最近のラベルライターには、スマホと連携して手軽にラベルシールを作れる製品が増えてきています。その一翼を担うP-TOUCH CUBEシリーズには、単なる“便利アイテム”以上の魅力を備えています。「小麦粉」や「シャンプー」などと印刷して整理整頓したいモノに貼るだけに留まらず、多彩なラベルのラインアップから新しい可能性を模索する楽しみがあります。
今回は7月に発売された新製品「PT-P910BT」(実売約28,000円前後)を試してみました。シリーズ3世代目の製品で、最大36mm幅のテープにも対応した最上位モデルです。
ラベル印刷時は内蔵バッテリーで動作、USB-C充電にも対応
P-TOUCH CUBEシリーズは、専用のスマホアプリでラベルを作成して印刷できるという製品で、パソコンなしでも使える手軽さが特徴です。本体はバッテリーを内蔵し、スマホとはBluetoothで接続して使います。コンパクトに収納して、使うときだけ持ち運べます。
今回紹介する「PT-P910BT」は36mmの幅広ラベル印刷もできる最上位モデル。大きさは約138×94×138mm(幅×奥行き×高さ)とP-TOUCH CUBEシリーズ3製品の中ではもっとも大きく、価格もお高めです。ただし、この一台で3.5mm幅~36mm幅まですべてのラベルカートリッジを扱えるため、この製品があれば下位モデルを買う必要はありません。
充電端子はシリーズ初のUSB Type-C端子を採用し、アプリはビジネス向けのテンプレートを強化した「P-touch Design&Print2」にアップグレードされました。
36mm幅のクラフトテープで写真印刷を楽しむ
いきなりラベルライターらしからぬ使い方になりますが、筆者はこのモデルで「写真」を印刷すると楽しいことに気付きました。
P-TOUCH CUBEのラベルはテープとインクが組み合わされたカートリッジ型で、多くは1本850円~1,600円程度(いずれも税別)で手に入ります。オーソドックスな「白地に黒文字」のラベルはもちろんのこと、ゴージャスな色のラミネートテープ、マスキングテープなど、幅広いラインナップを揃えています。
筆者のお気に入りは、新モデルにあわせて発売されたクラフト地のテープです。本来は雑貨店などの装飾などに使うラベルを作るものですが、ここに写真を印刷すると、古いアルバムから切り出したかのようなレトロな雰囲気に仕上がります。
印刷解像度は360ppiとラベルライターとしては高め。36mmと太めなテープ幅を生かして、小さいながらも見応えのある写真が印刷できます。ただし、カラー印刷には非対応で、インクの色はカートリッジの組み合わせに応じたものになります。クラフト地テープの場合は黒インクとセットとなっています。情報量の多い写真では潰れた絵になりがちなので、被写体が分かりやすい写真の方が適しているでしょう。
印刷されたラベルは適切な幅でカットされます。シールタイプのラベルでは、裏面の剥離紙に縦のスリットが入っているため、剥がして貼る過程もスムーズ。ラベルに写真を印刷すると、まるで“プリクラ”のようなシールが作れます。
このシールをクラフト紙に貼ってみて、コラージュすると良い感じの雰囲気がでてきます。周りに想い出を書き込んだり、おしゃれな柄をデザインして貼り付けるのも楽しいものです。便せんに貼り付けて送っても喜ばれそうです。
リボンへの印刷も! プレゼントのラッピングに使えそう
ほかに面白いところでは、リボンタイプのラベルも用意されています。リボンに文字やデザインを印刷できるのです。
プレゼントのラッピングをオシャレに彩るにもよし。子どもの洋服や靴に名前をつけるのにも重宝しそうです。オシャレなリボンを印刷して、アクセサリーを作るのも楽しそうです。
豊富なテンプレートを備えた専用アプリ。気になる点も
さて、ここまであまり一般的でない使い方ばかり紹介してきましたが、アプリでのラベル作成方法についても触れておきましょう。
専用アプリ「P-touch Design&Print2」では、豊富なテンプレートがプリセットされており、用途に応じてそこから選び、文字を入れ替えるだけで整理整頓からパッケージ装飾まで、オシャレなラベルが作成できます。
透明や金銀などのラミネートタイプのラベルが豊富にあるため、貼る場所に応じて使い分ければ、インテリアの雰囲気を壊さず、ラベル貼りができます。他にも、コード分類用のラベルなども用意されており、複雑なバリエーションがあるUSB Type-Cケーブルを種類ごとにラベル表示するといった使い方も可能です。
印刷する際はラベルライターとBluetooth接続します。接続は印刷時のみでOK。たとえば通勤中の電車でラベルデザインをちょこちょこ作成して、帰宅してからまとめて印刷するといった使い方も可能です。アカウント登録など面倒がないため、家族で共有するにも便利です。
フォントはiPhoneやAndroidスマホにプリインストールしているもの(一部)も含めて数十種類が利用可能。一部の絵文字も印刷できます。クリップアートでは生き物やデジタル機器、ひな祭りやハロウィーンといった季節イベントなど、ラベル作成に使えそうなイラストが用意されています。
太幅ラベルの場合、複数段に情報をまとめたデザインもあり、幅を活かして大きめのアイコンと詳細なテキスト表示で印象的に見せるラベルもあります。デザインセンスがない筆者のような人間にはありがたいハードルの低さです。
また、Design&Print2アプリ限定の新機能として、テキストをカメラで読み取ってラベル入力するOCR機能や、入力した内容を翻訳してラベル出力する機能も備えています。前者は使い古したラベルを作り直すときに、後者は多言語での案内を印刷するときに活用できるでしょう。
アプリにはラベル作りの楽しさを味わえる機能をそろえていますが、ラベル作りに凝れば凝るほど、アプリでできない部分が気になってきます。たとえば、テンプレートで作成したときは、テキストの差し替えなど以外のデザイン変更の余地は少なめです。
特に気になるのは「段組み」機能。前世代モデル向けのアプリでは段組みを自由に編集できましたが、Design&Print2ではテンプレートとして用意されているデザインのみしか使えません。テンプレートのデザイン自体は良いけれど、ここは3段組みではなく2段組みにしたい……というときに融通が効かず、結局諦めることになります。
また、一部のテンプレートにある日付入力のフォームは、ラベル作成日を入力することを想定しているためか、「プラス1カ月」といった大まかな加減算はできるものの、日時を指定しての変更ができません。結局、スマホ本体設定から日付を一時的に変更して、ラベルに「今日の日付」として表示させました。
ラベル作成機能はもう少し洗練できる部分がありそうですが、まさにスマホ向けに作られた製品ならでは手軽さと、コンパクトなボディの扱いやすさは気に入っています。
ラベルシールの使い勝手も良く、整理整頓には便利なアイテムです。本体価格が約3万円とシリーズの中でも一段と高価な点は悩みどころですが、幅太ラベルで新たな可能性を模索できるのは「PT-P910BT」ならではの楽しみ方といえるでしょう。新しいラベルシールを試すのも楽しく、ラインナップを沢山そろえてしまいそうです。