アップルの「Apple Watch」は、届いたメッセージやスケジュールが手元で素早く確認できる利便性の高さや、自身の行動や健康の状態を細かく測定して記録する点などが評価され、ビジネスパーソンを中心に「手放せない存在」と支持を得ています。次にアップルが攻めるのが「子ども」と「シニア」。iPhoneを持たない大事な家族の見守り用途にApple Watchが大いに活躍すると感じました。

  • ビジネスパーソンを中心に広く浸透したアップルの「Apple Watch」

    ビジネスパーソンを中心に浸透したApple Watch。これからは、子どもやシニアに持たせたい存在として注目を集めそうだ

iPhoneを持たない子どもやシニアもApple Watchが使えるように

9月に開催した新製品イベントで、アップルはApple Watchの新製品「Apple Watch Series 6」と「Apple Watch SE」を発表しました。Series 6はシリーズの主力となる高性能モデルで、SEは装備を抑えて低価格化を図ったスタンダードモデルです。

  • さまざまな装備を引き上げて大きく進化した主力モデル「Apple Watch Series 6」。価格は、GPSモデルが税別42,800円から、セルラーモデルが税別53,800円から

  • Series 5をベースに一部の装備を簡略化して低価格化を図った「Apple Watch SE」。価格は、GPSモデルが税別29,800円から、セルラーモデルが税別34,800円から

それらの新製品と合わせて発表した注目の改良点が、Apple Watchの「ファミリー共有設定」です。これまで、Apple Watchを使うにはiPhoneを持っていなければなりませんでしたが、親など家族のiPhoneと紐付けることで、iPhoneを持たない子どもやシニアでもApple Watchが使えるようになります。Apple Watchの登場以来、大きな変化といえます。

親のiPhoneとは異なる独立した電話番号を割り当てるため、Apple Watchはセルラー版が必要になります(Apple Watch Series 4以降のモデルに対応)。ファミリーメンバーを設定するには、親のiPhoneがauの契約でなければならず、現時点ではそれ以外のキャリアでは利用できない点は注意が必要です。

設定は簡単。親のiPhoneのWatchアプリで「Watchを追加」を選び、新たに用意したApple WatchをペアリングすればOK。auとの契約情報はApple Watch内のeSIMに格納されるので、SIMカードの送付を待つことなくその場で契約の手続きが進められます。

  • ファミリーメンバー用のApple Watchは、自分のiPhoneから通信契約の設定などが行える。わざわざauショップに足を運ぶ必要はない

子どもが予定通りに行動しているかをゆるやかに見守れる

ファミリー共有設定で設定したApple Watchは、位置情報を親のiPhoneで参照できるようになります。「探す」アプリの「人を探す」の項目で、ファミリーメンバーに登録した子どもの名前をタップすれば、現在子どもがいる場所を地図上で確認できます。GPSと携帯電話の基地局の情報を併用していることもあり、位置情報はかなり正確。位置情報の表示もスムーズで、待たされることはありません。

  • Apple Watchを渡した子どもの位置情報は、親のiPhoneの「探す」アプリで参照できる。位置情報の正確さに驚く

  • しっかり腕に装着するApple Watchならば、子どもでもうっかりどこかに置き忘れたり落として紛失する心配が少ない

特にありがたいのが、塾や駅など特定の場所に着いたり、そこから退出した場合に通知を送る機能です。「探す」アプリの「通知」の項目で、ふだん通っている塾やスイミングスクール、利用する駅などの場所を指定しておけば、それらの場所に到着したり退出したタイミングで自分のiPhoneやApple Watchに通知が届きます。塾や習い事に出かけた子どもがトラブルなく行動しているかをゆるく見守りたい場合に便利です。もちろん、ただ見守るだけでなく、子どもにメッセージを送ったりFaceTimeでの音声通話もできます。

  • 指定した場所に到着、もしくは退出した際に通知を送る機能も用意する。複数の条件を設定できるので、乗り換えの駅や塾などの場所を設定しておけば、予定通り行動しているかどうかが手間なく把握できる

