パートとアルバイトの違い、わかりますか?
学生時代は「アルバイト」、主婦になったら「パート」……というぼんやりとしたイメージを持つ方も多いかと思います。しかし、実際にその違いを説明できる人は少ないのではないでしょう。
本記事では、今回はパートとアルバイトの違いや、分けて呼ばれるようになった背景、および働き方のメリット・デメリット、得られる保障についてご紹介します。
パートとアルバイトは何が違うの?
パートとアルバイト、ぼんやりとしたイメージを抱いていてもその違いを明確に説明することは難しいのではないでしょうか。まず、パートとアルバイトのそれぞれの意味を整理し、どのような違いがあるのか確認しましょう。
パートとは
パートとは「パートタイマー」または「パートタイム労働者」の略称です。1日8時間などの決まった時間で働いている「フルタイム労働者」より短い時間で働いている方を指します。パート=子どもが学校に行っている間に働いている主婦(主夫)というイメージを持つ方も多いかもしれませんね。
アルバイトとは
アルバイトの語源はドイツ語の「arbeit(勤労の意)」といわれています。こちらもフルタイムより労働時間が短く、学校が終わった後や土日の空いている時間を中心に働く方のことを指します。日本ではアルバイト=学生というイメージが強く根付いています。
労働基準法の上では同じ「短時間労働者」
改めてパートとアルバイトの意味を整理してみると、どちらも内容に違いはありません。厚生労働省で定められた「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用感知の改善等に関する法律)」では「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」を「短時間(パートタイム)労働者」と定めています。
つまり、パートでもアルバイトでも労働基準法の中では同じ扱いなのです。
違う名前で呼ばれるわけは?
では、同じ働き方であるはずのパートとアルバイトはなぜわざわざ別の呼ばれ方をしているのでしょうか。
アルバイトの語源はドイツ語の「arbeit(勤労の意)」というのは先ほどご説明しました。しかし、「arbeit」自体に短時間労働という意味はありません。
アルバイトは、明治時代に学生が学校へ通う費用を稼ぐための仕事を指す言葉として広く使われるようになりました。このため現代でも学生が副業として働く=アルバイトというイメージが強く根付くようになったのでしょう。
働き方としては同じはずのアルバイトとパートですが、それぞれのイメージが異なることから企業側が欲しい人材に合う言葉を選んで使う場合があります。
長く平日の昼などに働いてくれる主婦層の人材が欲しいときはパート、短期や夜間にスポットで勤務する人材が欲しいときはアルバイトなどといったように使い分けられる傾向にあります。
パート・アルバイトのメリット
では、アルバイトやパートとして働くメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
自分に合った働き方ができる
アルバイト・パートのメリットは自分に合った働き方ができるという点です。家事や学校など自分の生活のメインが他にある場合は、フルタイムで働くのが難しいですよね。
アルバイトやパートなら自分の空いた時間にシフトを入れることができるので、学生や主婦の方でも働くことができます。
副業として容易に始められる
副業とは、正社員として働いているなどの本業が別にある方が仕事の終わった後や土日の時間を使ってさらに働くことを指します。
近年、副業を許可する企業も増えてきました。今ある収入の足しにするために副業を検討している社会人の方も多いのではないでしょうか。アルバイトやパートでは副業・Wワーク可という条件で働くことができる場所も多くあります。何か副業を始めたいと思っている方にもおすすめです。
責任が比較的少ない
フルタイムで働いている人よりも就業時間が短く、また短期間で働くこともできることからアルバイトやパートは責任を負う場面が少ない傾向にあります。
就労先によってもそれぞれですが、最終的な決定や責任は正社員が担ってくれるところが多いため、仕事にかかるプレッシャーが少ないといえるでしょう。
興味がある仕事にもすぐ挑戦できる
憧れの職業や興味のある業界に挑戦したいときにもアルバイト・パートがおすすめです。アルバイトやパートなら正社員よりも入るハードルが低く、挑戦してみて合わないと思ったら辞めることもできます。
