KDDIは10月30日、2021年3月期 第2四半期(2020年4月~9月)の決算説明会を実施しました。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、記者団の質問に答えるカタチで「UQ mobileについて」「eSIMの活用について」「楽天モバイルについて」「JALとANAの社員受け入れについて」説明しました。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

上期の連結業績ですが、売上高は2兆5,372億円(前年同期比1.1%減)でした。端末販売収入の減少が影響しています。同社では、下期に向けて5G端末を中心に販売を強化していく方針です。営業利益は5,888億円(同6.6%増)でした。「ライフデザイン領域」と「ビジネスセグメント」の成長が営業利益を牽引しています。高橋社長は「中期経営計画で掲げている目標の達成に向けて、成長領域のさらなる拡大を進めていきます」と説明しました。

  • 今期の連結業績

UQ mobileに20GBプラン導入

記者団の質問に対し、高橋社長が回答していきました。

KDDIグループのマルチブランド戦略、特にUQ mobileに導入することが発表された新料金プラン『スマホプランV 20GB』について聞かれると「政府からの要請もあり、国際水準に遜色のない料金プランということでUQ mobileに20GBプランを入れました。魅力的なプランで、お客様にも喜んでいただけるのではないでしょうか。いまauを契約しているお客様がUQ mobileに移ることも一定程度はあると予想しています。蓋を開けてみないと分からないので、様子を見ていきます。我々もauの5Gの良さをお伝えしていくので、UQ mobileからアップセル(移行)される方もいらっしゃるでしょう。そうした良い循環をつくっていく。そのあたりの相乗効果を見ていきます」。

  • KDDIグループのマルチブランド戦略

  • UQ mobileには『スマホプランV 20GB』を導入(2021年2月以降)

UQ mobileのスマホプランV 20GBのスタート時期が2021年2月以降とやや遅く感じられる理由と、NTTドコモがどう対抗してくるか、などを聞かれると「単純にシステムが間に合わないためで、社内でも急ぐように言っています。準備ができ次第、ということです。ドコモさんがどう対抗するのかですが、昨日の決算会見でもいろんな選択肢があるとおっしゃっていました。TOBの関係があるので、まだそのあたりの話ができない状況なのでしょう。ただ、auの料金戦略がドコモさんとはだいぶ違ってきたのも事実です。我々はマルチブランドで、多様なお客様に対するプラン建てをやっていく。状況を見ながら、しっかり競争していきます」。

  • KDDIのマルチブランド戦略のまとめ。UQ mobileをはじめ、サブブランドの契約者をauにアップセル(移行)させる狙い

au本体の料金値下げについては「今のところ考えていないですね。繰り返しになりますが、競争条件がありますので、競争相手の料金を見ながらになります」。auブランド以外には5Gを提供しないのか、という質問には「いまはauを中心に5Gをやっていきます。MVNOにも5Gを提供する義務が出てきますので、要望に応じて対応します」と回答しました。

DXの新ブランド設立へ

今回の決算説明会では、シンガポールを拠点とする通信事業者「Circles Life」と提携して、MVNOの新会社「KDDI Digital Life」を2020年11月に設立すると発表しました。eSIM活用による完全オンライン型のMVNOで、ユーザー自身が料金プランをカスタマイズできるなどの珍しいサービスを実現させる考えです。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の新ブランド設立へ

海外でeSIMを使ったMVNOがいくつかあり、興味を持って見ていたら先方からアプローチがあって今回の提携に至った、と説明する高橋社長。「思い切って社内の言語はすべて英語にしようと思っています。グローバルな知見が入りやすい会社にしていけたら。KDDIを意識させないブランドにしていきます」と紹介しました。

このCircles Lifeに関しても、いくつか質問があがりました。料金プランはどのくらいの水準になるのか、と聞かれると「シンガポールの例を聞いていると、MVNOとはいえ、必ずしも料金が安いということではなく、MNOのARPUより高くなるケースもあります。ユーザーが料金プランをカスタマイズしていくので、例えば今月はNetflixでコンテンツを見るから何GBにしようなど、手元のアプリで料金プランのコースを自由に決められるわけです。だから、ARPUは一概にいくらとは言えません」と回答。

