リモートワークがすっかり定着した人もいるかと思いますが、最近は「リモートだとコミュニケーションの取り方が難しい」という声が聞こえてきます。
あくまでも私の感覚ですが、実はオンラインになって3ケ月くらいまでは「コミュニケーション能力がなくてもやっていけそう」という声が多かったんです。ところが、やってみたら案外「伝わってない」ことが露呈したというわけですね。
どんなにIT化して効率を図ろうとしても、結局は人とのつながりがビジネスを生み出すことに変わりはありません。オンラインになったからこそ、もっともっと相手を魅了する説得力が必要になったという解釈のほうが正しいのではないでしょうか?
となれば……もともとリアルでも引っ込み思案で意見を言えないタイプだった人はオンラインになるとますます不利になってしまうということです。ええ、そんな……と落ち込む前に、この機会に心構えや習慣を変えてもっと結果を出せる人に変身してしまってください!
オンライン会議でやりがちな失敗
オンラインには、もともとかなり「対面」の要素を含んでいます。もっというと、画面上に自分の顔がクローズアップされてしまうので、実は対面よりも個々が「目立つ」ことになります。さらに言うと、「ネットだからいいや」「家にいるからいいや」と、ついついどこかに緩んだ気持ちが「できる人」と「できない人」の違いをとても顕著に見せてしまうんです。
では、具体的にどこに注意すべきなのでしょう。
リアル会議であれば、後ろのほうに座って上司と目が合わないようにしていればよかったかもしれませんが、オンライン形式の場合はそうもいきません。全員の顔がパソコン画面いっぱいにずらっと並んでしまうからです。それも新入社員であろうと役職者であろうと同じように並ぶので、とても比較されやすいのです。
つまり、リアル形式より自分の顔を他人に見られることになります。もちろん複数の場合は相手が誰を見ているかは分からないので、リアルの時に自分の目の前に上司がいるよりも緊張が少ないかもしれません。でもちょっと気を緩めている時に「●●さん、どう思う?」と突然ふられることだってあるのです。
また、だらしない座り方をしたり、下を向いたりしているとかなり印象が悪くなります。家だからいいやと気を緩めると、きちんと座ってうんうんと誰かの話にしっかりと反応している人が他の人の何倍も好感度があがり、仕事ができそうに見えます。無表情でむすっとしているのも逆に目立つし、スマホを覗いていると、聞く態度の悪い社員と思われかねません。
リモートワークで活躍する本番力
そこで考えたいことが、一歩前行く「本番力」。
個人が目立ってしまうからこそ、余計に積極的に発言するほうが前向きなイメージを持ってもらえるし、そもそも他の人と「同じ階層」で顔出ししているので、意思表示する人とそうでない人は並んで比較されてしまいます。
例えば、周りに人がいなくても手をたたき、うなずき、笑ったりして、できる限りのリアクションをすること。こういう動きのある表現も本番力のひとつです。さらに、声が聞こえにくいのは致命的です。意図していることが伝わらない上に、やる気がなさそうにも見えてしまいます。
このように対面であれば、体の微妙な動きでカバーできたことが、画面に映ったとたん欠点として露骨に出てしまいます。だからこそ、このオンラインという機会を利用して今まで以上に意思表示し、小さな声の人はあと少しだけ声のボリュームをあげることが必要になります。
リモートワークが広まり、自宅にいる時間が増えた人も多いと思います。そうなると周囲に人がいない、画面上の向こう側と距離があるので、相手の気配も分からないし、空気を読む必要もないので、そんなにコミュニケーション力も要らないじゃないか……と思っていたりしませんか?
たしかに、空気を読みにくいと思われるかもしれません。表情が分かりにくく、声も聞き取りにくいですから。しかし……、そうではありません。
私はウィズコロナになってから、毎日のようにマンツーマンから1,000名を超える規模までオンラインでコミュニケーションを取ってきました。最初は、オンラインは移動もないし直前まで別のこともできてとっても楽!と思っていたのですが、オンラインのセミナーやコンサルティングが終わった後は、リアルで実施したときの3倍以上の疲労感に毎回襲われていました。
なんでだろう? と思って考えてみたら……気付いたんです! 画面を通して相手に思いを伝えるために、画面越しだと伝わりづらい微妙な動作を通常より大げさにしていて、声もいつもより張って一人で汗だくになって話しているということに。そう、オンラインのコミュニケーションこそ、五感をフル活用して伝えていたんです。
コミュニケーションすべてがオンラインとなる社会
人間の五感は「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚」ですが、対面でのコミュニケーションではそのすべてをほぼ使っています。それが、画面上だと視覚と聴覚だけでコミュニケーションを取ることになります。 つまり画面の顔と声に意識がより集中するということなので、この二つの感覚をフル稼働させ、リアルの場で使っているほかの感覚も補おうとしているのです。
これからは、会議や商談だけでなく、あらゆるコミュニケーションの場面でオンラインが増えていくと思います。苦手とか言っている場合ではないのです。一見、生まれつきに備わっている思われがちなコミュニケーション力も、スポーツなどと同様に、一つひとつのスキルが組み合わさってできているものです。
コミュニケーション力は、生まれ育った環境や性格ですべてが決まるわけではなく、意識の変革やトレーニングによって誰でも習得できる技術。
もちろん、オンラインコミュニケーションにも同じことが言えます。対面とは異なる、オンラインというツールの特性は確かにあります。しかし、それを踏まえたテクニックを習得すれば、たとえ画面を通してでも誰でも自分の言いたいことをスムーズに伝えられるようになりますし、同時に相手の意図を上手く汲み取れるようにもなります。
多くの人が戸惑いがちなオンラインコミュニケーションも、テクニックを習得すれば今よりずっと円滑にすることができるのです。
著者プロフィール:和田裕美(わだ・ひろみ)
ビジネスコンサルタント・作家、株式会社HIROWA代表取締役。かつて教育図書の営業職にて日本トップ、世界2位の成績を収めた女性営業のカリスマ。著書は累計220万部を超え、他にも『和田裕美の営業手帳』(ダイヤモンド社)をプロデュースする。