自分の年代・業種の月給平均を知りたいと思ったことはありませんか? 平均月給を知ることで、自分の今の位置を客観的に知ることができます。
転職を考えてはいるけれど、とどまるべきか、踏み出すべきか判断がつかない人も、社内で評価されているのかどうかわからず不安な気持ちでいる人も、平均月給がわかれば、次の一歩が踏み出せるかもしれません。
本記事では男女・年代・業種、また正規雇用者か非正規雇用者かごとに、平均金額をご紹介します。併せて月給と月収の違いなど、言葉の意味も説明しますので、ぜひ参考にしてください。
平均月給はいくら?
国税庁は、「民間給与実態統計調査(令和2年分)」という、日本の民間企業の給与実態統計調査を毎年出しています。これを見れば、男女別や業種別などの平均年収がわかるようになっています。今回はこれを基に月換算にして、平均月給をご紹介します。
男女別の平均月給の推移
まずは平成23年から令和2年の10年間における、平均月給の推移を紹介します。「民間給与実態統計調査(令和2年分)」第10表の「平均給与・手当及び平均賞与」の内、「平均給料・手当」を月別に換算して数値を出し、「月給」として算出しています。平成30年以降は男女別の統計も取られているので、併せて男女別の平均月給もご紹介します。
年 | 合計 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
平成23年分 | 29.1 | ─ | ─ |
平成24年分 | 29.1 | ─ | ─ |
平成25年分 | 29.4 | ─ | ─ |
平成26年分 | 29.4 | ─ | ─ |
平成27年分 | 29.6 | ─ | ─ |
平成28年分 | 29.8 | ─ | ─ |
平成29年分 | 30.4 | ─ | ─ |
平成30年分 | 30.9 | 37.9 | 21.0 |
令和元年分 | 30.5 | 37.4 | 21.1 |
令和2年分 | 30.7 | 37.5 | 21.2 |
※金額の単位は万円
令和2年の統計によると、給与所得者の平均月給は約30.7万円となっています。手取り額は月給×80%で計算すると、24.6万円前後となります。
特徴的な点は、この10年間の推移では、ほとんど月給が上がっていないことです。日本の経済状況全体の厳しさが表れています。
なお、平成30年からは男女別の賃金の統計も取られており、令和2年の数値を見ると、男性が37.5万円であるのに対し、女性は21.2万円で男性と女性の間に約16万円の開きがあることがわかります。
業種別の平均月給
次に業種別の平均月給を見ていきます。「民間給与実態統計調査(令和2年分)」第13図の「業種別の平均給与」の内、賞与を除いた部分を月割りにし、月給として算出しています。
業種 | 金額 |
---|---|
建設業 | 36.4 |
製造業 | 34.2 |
卸売業、小売業 | 26.9 |
宿泊業、飲食サービス業 | 19.9 |
金融業、保険業 | 40.8 |
不動産業、物品賃貸業 | 31.3 |
運輸業、郵便業 | 32.5 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 47.4 |
情報通信業 | 41.4 |
学術研究、専門・技術サービス業 教育、学習支援業 |
34.4 |
医療、福祉 | 28.5 |
複合サービス事業 | 29.6 |
サービス業 | 26.2 |
農林水産・鉱業 | 22.1 |
全体平均 | 30.7 |
※金額の単位は万円
項目に含まれている複合サービス事業とは、郵便局や協同組合の業務を指しています。また「サービス業」とは、販売や医療、金融など、他のサービスには含まれない業種を指しています。具体的には広告業や自動車整備業などがあります。
業種の中では電気・ガス・熱供給・水道業(エネルギー・資源系)の給与が47.4万円と飛びぬけて高いことがわかります。続いて情報通信業(IT関連)の41.4万円、金融・保険業の40.8万円と、就活生にも人気のある業種が続きます。
年代別・雇用形態別
年齢や雇用形態による給与はどのようになっているのかも見てみましょう。男女も分けたデータとなっています。
こちらは厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第6表1図の賃金を、月割りにして算出しています。
男性正社員・正職員 | 男性正社員・正職員以外 | 女性正社員・正職員 | 女性正社員・正職員以外 | |
---|---|---|---|---|
~19歳 | 15.6 | 14.1 | 14.9 | 13.9 |
20~24歳 | 18.2 | 15.7 | 17.9 | 14.9 |
25~29歳 | 21.4 | 17.7 | 20.2 | 16.6 |
30~34歳 | 24.6 | 18.2 | 21.6 | 16.6 |
35~39歳 | 27.8 | 18.8 | 22.9 | 16.5 |
40~44歳 | 30.4 | 19.2 | 24.0 | 16.7 |
45~49歳 | 32.5 | 19.7 | 24.4 | 16.6 |
50~54歳 | 35.2 | 20.6 | 25.5 | 16.3 |
55~59歳 | 35.7 | 20.2 | 25.4 | 16.1 |
