街中や電車などでここ最近、AirPods Proをよく目にする。ノイズキャンセリング機能も使える完全ワイヤレスイヤホンとして高い人気を集めるAirPods Proだが、そのフィット感を高めて音もクリアにしてくれるのが、今回紹介するSpinFitのイヤーピース「CP1025」だ。
2019年10月の登場以来、売れ筋ランキングでは常に上位に入り、高い人気を誇るAirPods Pro。実売価格は約30,000円(税込)と決して手ごろな製品とはいえないが、発売から1年を迎えた今も衰えを見せないようだ。10月23日に発売開始となった最新の「iPhone 12」シリーズではついに有線のEarPodsイヤホンが付属品に含まれなくなったので、これを機にAirPods Proを購入する人がさらに増えるかもしれない。
そんな人気のAirPods Proだが、弱点もある。筆者の持っているAirPods Proは最初からついているMサイズのイヤーピースで基本的に耳にフィットする……はずなのだが、歩きながら音楽を聴いているとたまに「外れてはいないが耳から落ちそうな状態」になることがあり、一度は本当に路上に落としてヒヤッとした。
そこで重宝するのが、サードパーティ製のイヤーピース。左右のイヤホンをストラップでつなぐという対処法もあるにはあるが、それでは完全ワイヤレスの便利さが損なわれてしまうので、イヤーピースを変えることで耳から落ちにくくしたい。これから紹介するSpinFit「CP1025」は、AirPods Proの弱点をカバーしてくれる選択肢のひとつとして注目だ。
SpinFitのAirPods Pro用イヤーピースの特徴
SpinFitは、ポータブルオーディオ好きなら一度は耳にしたことのあるブランド名だろう。2009年に台湾で誕生した、カナル型イヤホン向けのイヤーピースブランドで、国内ではプレシードジャパン(旧:バリュートレード)が輸入代理業務を行っている。この社名を聞いて「ああ、AVIOT(完全ワイヤレスイヤホンなどで知られるブランド)を扱っているあの会社ね」と気付いた人はスルドイ。業界通か、相当なマニアとお見受けする。
今回、SpinFitから借りた「CP1025」のラインナップは、S/M/ML/Lの4サイズ。サイズによってチューブが色分けされており、Sはピンク、Mは薄いブルー、MLは薄緑、Lは濃い青となっている。MとLの中間くらいの耳穴にもジャストフィットする「ML」というサイズもあるのがありがたい。2020年9月に発売され、実売価格はいずれも約1,650円(税込)。イヤホン専門店のほか、家電量販店やAmazon.co.jpの「AVIOT公式ストア」経由で購入できる。
筆者の耳にはMサイズでも合うが、外を出歩くときの落下防止のために大きめのMLサイズを選んだ。各サイズともイヤーピース2ペア、AirPods Proとイヤーピースの間に挟み込んで固定するアダプタ1ペアが入っている。ちなみにサイズは耳に入れるほうだけが異なり、AirPods Proに固定する側(アダプタ)はすべて共通サイズだ。
SpinFitの最大の特徴はイヤーピースの軸と傘の付け根に備えた独特の“くびれ”、「3Dクッション構造」と名付けられた部位にある。これによって、耳穴の形状に合わせて傘の角度が柔軟に変わり、フィットして落ちにくくするというわけだ。耳への密閉度が高まれば、耳穴とイヤーピースのスキマから音が漏れにくくなるので、イヤホンが持っている本来の音を引き出すことも期待できる。
AirPods Proに標準で付いてくるイヤーピースは耳に合わない、不快感がある、かゆくなってしまう……そんな声は意外と少なくない。多くのサードパーティ製イヤーピースでは、純正とは異なる素材を採用するなど各社工夫している。
SpinFitのイヤーピースは高品質で柔らかいシリコン素材を使っており、CP1025もそこは同じだ。添加物がなくアレルギーが起きにくいことや、圧迫感を感じさせず、快適なつけ心地といった特徴をアピールしている。防汗性もあり、スポーツ時も耳にフィットして外れにくくしているとのこと。
イヤーピース交換に挑戦。音質も意外と変わる?