子どもの見守りのみならず、シニアの見守り用途にも向くと感じました。認知症の心配があるシニアに持たせれば、予期しない徘徊時も現在いる場所を素早く把握できます。万が一転んでApple Watchの転倒検出機能が働いた場合や、熱中症やケガなどで動けなくなって自身でApple WatchからSOSを発信した場合は通知が来るので、深刻な状況になる前に素早く対処できます。

  • 今年の敬老の日は過ぎてしまったが、シニアにApple Watchをプレゼントするのもおすすめ。勝手に外出してしまった場合も居場所を把握できるし、心拍数や睡眠時間などのヘルスケアデータも遠隔で確認できる

参照できるのが位置情報だけではないのは、キッズケータイやシニア向けスマートフォンにはないポイント。ヘルスケアのアプリを開けば、ファミリーメンバーの心拍数や歩数、スタンド時間、アクティビティなど、Apple Watchが取得したヘルスケアの情報も参照できます。離れた場所に住む両親に何か操作などを依頼する必要なく、健康状態をそっと見守れるわけです。

  • さまざまなヘルスケアデータも遠隔で参照できる。難しい操作を強いることなく、実家に住む両親の健康状態がそっと見守れるのはありがたい

【お詫びと訂正のお知らせ】初出時、「ファミリーメンバーの心拍数や血中酸素ウェルネスアプリで測定した血中酸素濃度、睡眠時間、アクティビティなど、Apple Watchが取得したヘルスケアの情報も参照できます(現状だと日本では利用できませんが、心電図の機能もあります)」と記載しましたが、血中酸素濃度、睡眠時間、心電図のデータは参照できません。該当箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします。(2020年10月12日 14:30)

子ども用のApple Watchは自分の“お下がり”をプレゼントする手も

ファミリー共有設定が利用できるのは、Apple Watch Series 4以降のモデルとなります。現行モデルでもっとも安く入手できるのはApple Watch SEで、セルラーモデルの価格は34,800円(税別)から。LTE通信機能のないGPSモデルが29,800円(税別)からなので、5,000円増しでセルラーモデルが購入できるのはなかなか魅力的。多くの改良が施されたApple Watch Series 6は、セルラーモデルが53,800円(税別)からとやや高めになります。

子どもにプレゼントするならApple Watch SE、親にプレゼントするならば血中酸素や心電図の測定機能を搭載するApple Watch Series 6がオススメ。ただ、ファミリー共有設定に興味を示す人ならば、すでにApple Watch Series 4やSeries 5など新しめの製品を使っているはず。持っているのが運よくセルラー版ならば、現在使っているApple Watchを子どものお下がりにし、自分用に最新のSeries 6を購入するのがよいでしょう。

駆け回って遊ぶことの多い小中学生の子どもは、うっかり転んだりしてApple Watchの画面を破損する可能性があるので、サードパーティー製の耐衝撃ケースを一緒にプレゼントしてあげましょう。ポリカーボネート製の衝撃吸収ケースは、2,000円以下でさまざまな製品が購入できます。

au回線の利用者に限られるのは痛いが、さらなる進化も期待できる

魅力的なファミリー共有設定ですが、現時点ではau回線のiPhoneを使っている人でないと利用できない制約があることと、利用料金が2年目以降は高くなるのが欠点といえます。利用料金は、キャンペーンの適用で月額350円(最大割引適用時)の低料金で利用できますが、キャンペーンの割引は12カ月間で終わるため、2年目からは月額1,980円に上がるのが悩ましいところ。

とはいえ、Apple Watchはヘルスケアまわりの機能が今後さらに進化・改良される可能性を秘めており、家族の行動と健康を手間なくしっかり見守れることを考えれば十分に納得できます。スマホデビューにはまだ早い子どもや、安全かつ健康に老後を過ごしてほしい両親に、ちょっと奮発してプレゼントしてみるのもよいでしょう。