“大三元レンズ”と呼ばれる、ニコンのフルサイズミラーレス「Z」シリーズ用の望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」。発売が何度か延期され、Zユーザーが気を揉み続けていた1本が、やっと発売されました。NIKKORレンズ史上最強の手ブレ補正効果5.5段を誇るこのレンズの写りは、Zシリーズのポテンシャルを十二分に引き出す「素晴らしい!」のひと言でした。
描写性能はピカイチ、被写体にかなり寄れる点も評価
このレンズの特徴は、なんといっても光学系でしょう。レンズは18群21枚構成で、6枚のEDレンズや2枚の非球面レンズ、1枚の蛍石レンズ1枚、新開発のSRレンズをぜいたくに用い、画質重視のコンセプトを貫いています。注目の「SRレンズ」は、ニコンが独自に開発した特殊高分散ガラスを使用したもので、青より短い波長の光を大きく屈折させる特性を持っています。補正が難しい短波長の光を精密に集めて色収差補正を実現しているということです。
もちろん、ニコンレンズで定評のある「ナノクリスタルコート」と「アルネオコート」も施しており、優れた逆光耐性も有しています。レンズの最前面には、汚れを簡単に拭き取れる「フッ素コート」も採用しており、水滴やホコリが付いても簡単に取り除けます。もちろん、レンズは防塵防滴仕様となっています。
レンズのサイズは、標準的なF2.8通しの70-200mmレンズといった感じです。最大径は約89mm、レンズマウント基準面からレンズ先端までの長さは220mm、フィルター径は77mm。重さは約1,440g(三脚座を含む)、約1,360g(三脚座なし)となっています。最短撮影距離は0.5m(70mm時)、0.63m(85mm時)、0.68m(105mm時)、0.8m(135mm時)、1.0m(200mm時)と、かなり“寄れる”レンズになっています。
外観上の特徴は「レンズ情報パネル」でしょう。鏡筒に絞り、撮影距離、被写界深度などの情報が表示できる表示パネルを搭載していて、瞬時に設定の確認が可能になっています。鏡筒にはレンズファンクションボタンを2つ設置し、さまざまな機能の割り当てができるようになっており、スムーズな撮影をアシストしてくれます。
手ブレ補正機構の効果は期待以上、AF性能も文句ナシ
ニコン Z 6に装着していろいろと撮影してみましたが、ヌケ感と緻密な描写には本当に驚かされました。ズーム全域で解像感が高く、しかも豊かで美しいボケ味を見せてくれたからです。
要の手ブレ補正機構は、ファインダー内で像が吸着したかのように感じさせるほどで、光量の少ないシーンはもちろん、スポーツなどの動体撮影でも威力を発揮してくれることでしょう。「SPORT」モードでの像の安定感は、正確なフレーミングと被写体の追従を容易にしてくれます。もちろんオートフォーカスも正確かつ高速で、面白いようにビシビシとフォーカスが決まり、シャッターを切るのを楽しくしてくれます。
ワイド端からテレ端まで驚異的な描写を見せてくれるNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S。これほどの写りをしてくれる同クラスのレンズを、私は他に知りません。これは、やはり大口径、ショートフランジバックを誇るニコンZマウントの恩恵なのだと思い知らされました。これから登場する新しいカメラボディ「Z 6 II」「Z 7 II」でも使ってみたいレンズに仕上がっています。