過去の対戦成績はほぼ互角。4度目となる番勝負の注目ポイントは「後手番での勝敗」
第33期竜王戦七番勝負がいよいよ10月9日に東京都「セルリアンタワー能楽堂」で開幕します。30歳のタイトル保持者豊島将之竜王に挑戦するのは、50歳になった将棋界のレジェンド羽生善治九段。棋界2大タイトルの竜王と名人を同時に保持した経験のある、新旧王者対決が実現しました。
まずは今期竜王戦の羽生九段の歩みを振り返ります。1組に所属する羽生九段は、橋本崇載八段、佐藤康光九段、稲葉陽八段、佐藤和俊七段を破ってランキング戦を優勝し、決勝トーナメントに進出しました。決勝トーナメントでは勢いに乗る若手、梶浦宏孝六段を下して挑戦者決定三番勝負に駒を進めます。挑決では同学年の丸山忠久九段と激突。決勝トーナメント初戦で藤井聡太棋聖を破って勢いに乗る丸山九段に初戦を取られたものの、第2、3局を連取して挑戦を決めました。
豊島竜王と羽生九段の過去の対戦成績は、豊島竜王から見て16勝17敗です。明日からの第1局が約1年ぶりの対戦となります。
初対決は2010年11月の第60期王将戦挑戦者決定リーグで、豊島五段が制しています。豊島五段はその期の挑決リーグを勝ち抜き、自身初のタイトル挑戦を決めたのでした。
両者が初めてタイトル戦で対決したのは、2014年の第62期王座戦。羽生王座が開幕2連勝するも、豊島七段も2連勝で追いつきます。決着局の第5局を制したのは羽生王座でした。その後2015年には第86期棋聖戦五番勝負でも豊島七段が羽生棋聖に挑戦しましたが、この時も羽生棋聖が3勝1敗で防衛を果たしました。
それから3年後の2018年に行われた第89期ヒューリック杯棋聖戦で、豊島八段は羽生棋聖を3勝2敗のフルセットの末破りました。この棋聖が豊島竜王にとっての初タイトルとなりました。初タイトル獲得からの活躍ぶりは目覚ましく、その後王位、名人、竜王、叡王を奪取し通算5期タイトルを保持しています。
しかしながら、豊島竜王はいまだタイトル防衛がありません。今回の竜王戦七番勝負が4度目の防衛戦。悲願の初防衛なるでしょうか。
羽生九段は今期竜王戦にタイトル獲得100期が懸かっています。99期目のタイトルを獲得したのは、この竜王戦。第30期竜王戦七番勝負で渡辺明竜王から4勝1敗で奪取し、永世竜王の資格も獲得。永世七冠を達成したのでした。
ところがそこから足踏みが続いてしまっています。100期目獲得のチャンスは、前述の第89期ヒューリック杯棋聖戦を含めこれまでに3度ありましたが、いずれも獲得・防衛ならず。羽生九段も豊島竜王と同じく「4度目の正直」を狙います。
対戦成績はほぼ互角の両者ですが、先後別成績では意外な結果が出ています。33局中、先手は11勝、後手は22勝とダブルスコアになっています。先手が若干有利が定説となっている現代将棋において、この成績は驚きです。特に直近では後手番が7連勝中となっています。
将棋界の番勝負では、テニスのサービスゲームになぞらえて、先手番で勝つことをキープ、後手番で勝つことをブレイクと言うこともあります。過去の成績を見るに、今回の七番勝負ではよりキープすることが重要になってくるでしょう。第1局の振り駒にも注目です。
これまでの本カードの戦型と採用数は以下の通りです。
角換わり:11局
横歩取り:8局
矢倉:6局
相掛かり:3局
雁木:2局
四間飛車(羽生九段が採用):1局
中飛車(豊島竜王が採用):1局
袖飛車:1局
豊島竜王は居飛車党。羽生竜王もオールラウンダーではあるものの、基本は居飛車ということで、相居飛車の将棋が大半です。おそらく今回の番勝負でも角換わりの将棋が多く指されると予想されます。
しかし直近の対戦では相掛かりの将棋となっています。また、両者は最近横歩取りの採用数も多く、角換わり・相掛かり・横歩取りどれになってもおかしくはありません。
もし振り飛車が登場するとすれば、羽生九段が振ることになるでしょう。豊島竜王が中飛車を採用したのは2014年10月の対局と6年前です。一方、羽生九段が四間飛車に振ったのは、2019年7月の対局。2局前の対戦でのことでした。