テレビ東京の木ドラ25枠『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(毎週木曜 25:00~)が、日本、そして海外で話題を呼んでいる。『チェリまほ』という愛称で呼ばれ、まるで映画のような映像美と、丁寧な描写と役者陣の奥行きのある演技からTwitterでも「最近チェリまほにハマった」「なんていいドラマだ……」「ドキドキして寝られない」という人が続出している。

同作はガンガンpixivで連載中の豊田悠氏による同名コミックの実写化作で、童貞のまま30歳を迎えたことにより、「触れた人の心が読める魔法」を手に入れた冴えない30歳のサラリーマン・安達清(赤楚衛二)が、社内随一のイケメンで仕事もデキる同期・黒沢優一(町田啓太)に触れ、自分への恋心を聞いてしまう、というところから始まる。初めて誰かから寄せられる好意に戸惑う安達と、クールなポーカーフェイスの裏で安達への恋心が爆発している黒沢の関係が「心の声」を通して、繊細にコミカルに紡がれていく。

作品人気の特徴のひとつが、海外からの反響だ。最近はタイ、中国、フィリピンなど各国でBLドラマが注目を集めており、『チェリまほ』も現在YouTubeで期間限定公開中の第1話には日本語と英語のコメントが入り乱れている。また、タイ語での紹介ツイートが複数バズり、それぞれ数万RTされるなど、「日本発のBLドラマ」として注目を集めているのだ。Twitterのハッシュタグ「#CherryMagic」で検索すると、各国のファンの熱いツイートが続々と現れる。この反響について現場ではどう捉えているのか、テレビ東京 本間かなみプロデューサーにメールインタビューを行った。

  • 町田啓太、赤楚衛二

    『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』に出演する町田啓太、赤楚衛二

■見て傷つく人がいない作品にしたい

――YouTubeで公開している1話のコメントに海外の方のものが多かったり、タイ語のツイートがバズっていたりと、日本だけではない反響の広がりについてどのようにとらえられていますか?

まさか、深夜にひっそりと始まったものを、海外の方にもご覧いただけるとは思っていなかったので、最初は「何が起きてるんだろう」という感じでした。公式ツイッターの方にも、タイ語、韓国語、中国語、スペイン語、ポルトガル語……などたくさんの外国語のコメントを頂いていて、ただただびっくりしています。「ときめき」は世界共通なのか! と、思いました。

――他にも、視聴者の方の反響で意外だったもの、予想以上に大きかったものなどはありましたか?

1話からツイッターでトレンド入りしたり、放送翌日にはTVerの視聴ランキングで1位になれたり……全て予想以上でした。「そうなれたらいいな」とは思ってましたが、まさか本当にそうなれるとは……! という感じで、OAが終わってから監督の風間(太樹)さんや脚本家の吉田(恵里香)さんと連絡を取っていたんですが、みんなで「よかったね!」という話をしていました。あとは原作ファンの方々のリアクションがずっと気になっていたのですが、温かくドラマ版を迎え入れてくださる方がとっても多くて、ホッとしたし嬉しかったです。

――そういった反応について、出演者の方と何かお話などはされましたか?

海外の方からのリアクションは、みなさんびっくりしていましたが、「作品が広がっていくといいよね」という話をしました。あとは、配信だったりSNSだったり、原作ファンの方々のリアクションを含めて、みなさんと「すごいね!」「嬉しいね!」と。キャストだけでなく現場のスタッフも撮影中の励みになったと思います。

――作品のどういう点が受け入れられていると思いますか? また、受け入れられるために気をつけたことはありましたか?

「生身の人間が演じた時のバランス」「見て傷つく人がいない作品にしたい」というのは気を付けましたが、受け入れられるために、というより「愛される作品にしたい」と思って作りました。なので、登場人物一人ひとりに感情移入してもらえるように「心の機微」「登場人物を愛らしく」「登場人物にそれぞれの誠意・主体性を持たせる」ということに重点を置いて作っていきました。

あとは、誰を好きになろうと、恋をしようとしまいと、その人のアイデンティティに関することは本来、否定も肯定も他の誰かに言及される必要のないことだと思います。だから、この作品で描く恋も、否定も肯定も不要な「ただ在るもの」として描こうと思って作りました。

――今後、世界へ向けて配信したいといった予定、または予定までいかなくとも展開したい気持ちなどはありますか?

今、YouTubeで1話のみ全世界配信にしていますが、出来るなら海外の配信会社さんで全話配信させてもらえるようになれたらいいな、と思います。

もともとは、自分がその日のドラマを楽しみに1日を過ごすような子供だったので、「そんな風に、誰かの一日の楽しみになれたらいいな」という気持ちで作ってきた作品です。それがそんな「世界へ」みたいなスケールの大きいことを想像できること自体、驚いていますが、たくさんの人の思いが詰まった作品なので、広げていけるなら広げていきたいです。

(C)豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会