俳優の長谷川博己が主演を務めるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)の第28回「新しき幕府」が18日に放送された。終盤、将軍御座所とする二条城の建設がスタートし、資材として運び込まれた石仏を叩く織田信長(染谷将太)に明智光秀(長谷川)が違和感を抱く場面が描かれた。このシーンは、今後の展開の「すべての序章」だとチーフ演出の大原拓氏は語る。

  • 織田信長(染谷将太)に顔を叩かれた石仏を見る明智光秀(長谷川博己)

足利義昭(滝藤賢一)は信長とともに上洛を果たし、正式に15代将軍に就任。仲介役として貢献した光秀は将軍奉公衆となった。だが、信長が岐阜城に戻っている間に、三好の軍勢が義昭の御座所である本国寺を襲撃する事件が発生。光秀らはなんとか三好勢を撤退させた。駆け付けた信長は、すぐに連絡してこなかった幕府政所頭人・摂津晴門に怒り、以後、信用できる者を名代として派遣し、将軍御座所とする新たな城を2カ月で築くと宣言。二条城の建設が始まった。

建設現場に資材として石仏が運び込まれると、光秀は複雑な表情に。そして、信長に「これもお使いになられるのですか?」と尋ねると、信長は子供の頃に仏をひっくり返したエピソードを語り出し、「母上に叱られ、仏様の罰が当たると脅された。何も起こらなかった」と笑い、にやにやしながら石仏の頭をバシバシ叩く。それを見た光秀はなんとも言えない表情を見せ、2人の間の溝を感じさせた。そこに義昭が現れ、「この都を美しく保てるのはそなたしかおらん。この手を放さぬぞ」と信長に言葉をかけ、笑い合う2人の姿も描かれた。

チーフ演出の大原氏に、第28回で特に思い入れのあるシーンを尋ねると、この石仏のシーンを挙げ、「あそこがすべての序章」と重要性を説明。「信長と義昭はまだ一枚岩。そこがどうほころびていくのか。さらに、信長と光秀の関係が今後どうなっていくのかというのを植え付けていかないといけない。そのスタート地点」と振り返る。

そして、「今までも描いていますが、信長のちょっと常識と離れている部分が、あのようなシーンで出てくる。幕府を立て直すためには、有力な大名である信長の力は必要だけれど、ふと何気ないシーンの中で違和感を覚え、徐々にズレていく。その第一歩というか、伏線。すべてが一心同体なのかというと、必ずしも人間はそうではない部分があり、その一歩が描くというのが狙い」と説明。

「光秀が何かに対して信心深いということではなく、一般的な感覚として、ちょっとあれ? っていうくらいの感じ。今後の比叡山焼き討ちなどに何かつながっていく部分を表現したかった」と語る。「本能寺の変」への一歩でもあると言う。

ちなみに石仏は、本物をFRP(繊維強化プラスチック)で模って作ったもの。「すごい軽いですが、重そうに(運んでいる)」と明かした。

大原氏はもう一つ、「本国寺の変」も重要なシーンとして挙げ、「歴史上で大きく光秀が資料で出てくるのは本国寺。その時に奮闘したというのが史実としてあるわけで、どういう風に彼が本国寺においていたのか、すなわち幕府の一員としてどういう風に関わっていくのかということが、今後につながっていく」と説明。

「足利幕府の重要職にある光秀が今後なぜ信長に向かっていくのか、幕府を立て直すことが重要だった光秀が、なぜ幕府ではなく信長になるのかという位置づけ、それも序章として描いていく上で重要なところだった」と続けた。

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