葬儀は流れや手続きが決まっています。喪主になり、身近に頼りになる親戚がいない場合には、とまどうことも多いかもしれません。本記事では大切な方が亡くなられた後、悔いなくお見送りができるよう、定められた手順にのっとった葬儀の流れを説明しています。
葬儀全体の流れ
葬儀全体の流れを最初に把握しておきましょう。お亡くなりになったら、以下の順序で葬儀までを執り行います。
- 医師・かかりつけ医へ連絡
- 死亡診断書を受け取る
- 葬儀社へ連絡
- 搬送
- 葬儀打ち合わせ
- 湯灌と納棺
- お通夜
- 葬儀
- 告別式
- 出棺
- 初七日法要
- 精進落とし
- 散会
流れを把握したところで、各段階をくわしくみていきましょう。
ご臨終からご遺体の安置まで
故人がお亡くなりになってから、ご遺体の安置まで、ご遺族の方がすべきことを順を追って説明します。
お亡くなりになって
肉親の方が亡くなったら、すぐ医師に連絡します。病院であれば、そのまま医師による死亡診断書が作成されます。ご自宅で亡くなられた場合は、かかりつけ医に連絡します。死亡状況を確認し、死因を特定する死亡診断書を作成してもらう必要があるからです。
かかりつけ医がいない場合は、警察に連絡します。警官と警察医がきて、ご遺体の検案と事件性の有無の確認がなされます。死因が特定され、事件性がないことがわかれば、その場で死体検案書を作成してもらいます。
医師が作成した死亡診断書、警察医が作成した死体検案書は、いずれも死亡届と一体になっています。死亡届および死亡診断書、または死体検案書は、死亡届を提出するときと火葬許可証の交付を受けるために必要ですので、必要な折に取り出せるよう、きちんと保管しておいてください。
また、近親者や勤務先と葬儀社にも連絡します。葬儀社に心当たりがない場合は、病院や警察に聞けば教えてもらえます。
このとき、故人に預金がある場合は、お金を引き出しておく必要があります。死亡届を提出した後は、故人の預金が凍結されてしまうためです。
いったん凍結されてしまうと、死後の預金は「遺産」として扱われ、遺産相続人全員による「遺産分割協議書」が受理されるまで預金を引き出すことができなくなってしまいます。葬儀費用などまとまった現金が必要になってくる機会があるため、預金の引き出しは、早い段階で取っておくべき処置のひとつです。
ご遺体を搬送する
「故人が病院で亡くなった」「ご自宅で亡くなった後にお通夜を葬儀会館で行う」など、ご自宅で亡くなりご自宅でお通夜をする場合を除いては、亡くなった場所からご遺体を安置する場所まで、ご遺体を搬送する必要があります。 搬送は通常、葬儀社が搬送用の寝台車を用意してくれます。
ご遺体を安置する
ご遺体を安置する場所はさまざまです。自宅や斎場、葬儀会館の霊安室、また集合住宅であれば集会室や公民館を利用するケースもあります。葬儀を執り行うお寺でお通夜を行うために、お寺にご遺体を搬送する場合もあります。
場所によって費用も準備も異なります。宗教や住環境、地域性などさまざまな要素があるので、時間的な余裕があれば遺族間で話し合った方が望ましいですが、相談できる人もおらず、家に決まったやり方もない場合は、葬儀社の方に予算なども含めた希望を告げて相談してください。
安置する場所や安置のための準備などは葬儀社で手配してくれるので、任せて大丈夫です。お通夜で菩提寺の住職にお経を読んでもらう場合は、この段階で菩提寺に連絡します。
葬儀の準備
ご遺体を安置したら、葬儀の打ち合わせを行います。葬儀の打ち合わせは主に葬儀社と行いますが、菩提寺がある場合は住職も含めて打ち合わせを行います。
葬儀の打ち合わせ
打ち合わせで決めることは、主に以下の3点です。
- 喪主を誰が務めるか
- 葬儀の日時・場所
- 葬儀プラン
喪主を誰が務めるか
喪主は葬儀全体の責任者で、費用や参列者への連絡、葬儀社との打ち合わせを中心に行う人です。お通夜や葬儀、告別式などでも挨拶を行います。
遺言で指名がある場合を除いては、喪主は故人に近しい人が務めます。多くは故人の配偶者、配偶者が高齢の場合は、子どもが務めます。子どもの場合は、長男が務める場合が多いです。配偶者・子どもがいない場合は、故人のきょうだいが務めます。
葬儀の日時・場所
場所として考えられるのは
- 自宅
- 菩提寺・教会