何か興味のある業界があってまず雰囲気を確かめてみたいという方には、アルバイトやパートの窓口がないか探してみるのもいいでしょう。
パート・アルバイトのデメリット
良い面ばかりに思えるアルバイト・パートですが、もちろんデメリットもあります。次はパート・アルバイトのデメリットを紹介します。
やりがいを得られない可能性
比較的責任が低く辞めやすいアルバイト・パートですが、その特徴はデメリットともいえるかもしれません。
長く続けていてもそれに応じてキャリアアップのシステムが整っていなかったり、評価のされにくさからやりがいを得られなかったりすることも多いでしょう。年数に応じてやれることを増やしたいという方や、評価されたいという方にはおすすめできない働き方といえます。
収入が少ない
フルタイムや正社員に比べて働く時間の少ないアルバイト・パートは収入もそれだけ低くなる傾向にあります。シフトも自分では決められないところが多いので、収入が欲しいときに欲しいだけ稼ぐことができず困ってしまうこともあるかもしれません。
不安定
パート・アルバイトは毎月の就労時間が明確に決まっているわけではありません。就労先の閑散期など、働きたくても働けないという期間も生じる可能性があります。 また、責任が少ないことからいつ解雇されるかわからないという不安を持ったまま働く可能性もあります。
長期で長く働きたいという方は「長期歓迎」の募集を探して応募するのがおすすめです。安定して収入を得たいという方は閑散期の有無やシフトにどのくらい入ることができるかをあらかじめ相談した上で採用してもらうのがいいでしょう。
パート・アルバイトの福利厚生
次に、アルバイト・パートの福利厚生についてご紹介します。有給休暇や社会保険などは正社員のみのものだと思っている方が多数かもしれませんが、実はそうではありません。パート・アルバイトでも条件を満たせば有給などの福利厚生を得ることができるのです。
パート・アルバイトでも有休はもらえる?
年次有給休暇(有休)は条件を満たせば得ることができる労働者の権利です。つまり、パートやアルバイトといった短時間労働者でも条件が合致すれば有給を取得することができます。
有給が付与される条件は以下の2つです
- (1)雇い入れの日から6カ月経過していること
- (2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
この要件を満たしていれば、所定の労働日数に比例して有給休暇が付与されます。 その期間の全労働日とは、雇用契約書や労働契約書に書いてある日数のことを指します。
自分が有給休暇の付与条件を満たしているという方は、会社や店舗の責任者などに相談してみるのがいいでしょう。
厚生年金・健康保険の加入も可能
有給休暇と同じように、パートやアルバイトも一定の条件を満たすことで社会保険(厚生年金・健康保険・労働保険など)に加入することができます。
条件は以下の通りです。
(1)1週間あたりの決まった労働時間が20時間であること
→ 残業時間は含まれず、あくまで所定労働時間を指します。
(2)1カ月あたりの決まった賃金が8万8,000円以上であること
→ 賞与、残業代、通勤手当などは含まれません。
(3)雇用契約の見込みが1年以上であること
→ 雇用期間が1年未満であっても、就業規則や雇用契約書などで契約が更新される場合がある旨が、明示されている場合も含みます。
(4)学生でないこと
→ ただし、夜間、通信、定時制の学生の方は加入の対象となります。
(5)以下のいずれかに該当すること
- 従業員数が501人以上の会社で働いている。
- 従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている。
※従業員数は正社員などすでに社会保険の対象となっている従業員の数で数えます
自分が要件を満たしているかどうか、雇用契約書や給与明細を確認してみるのがいいでしょう。
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一般的に使われているパート・アルバイトですが、労働法下では同じ短時間労働者であり、働き方などに違いはありません。しかし、それぞれの言葉の持つイメージの違いから募集の際に「パート」「アルバイト」と書いて区別される例もあるようです。また、有給休暇や社会保険なども条件を満たせばパートやアルバイトでも正社員と同じように取得することができます。
呼ばれ方やイメージに引っ張られすぎずに、自分の働きたい形に合致した仕事を探すようにしましょう。