60~64歳 | 29.3 | 22.9 | 22.7 | 16.5 |
65~69歳 | 25.8 | 20.1 | 22.4 | 15.6 |
70歳~ | 24.3 | 18.2 | 20.7 | 14.7 |
※金額の単位は万円
この数値を見て気付くのは、男性正規雇用者の給与が年齢とともに順調に上がっていくのに対し、女性の正規雇用者は、年齢による上昇が緩やかである点です。また、非正規雇用者については、男女ともに、正社員と比べると年齢による差が少ないという結果になっています。
19歳以下は男性正規雇用者が15.6万円、女性正規雇用者が14.9万円、男性非正規雇用者が14.1万円、女性非正規雇用者が13.9万円となっており、差はそれほど開いていません。しかし、20~24歳になると、正規・非正規雇用者の間で差が生まれます。20~24歳では男性の正規雇用者が18.2万円、女性の正規雇用者が17.9万円であるのに対し、男性非正規雇用者が15.7万円、女性非正規雇用者が14.9万円と、非正規雇用者は19歳以下の月給とそれほど上がっていないことがわかります。
全体を通じて最も月給が高くなるのが、男性の55~59歳の正規雇用者で、35.7万円です。同じ年代の女性正規雇用者は25.4万円、男性の非正規雇用者は20.2万円、女性非正規雇用者は16.1万円と、男性と女性、正規雇用者と非正規雇用者の間で、それぞれ差が生じていることがわかります。
なお男性の非正規雇用者が60~64歳で22.9万円になるのは、おそらく定年後の男性正規雇用者が、再雇用された結果であるためだと推測されます。
女性の場合、出産時に退職するかしないかなどによって、後のキャリアパスに大きな差が生じることがわかります。自分自身の優先順位を考え、後悔のないように将来のキャリアプランを考えていくことが重要です。
そもそも月給や月収、年収の意味
今回、国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年分)」などを基に、月給データをご紹介しました。より理解を深めていただくために、最後に月給や月収、年収など、それぞれの言葉の意味や違いなどをご説明します。
なぜ統計では年収を調べているのか?
政府統計だけでなく、転職をする際には、転職先の企業に前職(または現在まだ籍を置いている会社)の年収を聞かれます。また、ローンを組んだり、クレジットカードを申し込んだりする際にも、年収が重要な申し込み条件になります。
年収とは企業が従業員個人に支払った総支給額を意味します。年収には基本給のほかに、以下のものが含まれます。
- 役職手当
- 住宅手当
- 家族手当
- 資格手当
- 残業手当
- 時間外勤務手当
- 休日出勤手当
- 賞与
従業員が実際に手にするのは、総支給額から控除が引かれた後の手取り額です。控除とは、具体的には年金、各種社会保険料、税金などがあります。
厚生年金
老齢厚生年金の掛け金です。65歳から支給されます。個人の負担額は半分で、残り半分は会社が負担しています健康保険
医療費が補助され、3割負担で病院にかかることができます。また入院した場合の休業補償もなされます。その原資にあたる保険料の半額を従業員が負担し、残る半分を会社が負担しています介護保険
介護保険料を納めることで、高齢で介護が必要になった際に、一部を負担するだけで介護サービスが利用できます。納付期間は40歳から始まります雇用保険
雇用保険を納めていると、失業時に失業給付を受けることができます。教育訓練給付金もここから交付されます所得税
1年間の所得に対する税金です。正規従業員の場合、会社は所得税を毎月、源泉徴収して天引きし、従業員に代わって納めてくれますが、金額にずれが生じた場合に「年末調整」として還付されたり追加で納付したりします住民税
従業員が居住する都道府県の自治体に納付する税金です。前年の所得から算出されるので、前年度に確定申告をするほどの所得がなかった入社1年目の従業員は、納税する必要はありません
手取り額は、従業員が居住する地域によって住民税が異なることや、通勤費が含まれるために、収入の比較がしにくくなっています。そのような差異の生じない年収が、客観的な尺度として用いられています
月給と月収の違い
月給とは、毎月支払われる金額です。月給から控除を引いたものが、手取りになります。月給は基本給+固定手当です。一方の月収とは、年収を12で割ったものです。年収には賞与も含まれます。
先の見えない時代だからこそ自分のキャリア形成を考えよう
統計をみると、男性・女性、業種、年齢、そして正規雇用者か非正規雇用者かなどによって、月給には大きな差があることがわかります。
また、日本では過去10年間、ほとんど平均月給が上がっていません。そのことを考えると、自分の月給を上げるためには、正規雇用を目指すこと、平均月給の高い業種を目指すことが重要であることがわかります。
アメリカのことわざに「上げ潮はすべての船を持ち上げる(A rising tide lifts all boats.)」というものがあります。世の中の景気が良くなれば、企業も人も豊かになるという意味です。残念ながら、今の日本は「上げ潮」と呼ぶことは難しい状況です。だからこそ、浮かび上がるためには、自分自身で考え、将来を見据えて計画を立てていくことが求められています。
自分の月給が、同年代、同業種と比べて、どの位の位置にあるかを見極めて、これからの計画を立ててください。