- 斎場・葬送会館・セレモニーホールなど専門の場所
- 公民館・集合住宅の集会室など公共の場所
などです。自宅以外の場所で行う場合には、その場所が空いているかどうかを確認しなければなりません。さらに火葬場が空いているかどうかの確認も必要です。菩提寺の住職の都合もあります。
菩提寺との関係が切れていて、先祖代々のお墓ではなく、霊園や納骨堂に埋葬する場合であれば、葬儀社に希望を伝えて僧侶の手配までお願いすることができます。しかし実家のお墓に埋葬する場合は、どこで葬儀をあげる場合でも、菩提寺に連絡し、住職と相談する必要があります。
葬儀プラン
葬儀にかかる主な費用は以下の3つです。
- ご遺体の搬送やお通夜、葬儀、火葬など、葬儀全般にかかる費用
- お通夜や葬儀での飲食・接待費
- 読経や戒名など、お寺に関連する費用
日本消費者協会が行ったアンケートによると、葬儀にかける平均費用は195万円となっています。しかし実際には家族葬など小規模でお金のかからない形態を望む人も増えています。
事前に故人の希望を聞いている場合は、その遺志を葬儀社に伝えます。特に希望が残っていなければ、遺族全員が納得できるよう、予算や規模の面で葬儀社と相談して進めていきましょう。
必要書類
死亡届は役所に受理された段階で、故人の死亡が法的に確定する重要な書類です。葬儀を葬儀社に依頼した場合は、葬儀社の担当者が何をどのように記入するかを教えてくれます。
喪主は指示にしたがって、故人の本籍や現住所を記入し、死亡診断書に書かれた死因を書き写し、末尾に署名・押印します。その後、葬儀社が役所の窓口への死亡届の提出と火葬許可証の受取を代行してくれます。
ここでは念のために届け出の流れと、役所から発行される書類の内容を把握しておきましょう。
- 医師から受け取った死亡診断書と一緒に渡された死亡届に必要事項を記入し、署名・押印する
- 死亡届を地方自治体の窓口に提出する
- 火葬許可証が交付される
- 火葬許可証はご遺体の火葬時に火葬場に提出する
- 火葬終了時に火葬場から「火葬執行済」の印鑑が押された火葬許可証が返却される
- 「執行済」印のついた「火葬許可証」が「埋葬許可証」となる
- 後日、納骨の際に墓地や霊園に提出する
死亡届の提出を葬儀社に代行してもらった際は、火葬後に埋葬許可証が引き渡されます。骨壺と一緒に納められていることも多いので、納骨のときまで大切に保管します。
葬儀の準備
葬儀の日時・場所が決定したら、葬儀の参列者への連絡と遺影の選定を行います。遺影に使う写真を選び、葬儀社に遺影の作成を依頼します。故人らしさが表れているものであれば、集合写真であっても画像処理がなされますので問題はありません。その際、背景の色なども合わせて葬儀社に依頼します。
納棺とお通夜
事務的な手続きが終わったら、いよいよ葬儀の一連の流れに入ります。
湯灌(ゆかん)の儀
最初に行われるのは湯灌の儀です。ご遺体を清潔にするだけでなく、俗世での煩悩などを洗い清めるという意味もこめられています。お湯の中で行う場合と、清拭を行う場合があります。喪主や親族のごく限られた人が参加し、実際には専門の納棺師または湯灌師が定められた手順にのっとって行います。
お湯で身を清めたあとは故人の外観を整え、死装束を着せ、身支度を調えて納棺します。その際、故人が大切にしていたものなどを一緒に棺に入れます。
お通夜
納棺が終わってから、お通夜を始めます。お通夜は本来、故人と親しかった人が故人の霊をなぐさめるという儀式で、夜通し行われるものでした。しかし今では夕方から数時間で散会し、その後は身内だけでお弔いを続けます。
お通夜の流れ
- 受付を依頼する
本葬には参列せず、お通夜にだけ参列する人も多く集まります。そのため参列者の名前を記帳してもらったり、香典を受け取ったりする受付が必要になります。お通夜で役目の少ない遠縁の身内や喪主の職場の人、自治会の会長などにお願いします。
- お通夜の流れ
参列者が集まり、僧侶がお見えになったところで、お通夜が始まります。読経の途中からご焼香が始まります。喪主、遺族、肉親に続いて、親しい人から順にご焼香を行います。その後、僧侶の方からのお話があり、退出されてから喪主が挨拶を行い、お通夜の儀式は終了です。
- 通夜ぶるまい
