東武鉄道は10月3日から、東武日光駅を発着する「SL大樹『ふたら』」の運行を開始した。運行初日には、東武日光駅で地元観光協会や駅長・駅員による出迎え等が行われた。
「SL大樹」は2017年8月10日にデビューし、鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉間で運行されてきたが、日光エリアからも乗入れの要望を受けていた。東武鉄道の準備が整ったことで、お披露目のため、8月5日に「SL大樹」が東武日光駅に初めて入線したが、営業運転で東武日光駅に乗り入れるのは今回が初となる。
今回の「SL大樹『ふたら』」初運行は、東武トップツアーズによる旅行商品として、9月3日に発売された。旅行代金は大人1万4,000円・こども8,600円だが、このツアーは「Go To トラベルキャンペーン」の事業支援対象となっているため、実際に参加者が支払う代金は、これらから35%の金額が差し引かれている。
東武鉄道によると、ツアー発売の際、定員170名分が満席となったが、キャンセルが発生したため、実際のツアー参加者は165名。その大半が関東圏から参加しており、さらに約50名は東京都在住の参加者だったという。浅草駅9時30分発の特急「スペーシアけごん13号」で下今市駅まで乗車し、同駅11時28分発の「SL大樹『ふたら』」に乗り換え、東武日光駅まで乗車する流れとなる。
さて、東武日光駅4番線ホームにアナウンスが流れ、間もなくSLの汽笛が響き渡り、「SL大樹『ふたら』」がゆっくりと入線する。東武日光駅の駅長・駅員と日光市観光協会女将の会が横断幕を掲げ、列車に手を振る歓迎ムードの中、11時51分に列車は到着した。
ツアー参加者は12時33分の出発まで、約40分間が自由時間となる。ホームでは日光市役所お囃子愛好会がお囃子を披露しており、その横のスロープ前には地元のキャラクター「日光仮面」も駆けつけた。迫力ある和太鼓をリズムに笛の音が響き渡り、駅周辺はにぎやかに。
一方で、各団体とは関係なく、個人的に「SL大樹『ふたら』」を歓迎している地元の子も見られた。家族に話を聞いたところ、「SL大樹」が大好きで、よく沿線で手を振って見送っているという。「SL大樹」が東武日光駅に乗り入れる話を聞き、段ボールで手作りした「ミニSL大樹」と一緒に、ツアーの出迎えに訪れた。かわいらしくも凛々しい姿に、周囲は和やかな雰囲気となっていた。予想以上に多くの人が乗っていたと驚いていたが、ツアー参加者を歓迎しようと盛り上がる駅の雰囲気をうれしく思ったようだ。
ツアー参加者には地域共通クーポン(大人2,000円分、こども1,000円分)が支給され、東武日光駅では駅構内の売店、ザ・金谷テラス、日光ツーリストセンターでクーポンを利用できる。中でも「SL大樹『ふたら』」グッズの販売は、通常の売店とは別に特設ブースを設けた上での販売に。家族連れを中心に人気を博していた。
その他にも、「SL大樹」と一緒に写真を撮ったり、機関士や駅長を撮影する参加者の姿も。参加者の層は家族や親子、鉄道ファンなど、まさに老若男女さまざまといったところ。気がつくと、あっという間の42分間だったが、参加者それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
再びツアー参加者を乗せ、「SL大樹『ふたら』」は12時33分に東武日光駅を発車。今度はディーゼル機関車が先頭となり、下今市駅へと向かっていく。出発の際も、一同の横断幕に見送られ、最後まで暖かなおもてなしとなった。なお、ツアー参加者はこの後、鬼怒川温泉駅まで「SL大樹『ふたら』」に乗車し、約2時間半のフリータイムを過ごした後、同駅16時38分発の特急「スペーシアきぬ142号」で帰路につく。
東武鉄道では、参加者の申込み時に全員に体調管理シートを配布。体調等の自己管理を促し、当日の受付時に体調管理シートの提出とともに検温を行う。列車乗車時には、全員にマスクの着用を守ってもらうことで、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を行い、ツアーが開催された。
「SL大樹『ふたら』」は2020年度中、月1回程度、臨時列車として運行予定。東武日光駅に発着するSL列車のみ「ふたら」の名を冠し、下今市~鬼怒川温泉間のSL列車は従来通り「SL大樹」として運行する。
「Go To トラベルキャンペーン」の対象に東京都発着の旅行も追加され、地域共通クーポンが10月1日から使えるようになったこと、そして今回の出迎えの盛り上がりを見て、観光への機運がより高まっていることを実感できた。「SL大樹『ふたら』」の運行開始を機に、日光・鬼怒川エリアがさらなる盛り上がりを見せることに期待したい。ただし、旅行の際は手洗い・うがいやマスク着用など、新型コロナウイルス拡散防止対策をそれぞれ行いながら楽しんでほしい。