東京商工リサーチは10月20日、2020年度上半期(4~9月)の宿泊業の倒産件数は前年同期比2.5倍の71件に急増したと発表した。このうち、「新型コロナ」関連倒産は41件で、約6割(57.7%)を占めた。
コロナ禍で経営に打撃
2019年の訪日外国人数は過去最多の3,188万2,000人を記録(日本政府観光局(JNTO)調べ)。インバウンド需要に伴い、2019年度上半期における宿泊業の倒産は過去20年間で最少の28件にとどまった。しかし、2020年はコロナ禍により状況は急変。入国制限によるインバウンド消失、外出自粛による旅行需要の減退、出張取り止めなどにより宿泊客が急減し、多くの宿泊業者が経営に打撃を受けた。
東京商工リサーチが2020年8~9月に実施した調査によると、雇用調整助成金などの資金繰り支援策の利用率は、全体では50.5%(1万2,608社中、6,376社)だったのに対し、宿泊業者は83.6%と30ポイント以上高かった。また、「廃業検討率」(コロナ収束が長引いた場合、廃業を検討する可能性を回答した企業の割合)についても、全体では7.5%(1万1,036社中、832社)にとどまったが、宿泊業は20.0%と12.5ポイントも高かった。
同調査は、「Go To トラベル」について、「恩恵を受けるのは特定の地域や施設に限られているとの指摘もある。また、コロナ収束の見通しが不透明な段階では、『Go To』事業終了後の需要は読めない」と分析。2021年に延期された東京五輪についても、「宿泊需要が流動的」とし、「インバウンドが以前の水準に戻るには期間を要し、宿泊業者の抱える不安は尽きない。需要喚起と感染リスクの狭間で、宿泊業界は難しい舵取りを迫られている」と懸念している。