多くの人が関心を寄せるセレブリティたち。ハリウッドスターから日本の芸能人まで、日々その動向に関して情報発信されています。そんな有名人、著名人のパイオニア的な存在がイギリス王室ではないでしょうか。
最近であれば、ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚、そして誕生したジョージ王子。またウィリアム王子の弟で王室を引退したヘンリー王子など、日本でも大きな話題を呼んでいました。
1,000年以上の歴史を持つ英国王室、彼らの肖像画や写真が集まった「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―」が上野の森美術館で開催されています。
ジョジョ好きは注目? の肖像画
10月10日~2021年1月11日まで開催される本展覧会、テューダー朝から、現在のウィンザー朝までの王族たちの肖像画・肖像写真など約90作品を見ることができます。
そこまで歴史に詳しくない筆者ですが、それでもエリザベス1世は高校の世界史で習ったので、記憶に残っています。ずいぶん豪華な衣装を着た人だなぁ程度ですが! あるいは、『ジョジョの奇妙な冒険Part1』に登場した、黒騎士ブラフォードのエピソードですね(笑)。
そんな知的レベルの私でも、これだけの数とサイズがさまざまだと、見ていて飽きません。2フロアを使って展示されていますが、面白いと思ったのは、1階と2階で趣がずいぶん違うということ。
1階は絵画や石膏像など、いわゆる美術館的な印象で敷居の高さを感じますが、2階に上がると肖像写真が多く、家族の紹介的な親しみやすさがあるのです。
作品の制作意図が楽しい
この辺りの差について、本展の日本側の監修者である、東京藝術大学大学美術館准教授 熊澤弘さんは「王や女王のイメージの作り方、表し方が1・2階では異なります。具体的には、前者の多くは立派な額で飾られた雄大な姿が描かれています。しかし、2階の作品は小さな写真などが多く、王室の人々がどう見られていたのかを示すよい事例なのです」と解説してくれました。
考えてみると、巨大な肖像画などは王宮の壁くらいしか展示する場所はなく、見る人も王族や関係者がほとんど。
しかし小さな写真作品、しかもポートレートだけでなく、日常のスナップショットなどは手軽にプリントでき、アイドル写真のように世間へ広めることも可能です。情報発信ツールとして、その目的が違うのでしょうね。
下衆の勘繰りも必要?
もう一つの楽しみ方としては、作品の背景にある歴史的事実や物語性でしょう。
例えば、「清教徒革命(ピューリタン革命)」により処刑されたチャールズ1世。彼の肖像画が2つ隣り合わせで展示されていますが、生前に描かれた右の作品はよくありそうな内容、でも死後描かれた作品は宗教画のようです。
画家に発注して描かせたのは国王派ですから、彼らの政治的な意図を感じさせますよね。
もちろん歴史事実だけでなく、服装や描かれた小道具など細かいディテールが分かればわかるほど、作品の楽しみ方も広がるのでしょう。
展覧会ナビゲーターを務める、作家・ドイツ文学者の中野京子さんも「絵画に興味が無い人でも、ナポレオンの肖像画が目の前にあると、注目してじっくり鑑賞します。それは、ナポレオンの人生をある程度知っているからですよね。同じように、イギリス人が自分たちの王族への情報を持って作品を見るように、最低限の知識を持って見ると楽しみが増すでしょう」とアドバイスしてくれました。
その助言を踏まえて見てみると、2階に展示されたエリザベス2世とダイアナ元妃の作品なども、いろいろな妄想が出てきそうです。ん、下衆の勘繰り? 確かに……。
なお本展覧会は新型コロナウイルス対策として、「日時指定券(事前予約/当日券の販売もあり)」を導入しています。詳細は同展覧会のホームページで確認できます。
●information
「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―」
上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
開催期間:2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月・祝)※会期中無休