お通夜の儀式が終わると簡単な飲食を出す場合があります。その会食の席を「通夜ぶるまい」と呼びます。「故人と最後の食事を共にする」という意味です。また、お清めの意を込めて、酒類も用意します。
- 散会後
お通夜の参列者が帰った後、葬儀社の方と葬儀について最終的に確認します。その後は遺族だけで故人のそばで、お線香の火を絶やさないようにしながら、一夜を過ごします。
葬儀・告別式
通夜が明けると葬儀・告別式です。葬儀と告別式は本来、別の行事でした。葬儀とは一般に宗教的儀式を指し、告別式とは故人とのお別れの儀式を指していますが、実際にはひとつの儀式として行われ、分離されることはありません。
地域によって、また宗旨・宗派によっても異なりますが、ここではおおまかな流れを説明します。
最終確認と準備
葬儀社に依頼していれば、司会進行は担当者が行ってくれます。喪主は始まる前に担当者と最終的な確認をしておきます。また、お通夜と同様、受付の担当者を用意し、記帳や香典の管理などをお願いします。
葬儀・告別式の流れ
宗派や地域によって違いがありますが、おおまかな流れを説明します。
- 導師入場
- 開式の挨拶と葬儀の趣旨のお話
- 読経
- 弔辞、弔電代読
- 読経…読経の間に喪主、近親者の順に、参列者全員がご焼香
- 喪主挨拶
- 導師退場
- 閉会
宗派によっては儀式などが行われる場合もありますので、事前に導師から式次第をうかがっておくといいでしょう。
葬儀・告別式を終え、続いて初七日法要もあわせて行われるケース(式中初七日)や、火葬から戻ってもう一度その場で初七日法要が行われる場合(繰り上げ初七日)など、さまざまなやり方があります。
閉会から出棺へ
僧侶の方が退席されてから、司会者が閉会することを告げ、葬儀・告別式は終了です。その後、参列者全員で最後のお別れをし、棺の中に花を入れます。花入れが終わり、棺に蓋をしたところで、喪主が参列者にお礼を述べます。
それから出棺になります。喪主が故人の位牌を持ち、次に近しい肉親が遺影を持って棺と共に火葬場へ向かい、近親者も車などで火葬場へ行きます。一般の参列者は出棺を見送った後にそこで散会します。
火葬
火葬には火葬許可証が必要になります。大半は葬儀社の方で用意してくれていますが、手元に保管している場合には必ず持参してください。火葬場に着いたところで火葬許可証を提出します。
火葬場では最後のお別れをします。僧侶の方がお経を上げて喪主から順にご焼香し、全員で合掌してお見送りします。
火葬炉に運ばれた棺は、喪主の手でスイッチが押され、荼毘に付されます。お骨上げの準備ができるまで1~2時間かかるため、親族は控え室で待ちます。
お骨上げ・収骨
お骨上げの準備が整うと連絡があるので、火葬炉の前へ集まります。そこで2人1組で箸を使って火葬場の職員の指示に従いながらお骨を骨壷に納めます。最後に喪主がのどぼとけの骨を納め、収骨を終えます。
初七日法要と精進ぶるまい
収骨が終わると再び葬儀会館やお寺、自宅に戻って初七日法要を行います。先にも述べたように、本来は7日目に行われる初七日法要を、親族が一堂に会する機会がなかなか取れないこともあって、葬儀の最後あるいは火葬後に行うことが多くなっています。
初七日法要を終えたところで、僧侶の方やお世話になった方を交えて精進ぶるまいをします。1人1膳を用意し、故人をしのびつつ、歓談します。
この後、四十九日法要とお墓があればそのときに行われる納骨について、僧侶の方も含めて打ち合わせをしておきます。また、初七日法要を繰り上げて行わない場合には、亡くなってから7日目に行われる初七日法要の取り決めも行います。
定められた手順に従いつつ、心をこめたお見送りを
年齢を重ねると、葬儀に参列する機会は増えますが、葬儀を執り行う側に回ることは、それほど多くはありません。さらに喪主となる経験は、人生の中でもほんの数度のことでしょう。そのため、何もわからなくても不思議はありません。だからこそ、葬儀を専門的に執り行う葬儀社があるとも言えます。
しかし、流れを把握したうえで自分の希望を葬儀社に伝えることにより、葬儀社に一任するより故人に寄り添ったお葬式ができるはずです。肉親が亡くなってからの手続きや連絡すべきところ、葬儀社と何を相談するか、そしてお通夜から葬儀・告別式の流れなど、いざというときのために把握し、よいお葬式をあげてください。