れなかったり、みんなが賛同するものを正しいと思ったりせずに、多くの情報を集めた上で判断をしましょう。一つだけの情報に惑わされることなく、自分にとって本当に必要な情報が得ることができるでしょう。

認知バイアスをうまく利用する

このような心理現象を逆に利用することもできます。自己奉仕バイアスを利用し、やる気にさせたい部下に対して「○○が頑張ったから今回のプロジェクトはうまくいったね!」と褒めてみると効果が見込めるかもしれません。認知バイアスを上手に利用することで、相手の意識を変えることもできます。

  • 認知バイアスの対策方法

    意識すれば偏った考えや行動による選択を減らすことができます

ビジネスや日常生活の大事な選択の際は、認知バイアスに陥っていないか確認を

今までの選択の後悔やモヤモヤは、誰もが陥りやすい認知バイアスによるものだったのかもしれません。自分の考えや行動が心理現象と知ることで、客観的に考えられるようになったり、少し気持ちが楽になったりするかもしれませんよ。

ぜひ今回紹介した内容を今後の選択に生かしてみてください。