NTTドコモは10月29日、2020年度 第2四半期の決算説明会をオンラインで実施しました。2020年度上期の業績は、減収増益となっています。NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、ドコモ口座問題、サブブランド創設について、5Gの展開について、といった話題に言及しました。

  • 2020年度 第2四半期の決算について説明する、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

上期の決算概況

冒頭、吉澤社長は「この度、ドコモ口座不正利用の発生により多くの皆さまに大変なご迷惑をおかけしました」と謝罪しました。被害金額については全額補償する方針で、現時点で判明しているものは対応を完了していると説明。また今後、不正利用対策を強化し、チャージ可能な銀行口座を登録済みかつ、ドコモの回線を利用していない消費者を対象に、eKYCによる本人確認を導入したと説明しています。

2020年度上期の業績は、営業収益が(前年同期比475億円減の)2兆2,825億円、営業利益が(同233億円増の)5,636億円でした。吉澤社長は「減収増益の決算です。年間業績予想に対して順調に進捗しています」と評価。

第1四半期に引き続き、今期の主な減収要因にも新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」におけるユーザー還元の影響、新型コロナウイルスの感染拡大による販売関連収入の減少、国際ローミング収入の減少などを挙げました。これを補う形でスマートライフ事業が拡大しており、結果として対前年比で増益となっています。

  • 上期 決算概況

  • セグメント別実績。通信事業の営業収益は(1,086億円減の)1兆7,625億円、営業利益は(121億円減の)4,336億円。スマートライフ領域での増収増益が続いている

20GBプランの対抗策は?

質疑応答では、ドコモを取り巻くさまざまな状況に関して質問が挙がりました。

先日来、KDDIがUQ mobileを通じて、ソフトバンクがワイモバイルを通じてデータ容量20GBの新料金プランを相次いで発表していますが、この受け止めと対抗策について聞かれると「政府の値下げ要請に応えたのが両社の料金プランかな、と受け止めています。我々もこれに対抗していかなくてはいけません」と回答しました。

しかし対抗施策の時期は明言せず、「様々な選択肢の中から継続的に対抗策を検討していく、というのが現在のスタンスです」と、株式公開買付け(TOB)の期間中であり、新たな事業戦略などは発表できないとして理解を求めました。

ドコモがサブブランドをつくる考えは、という質問にも「現時点で決まったことはありません」としました。

ドコモ口座不正利用問題は?

ドコモ口座不正利用の発覚により、d払いなどのサービスにも影響があったのか、という問いには「9月に不正が分かりました。そこで金融決済も含めて、広告やCMも控えました。dカード、dポイントの加入状況は(少しですが)伸びが止まりました。d払いの取り扱い高は減少せず、増えています」。

  • d払い取扱高は、ドコモ口座不正利用の影響は受けず

また、スマホ決済はセキュリティ的に問題がある、といったイメージが消費者についたのでは、という問いに対しては、「(利用者に芽生えた)スマホ決済におけるセキュリティ上の懸念や不安を、いかに払拭して、スマホ決済、QRコード決済を活性化していけるか。各プレイヤーが自分たちだけのセキュリティを高め、堅牢化すれば良いという話ではなく、エンドエンドでしっかりしたセキュリティが保たれるようにしていく。しっかり対策をしたうえでもう一度説明して、スタートして拡大させていくことがドコモの役割」と話しました。

ドコモ口座再開に向けては「すでにチャージしている方で、キャリアフリーのお客様についてはeKYC(オンライン本人確認)をやっています。ストップしている方は、ドコモ以外に銀行、金融庁を含めて全体的なセキュリティを確認したうえでスタートしようと思っています。いま連携してやっていますので、もう少し、時間がかかるかと思います」。

ひとり親世帯を支援したい

ドコモでは「子育てサポート割引」を12月9日から提供開始すると発表しました。この狙いについて聞かれると「新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、ひとり親世帯のお客様が影響を受けています。ドコモとしては、これまでも『子育て応援プログラム』『キッズケータイ』『U15はじめてスマホ割』など、子育て支援をしてきました。そこで、新たな割引策を用意させていただきました」と回答。

  • 割引プランの拡充として、子育てサポート割引が発表された

5G利用者はどのくらい?

5G契約者数の伸びは想定どおりか、という質問には「今年度末に250万という計画に対して、それを上回るペースで推移しています」と話しました。今後、5G端末のラインナップも強化するといい、「フラッグシップ端末だけでなく、普及価格帯の5G端末が11月以降、順番に発表される。5G版のiPhoneもありますし、しっかりとお客様にリーチできる端末が出てくる」とコメント。

エリアについては「まだまだ狭いと言われていますが、今後もエリア拡大を前倒しで進めていきます。端末、エリアの相乗効果を出していければ」と見通しを語りました。

5G利用者はAndroidとiPhoneでどのくらいの比率になるのか、という質問に対してはコメントを控えました。

  • 5G契約者数とエリアについて。年間目標に対して順調な進捗

KDDI、ソフトバンクでは4G向けの周波数帯を5Gに転用する方針を明らかにしています。ドコモの方針について聞かれると「今年度、来年度については5G用にいただいている周波数の『Sub 6』と『ミリ波』をいかに広げていけるか、だと思っています。5Gならではの大きな特徴である『高速』を活用できる電波だからです」と回答。まずはそこを訴求したいと話しました。

予定としては、「2021年度の後半あたりからLTEの基地局を5Gに転用していくことになる」といいますが、速度は(本来の5Gと比較すると)出ないという懸念も。「まずは本格的な5Gを拡大して、便利に使っていただく方向に持っていきたい。5Gエリアはここ、ということを明確にお伝えして、LTE転用のエリアも明確に示して、お客様が混乱しないようにしていきます」と説明しました。

総務省のアクションプランをどう受け止める?

総務省の(モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けた)アクションプランの受け止めについて聞かれると「3つの柱で、全部で14項目くらいのプランがあります。内容は、すでに従来の研究会で扱われていたものもあれば、ドコモ自身がこれについて十分に対応できているものもある。いまから論議して、意見を申し上げたいこともあります」と答えました。

「MNP手数料の撤廃の動きについては、Webを通じた手続きを無料にすることには賛同しますが、ショップ窓口で処理する場合、それなりにコストもかかる。したがってドコモがすぐに無料にするかは、申し上げられません。SIMロック解除、eSIM、メールアドレスの引き継ぎなども、議論の中で我々の考え方を示していきたい」。

将来的に、新たな電波を割り当てる際に、そうした取り組みの対応状況も考慮されるのでは、という問いには「そういったこともあるかと思います。現在の帯域で、お客さんがどのくらい入っているのか、有効に電波を使っているか、なども重要な項目。そうしたことも合わせて、対象にしていくんだと捉えています」と回答しました。

  • NTTドコモ 吉澤和弘社長

今後のドコモはどうなる?

退任に伴い、これまでの振り返りと今後のドコモについてコメントを求められると、吉澤社長は次のように語りました。

「グローバルにおけるICT化、ITプラットフォームの動きは目まぐるしいものがあります。政治的には、米中の争いがあったり。それらを含めて、ICT事業者としてさらに対抗していくため、視野を広げないといけないと最近、特に感じていました。2000年頃にiモードが出て、発展して、スマホ時代になりました。モバイルが発展していったわけですが、モバイルだけでなく、AI、クラウド、プラットフォーム、アプリなども含めて、もっと視野を広げて対抗していかなくてはいけないと感じていました。ドコモには、もっとチャレンジする余地がたくさんある。自らを変革して挑戦していく、そういった領域に入ったかなと思っています」。