では実際にイヤーピースを交換してみよう。AirPods Proに付いている標準のイヤーピースを初めて外すときは取りにくくて苦労するが、イヤーピースの傘をめくってからイヤホン側に近いところをつまんで、まっすぐ引っ張るといい。
交換の手順といっても、やることはAirPods Pro本体に白いアダプタを取り付け、イヤーピースを被せるだけだ。アダプタの開口部が真円ではなく楕円なので、イヤーピースを被せるところだけすこし難しく感じるかもしれないが、端にひっかけて徐々に押し込む感じで被せればうまくいく。取り付け方を紹介した公式動画もあるので、それを見れば参考になる。
ちなみに、アダプタの装着の目安になる2つのドット(小さな突起)に爪を引っかけるとアダプタをラクに外せる。便利な仕掛けだが、むしろ取り外しにくい純正イヤーピースにこそ、こういった工夫があるべきだとも感じる。
CP1025のアダプタは、純正イヤーピースと同じように開口部にゴミやチリが入りにくくするメッシュガードを備えている。耳垢などの混入の心配することなく、安心して使える。
CP1025をつけ終わったら、正しく装着できているか指で軽く引っ張って確認しよう。まれに色付きの軸が丸まって変形したままつけてしまうことがあり、そこから音が抜けてしまったり、最悪イヤーピースが取れてしまうおそれもある。
また、CP1025を装着したAirPods Proを耳につけてイヤーチップ装着状態テストを行っておくとベスト。iPhoneなどの「設定」から[Bluetooth]→[(自分のAirPods Proの名前)の脇にあるiマーク]→[イヤーチップ装着状態テスト]と進めて、「使用中のイヤーチップの装着状態は良好です」と表示されればOKだ。
CP1025(MLサイズ)を装着したAirPods Proのフィット感は、純正イヤーピースとは別モノであることにすぐ気付く。指で触っても分かるように、純正のものはサラッとした手触りで、特に乾燥しているときなどは耳にあまりなじんでくれない。一方、CP1025はモチッとしたシリコンを使っているので耳穴にフィットしやすい。
イヤーピースと本体の間にアダプタを挟む構造のためか、耳の中でガサゴソ鳴ることがまれにあるほか、遮音性についても電車などでテストすると、「純正よりはごくわずかに外の音が聞こえやすいかな?」と感じる。とはいえ、そうした気になる点を補って有り余る「耳から抜け落ちない安心感」のおかげで、CP1025から純正イヤーピースにはもう戻れない、と感じた。
充電ケースに収めたときも、蓋などに干渉することなくスッと収まる。これは、一番大きなLサイズのCP1025でも同じだ。
気になる音質については、CP1025を装着すると純正イヤーピースと比べて中高域の細かな音が聞こえるように変化し、ボーカルなどが引き締まって聞こえた。純正では前に出がちな低域も、CP1025では落ち着いて中高域を下から支えるようなバランスに変わり、全体として音のディテールを感じ取りやすくなる印象だ。
イヤホンの試聴でいつも聞いている坂本真綾「お望み通り」を、CP1025を装着した状態で流してみると、冒頭のベースやドラムの音がクッキリと、しかし決して主張しすぎないレベルで鳴り出す。ピアノやギター、ハイハットの音がよりクリアに聞こえてくる。AirPods Proの純正イヤーピースでも素直な良い音で聞けるが、付属品では生かし切れていないAirPods Proの実力を、CP1025がさらに引き出してくれるわけだ。
唯一気になる点といえば、製品パッケージ。イヤーピースを収めたプラケースを、紙を貼り合わせた状態でパッケージにしているのだが、実は紙の内側にイヤーピースのつけ方の説明が書かれており、何も知らずに開けると説明書きが破けてしまうのだ。イヤーピースの着脱に慣れている筆者は説明を読まなくても交換できたので気にならないが……。
はじめてのAirPods Pro用交換イヤーピースとしてオススメ
家電量販店のAirPods Pro用アクセサリーの棚を見ると、ひと頃に比べてサードパーティ製イヤーピースの選択肢がずいぶん広がったように思う。純正イヤーピース(2セットで税別900円)よりも安いものから、遮音性が高まるフォーム素材を使った製品、体温で柔らかくなって変形し、耳穴にピッタリフィットするものまで、実にバラエティ豊かだ。なかでもSpinFit「CP1025」は、いくつか他社のイヤーピースを試してきた筆者にとっては装着感、音質を含めて満足度が高かった。
もちろん人の耳は千差万別なので、CP1025が誰の耳にもピッタリ合うとは言えないが、AirPods Proの純正イヤーピースに少しでも不満を抱いているのであれば、試してみる価値は充分にある。約1,650円の追加で装着感と音質が良くなるのは、AirPods Proユーザーにとって魅力的に感じられるハズだ。数ある選択肢の中から、筆者はSpinFit「CP1025」をオススメしたい。