マツダはコンパクトSUVの「MX-30」を発売した。独自のマイルドハイブリッドシステム「M ハイブリッド」や観音開きの「フリースタイルドア」などが特徴の新型車で、価格は242万円(2輪駆動、4輪駆動は265.65万円)。似たようなサイズ感のコンパクトSUV「CX-30」はガソリンエンジン搭載モデルが239.25万円からなので、MX-30は意外に安い感じがする。
まずはハイブリッド、EVの一般販売も検討中
このほど日本で発売となったのは、MX-30のマイルドハイブリッド(MHV)車だ。2021年には電気自動車(EV)の「MX-30」も日本で発売となる。EVについては法人客を中心とするリース販売のみとする予定だったが、一般客からも「欲しい」との声が聞こえてきているようで、販売方法の拡充も検討しているという。
MX-30 MHVのパワートレインは、2.0Lのガソリンエンジンにモーターやバッテリーなどからなる「M ハイブリッド」を組み合わせたものだ。MHVシステムは減速するときに発生するエネルギーを電力として回収(回生)し、その力でモーターを回して走りをアシストする。例えばアイドリングストップ(信号などで停止した時にエンジンが止まる機能)からの再始動時には、モーターがベルトを介してエンジンを回してくれるので、静かでスムーズな発進が可能になるという。
ほぼワンプライスの戦略的な価格設定
MX-30の価格設定は、自動車としては珍しく、ほぼ「ワンプライス」だ。クルマはパワートレインや装備差(グレード)、駆動方式などによって価格に幅があるのが一般的。例えばCX-30であれば、ガソリンエンジンで2輪駆動の「20S」というグレードが239.25万円である一方、新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を積む4輪駆動の「X L Package」というグレードは371.36万円といった具合だ。これに対し、MX-30 MHVの価格は2輪駆動が242万円、4輪駆動が265.65万円と分かりやすい。ちなみに、どちらのクルマにも「100周年記念モデル」が設定されているが、こちらは特別な存在なので、今回は考慮に入れないこととする。
CX-30の「20S」とMX-30は、どちらも2.0Lガソリンエンジンを積んでいるのに3万円程度しか値段が違わない。MHVを取り付けるのにいくらかかるのかは分からないのだが、モーターやバッテリーを使った部品なのでそんなに安くなさそうだし、フリースタイルドアなど固有の装備がある割には価格差が少ないような気がする。それはどうしてなのか。MX-30の販売・マーケティングを担当するマツダ ブランド推進部の齊藤圭介さんに聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「(MX-30の価格は)戦略的な値付けとして検討したものです。マツダの幅を広げるモデルにしたいので、新しいお客様に選んでもらいやすい、間口を広げられるような価格としました。(CX-30と)装備差はいくつかありますが、MX-30にはMHVやフリースタイルドアといった固有の装備もありますので、お客様にはニーズによって選んでいただけると思っています」
マツダとしては、MX-30で「これまでマツダに振り向いてもらえなかった新しいユーザー」(齊藤さん)を獲得したい意向。コンパクトSUV市場は急成長を遂げていて競合の厳しいフィールドだが、MX-30はMHVやフリースタイルドア、これまでとは少し違うデザインテイストなどで新規顧客の開拓を目指すモデルだ。そんな役目を背負うクルマなので、乗り出しの価格を低く抑えたのだろう。
ほぼワンプライスのMX-30ではあるものの、自分好みのクルマに仕上げるにはメーカーオプションやショップのオプションを追加していく必要がある。初期装備のオプションの違いでいくつかのグレードを設定するのではなく、顧客に好きなオプションを選んでもらいたい。そんな考えで新しい売り方を提示しているのがMX-30なのである。
内装は(革張りではなく)布のシートで大丈夫なのだが、外装にはこだわりたいしお金もかけたい。こんな考えでクルマを選ぶ場合、最終的には外装をあきらめて布シートのグレードを選ぶか、外装は譲れないので不要な革張りシートの付いた上級グレードを選ぶかといった感じで、妥協を強いられることがあるはず。そういう意味で、オプションを細かく選べるMX-30ならば、自分の好み通りか好みに近い1台を作り上げることができそうだ。
ただ、オプションを付ける前提で考えれば242万円では買えないクルマなので、この価格設定はマツダの説明通り、戦略的なものと考えた方がいいだろう。CX-30かMX-30かで悩んでみようという方には、同じような装備にすると価格差がどうなるかを比較検討されることをオススメしたい。