ストレスや緊張を感じたときに、深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとすることがあるでしょう。普段無意識に行っている呼吸は、心身の状態と深く関わりがあり、自律神経を整える働きがあります。
本記事では、自律神経を整えることができる呼吸法についてご紹介していきます。普段無意識に行っている呼吸に意識を向け、深い呼吸、正しい呼吸法を行うときの参考にしてみてください。
呼吸法によるメリット
まずは、呼吸法によるメリットについてご紹介していきます。
■全身に酸素が行きわたりスッキリする
私たちは呼吸をすることで、血液中に取り込んだ酸素を全身に送っています。呼吸が浅ければ、血液中の酸素が不足してしまいます。
呼吸をして十分な酸素を取りこむことで、全身に新鮮な酸素が行きわたり、体も心もリフレッシュできます。特に脳は酸素不足になりやすいです。良質な呼吸によって脳に酸素が行きわたることで、頭がスッキリするでしょう。
■副交感神経を働かせてリラックス
深くゆっくりとした呼吸をすると、副交感神経が優位に働きます。副交感神経が働くことで、心身を落ち着かせてリラックスさせる効果が得られます。イライラやストレスを感じているときなども、呼吸をコントロールすることで落ち着きを取り戻し、ストレスを軽減することができるでしょう。
■血行がよくなる
緊張やストレス状態が強いとき、血管は収縮します。一方で、リラックス状態で副交感神経が優位なときは、血管が拡張し血行がよくなります。血行がよくなれば、必要な酸素や栄養素が体中に行きわたりやすくなり、心身によい影響を与えるでしょう。
■心が穏やかになる
深い呼吸を行うと緊張状態から心身を解放させられるため、リラックス状態にすることができます。また、リラックスすることで筋肉の硬直がほぐれ、体もゆるみます。それに伴い、自然と感情や気持ちが楽になって、穏やかな気持ちになれるでしょう。
自律神経が心身に与える影響
自分の心身の状態に合わせ、適切な呼吸法を取り入れることで、意識的に自律神経に働きかけることができます。自律神経とは、自分の意思とは関係なく体の機能をコントロールしている神経のことです。自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成ります。
■副交感神経
自律神経のひとつである副交感神経は、休息・修復・リラックスしている際に優位になる神経で、主に睡眠時に働きます。その他、食事中やお風呂に入っているときなど、ゆったりリラックスしているときにも優位となります。心拍数が落ち着き、筋肉はゆるみ、血管も拡張している状態です。
副交感神経が働くことで新陳代謝、疲労の回復、体の修復が行われ、免疫力も高まります。
■交感神経
交感神経もまた自律神経のひとつで、活動しているときや緊張しているとき、ストレスを感じているときなど、主に昼間に働く神経です。この際、心拍数は増えて筋肉は硬くなり、血管は収縮します。すぐに活動できる体でスタンバイしている状態です。
この相反する2つの神経がバランスよく働くことで健康状態を保てますが、これらの自律神経に乱れが生じると、心身にさまざまな不調が訪れてしまいます。そこで肝要になってくるのが呼吸法です。呼吸を整えることで自律神経の乱れを抑えられれば、心身の不調の軽減が期待できるというわけです。
■呼吸が乱れると自律神経の不調も
緊張やストレスによる呼吸の乱れや、呼吸が浅い状態が過度に続くと、自律神経のバランスが乱れます。呼吸の乱れることで、疲労感、肩こり、頭痛、不眠、不安感やイライラなど、心身の不調につながってしまうことがあります。このようなときは、早急な自律神経の調整が必要でしょう。
リラックスできる呼吸法を行う際の注意ポイント
ここからは、「リラックスできる呼吸法」について見ていきます。普段は無意識に行っている呼吸ですが、以下の注意ポイントに気をつけて自律神経を整えていきましょう。
■息を止めない
作業に集中しているときや、強い緊張を感じたときなど、思わず息を止めてしまう、あるいは呼吸が浅くなってしまうことがあります。呼吸が浅くなると交感神経が優位な状態になります。
交感神経が適度に働いているうちはよいのですが、過度になると作業効率が落ち、ストレスが増大する可能性があります。さらに自律神経が乱れやすくなり、ますます不調を感じるという悪循環に陥ってしまうこともあるでしょう。
息が止まっている、または浅くなっていると気づいたときは、深い呼吸を心がけてください。息を少しずつ長く吐くことから始めるとよいでしょう。