KDDIグループ内で同様の会社は作れなかったのかと聞かれると、「やっぱり外の会社だと早いんです。こうしたMVNOの特化型サービスを作ろうとすると、アプリのカスタマイズや料金の作り方などがあるわけですが、彼らはシンガポールで展開しているサービスをカスタマイズして持ってくるだけなので早い。それもひとつの魅力でした」と話しました。

eSIMの活用について

総務省のアクションプランでは『eSIMの活用』をうたっていますが、これについて聞かれると「いろんな側面があると思っています。例えば、MVNOさんがeSIMを活用した接続を実現したいとおっしゃった場合、その要望に応じて対応していきたい。次に端末の対応ですが、すでにiPhoneは対応していますね。Androidについては、端末メーカーさん次第になります」と回答。

そして消費者目線では、KDDI Digital Life社がeSIMのサービスを実現します。「そうした(eSIMがもたらすような)世界を重視されるデジタルネイティブのユーザーが使いやすいカタチにしていく。ひとつのアプリだけでキャリアに加入できたり、プランの変更、サービスをバンドルできたり。通信会社としてもMVNOを介して、幅広いターゲットにサービスが届くのではないでしょうか。マルチブランド戦略を通じて、多様性のあるターゲットに対して、いろんな準備をしていきます」。

アクションプランの受け止めについては「思ったより細かった。1つひとつ対応していきます。MNPの手数料の問題ですが、ドコモさんの会見ではWebで行えば無料にすると言っておりましたが、我々も当然その方向で考えていきたい。本日の総務大臣の会見を聞いていても、各社が国際競争力のある料金プランを出したことに評価いただいていました。多様性についても言及いただいた。アクションプランについてはしっかりと対応していきますし、良い感じに動き始めたのでは、と思っています」。

楽天モバイルに提供のローミングが終了

一部のエリアで、楽天モバイルに提供していたauのローミングが終了することについて、業績への影響を聞かれると「まず楽天モバイルのローミングにおける契約の立て付けですが、都道府県の人口カバー率が70%を超えた段階で、楽天さんが要望する一部エリアを除いて、順次ローミングを終了することになっています。東京、大阪、奈良についてはすでに70%に到達したと言われていますので、10月22日以降、ローミングエリアの縮小に向かっています。東京に関しては、原則2021年3月末をもって終了することになっています。ホームページにも記載がありますが、地下鉄、山間部などは引き続きローミングを受け入れます。もともとの計画通りで、業績に大きな影響はありません」と説明しました。

iPhone発売が遅れた影響は

iPhoneが10月発売になったことで決算に与えた影響を聞かれると「発売が10月にずれ込みましたが、それまでに何となく風の噂は聞いていたので、業績予想には盛り込んでいました。業績に対する影響はありません。5Gについては、上期には『出遅れた』と申しましたが、だいぶ調子が良くなりました。iPhone 12も調子よく販売できており、手応えを感じています。5Gサービスを使い放題で利用できるプランは我々だけ。今後も急いでエリアを拡大していき、新たな体験価値を提供していきます」。

  • 5Gのエリア展開について

  • auは全機種が5Gモデルに

トヨタとの提携について

今回の決算説明会では、トヨタ自動車との業務資本提携が発表されました。「移動」と「通信」の枠を超えた新しい取り組みについて、パートナーシップをさらに強化していく考えです。

  • トヨタ自動車との業務資本提携について

この件について、KDDIがトヨタ側にもたらすメリットについて聞かれると「auの強みは、通信を安定的に提供できることと、これから5Gも活用いただけること。トヨタさんのクルマに通信機能を盛り込むことで、クルマを介してお客さんとつながる環境を実現していきます。このコネクテッドを、我々はこれまで国内外でやってきました。グローバルでも海外キャリアと連携拠点を多く持っているので、それを活かせます。トヨタさんは今後、街、家、人、クルマすべてが最適につながる世界を大事にしていきます。必ず通信が必要になる。その実現には、どんなプラットフォームが必要になるか。それを議論し、研究・開発していくことが、今回の取り組みのベースにあります。我々の通信、サービスにご期待いただけると思っています」と回答しました。

航空大手の社員がKDDIに出向へ

コロナ禍で経営が厳しい航空大手がKDDIに社員を出向する見込み、とメディアで報じられている件については「一部の報道でANAさんの話が出ているのを目にしました。うちから公表した話はないんですが、ANAさん、JALさんからも同様の話をいただいています。どちらも重要なパートナーさん。コロナの環境下で、ANAさんJALさんが我々の方に従業員の方を出向されれば、新しい経験値にもなるでしょう。従業員の育成という観点でお考えであれば、お受けしていきたい。お互いのプラスになる方向を見出しながら、サポートできるものは積極的にサポートしていきます。パートナーとしてやらなくてはいけないことなので、ぜひ協力できれば」と話していました。