4機種が一気にお目見えしたiPhone 12シリーズ、どれを選ぶか迷っている人も多いのでは? スマートフォンに詳しい専門家のみなさんが直感的に「欲しい!」と感じたiPhoneはどれなのか、どこに注目したのかをうかがってみました。今回は、ITジャーナリストの井上晃さんです。
ケースに入れずに使ってみたいと思わせる仕上がり
ケースを使わずにiPhoneを使うのはファッションである――。誰が言い出したのかは知らないが、初期のiPhoneを使っているころにそんな話を聞いたことがあった。その是非は分からないものの、知らぬ間についたちょっとした傷や画面割れが、所持品の“味”になっていく感覚は、一人のユーザーとしてなんとなく理解できたものだ。
しかし、iPhone 6以降、ここ数年の新モデルは「ケースを使おう」という暗黙の前提があったようにも思う。次第に端末価格が上がり、機種変更時には下取りによって割引が適用されることも相まって、スマホは大切に、きれいに使うことが重要になったのは言うまでもない。
今回、4種類が発表された「iPhone 12」シリーズではデザインが刷新され、「5s」時代のフラットなデザインに戻ったような印象を受ける。きっかけには、「5G」に対応するためのアンテナの刷新などがあるのだろうが、一般ユーザーからしてみたらそんな理由は知ったことではない。「5s」っぽくなった、という分かりやすい変化の方が重要だ。画面には耐久性の高いコーニング製の「Ceramic Shield」も使われているというし、ケースを使わずに「裸」でiPhoneを使ってみよう――と思う人がまた出てくるかもしれない。
そういう意味で、背面にマグネットでカチッと固定できる「MagSafe」機能は気になる。もちろん、ケースやバンパーのような存在がなくなることはないが、周辺機器の選択肢としてMagSafeを利用したアイテムが加わるというのは興味深い。Special Eventでも、カードを収納するポケットが紹介されていたし、ケースの保護目的よりも、背面にくっつけることを生かしたサード製アクセサリーが続々と出てくるのでは、と期待は高まった。ひょっとすると、小型のモバイルバッテリーなどにもMagSafe対応のものが出てくるのではなかろうか。
正直言うと、今回のウリである「5G対応」に関しては、日本国内のエリア整備状況を踏まえて、まださほど魅力を感じない。国内向けモデルはミリ波にも未対応であるし、通信速度にこだわりたい人の本命は、来年以降のモデルになるだろうな、と感じるからだ。しかし、上述したような文脈で“長く付き合う”ことを前提に考えると、5G対応は当然あった方が嬉しいので、「ひとまず対応して良かった」という感想に尽きる。
筆者が買うなら、カメラ性能を重視して「iPhone 12 Pro」
さて、自腹で買うなら4機種のうちどれを選ぶか、と考えてみる。筆者は、おそらくiPhone 12 Proを選ぶだろう。現時点で使用しているのが「iPhone 11 Pro」であり、ライター仕事でも望遠カメラの存在が重要だからというのが大きい。また、iPad Proを通じて、「LiDARスキャナ」の実力を経験しているので、今後のAR機能の進化を踏まえて、Proシリーズの方が魅力的に思えたという理由もある。さらに言えば、Proシリーズのみが対応する「Apple ProRAW」や「ナイトポートレート」の実力を試してみたいという、職業上の事情もある。
ちなみに、望遠カメラの倍率はMaxの方が2.5倍相当ということで優れているのだが、実はf値はProの方が2.0で明るい点は見逃せない。自身の運用スタイルとしては、手元で小物を撮影するときに影が入らなければ十分なので、MaxではなくProで良いかなと思った次第だ。
iPhone 12 Proの価格は、128GBモデルで税込117,480円、256GBで129,580円、512GBで153,780円だ。昨年購入した「iPhone 11 Pro」では256GBを選んだのだが、筆者の使い方では1年間で200GB以上を消費してしまっている。今回も256GBを選ぶと思う。