■肩の力を抜く
深い呼吸をする際は、全身の力を抜きましょう。このとき、腕を下ろして肩の力を抜くことを意識します。方法としては、わざと両肩を上げて緊張状態にしてから、ストンと肩を落としてみるとわかりやすいでしょう。力が抜けている状態を意識できれば、さらにリラックス効果を上げられます。
■お腹の動きと肺の動きを意識する
呼吸をするときは、腹式呼吸を意識します。腹式呼吸では、まず息を吐きますが、そのときはお腹をへこますようにします。お腹に手を当てるとわかりやすいでしょう。
お腹をへこますと横隔膜が上がり、肺から息を押し出すことになります。肺の息を吐ききってからお腹の力を緩めると、お腹が少し膨らみ、さらに息を吸ってお腹を膨らませると、横隔膜が下がって肺が広がり、新鮮な空気がたくさん入ってくるのです。
腹式呼吸をすることで、息を吐ききった後、肺に新鮮な空気が入り、それが全身に行きわたるイメージをするとよいでしょう。
■息を吸う時間と吐く時間を意識する
呼吸を行う際に吐く時間と吸う時間を意識すると、深く質のよい呼吸を行うことができます。5秒かけてゆっくり吐き、5秒かけてゆっくり吸う、というイメージです。なお、秒数は苦しくない秒数に設定しましょう。
無理のない範囲でしばらく続けてみて、慣れたら秒数を延ばしていきます。吐く時間と吸う時間を同じにするか、吐く時間の方を長めにするのがよいでしょう。
ヨガで行う呼吸法の種類
ヨガはポーズを行うものという認識が一般的ですが、呼吸法も同等かそれ以上に重要視されています。多くの呼吸法がありますが、ここでは代表的なものを紹介していきます。
ヨガでは基本、「鼻から吸って鼻から吐く」鼻呼吸を行います。 鼻呼吸が難しいときは口で行っても構いません。最初は呼吸を深く行えているか、止まっていないかを確認するため、丁寧な呼吸を心がけるとよいでしょう。
■腹式呼吸
腹式呼吸は、ヨガの基本的な呼吸法のひとつです。息を吐くときは、お腹をへこませて息を吐き切り、吸うときはお腹を膨らませます。息をなるべく細くして、ゆっくり長く行うのがポイントです。慣れないうちはお腹に手を当てておくとよいでしょう。
深い呼吸ができるので副交感神経が優位となり、リラックス効果や血行促進、インナーマッスルを鍛える効果があるとされています。
■胸式呼吸
胸で行う呼吸で、肺の上部に空気を入れて膨らませるイメージで行います。慣れないうちは肋骨に手を当てて膨らませるイメージをするとよいでしょう。
腹式呼吸と違って交感神経を優位にするので、集中力を高めるなどの効果や、肺活量がアップする、姿勢がよくなるなどの効果もあると言われています。
■片鼻呼吸
「片方の鼻から吸った息を、もう片方の鼻から吐く」を交互に行う呼吸法です。まず一方の鼻を指で押さえ、もう片方の鼻から息を吸います。吸った方の鼻を指で押さえた後、もう片方の押さえていた指を離し、離した方の鼻から息を吐くのを繰り返します。
片鼻呼吸は交感神経と副交感神経の両方のバランスを整える効果があると考えられており、安眠を促す、鼻の通りをよくするなどの効果があると言われています。
■ウジャイ呼吸
胸式呼吸のひとつで、「ウジャーイ呼吸」「ウジャイー呼吸法」という呼び方もあります。やり方はお腹をへこませて口を閉じ、喉に摩擦音を立てながら鼻から息を吐き、吸う際も音を立てて喉を細め、胸に息を吸い込みます。
冷たい手を温めるときに息を吐くイメージで、口を閉じ鼻から息を吐くのがポイントです。自律神経のバランスを整え体を温める、集中力を高める効果が得られるでしょう。
■シータリー呼吸
シータリー呼吸法は口から吸って、鼻から吐く呼吸法です。口をすぼめて、舌をストローのように丸めたところから息を吸い、鼻から吐きます。舌を丸められない場合は、口から舌を出すようにして息を吐いてみましょう。
舌を通して冷たい空気を体に取り入れ、吐くときに熱い空気を体の外に出すことで、体の熱を放出します。体温を下げたいときや目を覚ましたいとき、気分を変えたいときに行います。
呼吸法を意識してリラックスしよう
呼吸が心身に与える影響と、さまざまな呼吸法について解説してきました。心身で感じるちょっとした不調は、自律神経が関わっている可能性が高いです。自律神経は自分でコントロールすることが難しいとされていますが、呼吸を意識することで自律神経のバランスが整えられるようになります。
緊張しているときや不安を解消したいとき、呼吸が浅いと気づいたときなど、呼吸に意識を向けてみましょう。