ロールス・ロイス「ゴースト」の新型が日本に上陸した。ゴーストは同ブランドで最も売れているモデルで、新型は顧客からの声を受けてゼロから開発したとのこと。価格は3,590万円(全長が長いバージョンは4,200万円)だ。こんなに豪華なクルマなのだが、目指したのは「脱・贅沢」なのだという。
ありふれた贅沢には価値がない
2009年に発売となったゴーストは、同社のフラッグシップモデル「ファントム」とは異なるキャラクターが人気を博した。控えめでミニマルなロールス・ロイスを求めていた顧客のニーズにマッチした結果、116年に及ぶロールス・ロイスの歴史で最も多く売れたモデルとなったのが初代ゴーストだ。
新型ゴーストが初代から受け継いだコンポ―ネントは「スピリット・オブ・エクスタシー」(ボンネットの女神像)と「アンブレラ」(リアドアに仕込まれた傘)のみ。デザインと開発はゼロから進められた。車両構造としては、ゴーストとしては初となるアルミニウム製スペースフレーム・アーキテクチャーを採用。ロールス・ロイスの代名詞である「魔法のじゅうたん」のような乗り心地はさらなる進化を遂げているという。
新型ゴーストの開発にあたり、ロールス・ロイスが設定したデザインコンセプトは「ポスト・オピュレンス」。つまり、「脱・贅沢」だ。同社によると、これは建築やファッション、ジュエリー、ボートなどの世界ではすでに確立された考え方で、これ見よがしな表現ではなく、素材の本質的な価値を求めるムーブメントなのだという。
しかし、ロールス・ロイスが脱・贅沢とは少し驚く。富裕層の間にも、ミニマリズムとかリダクショニズムといったような考え方が流行しているのだろうか。そのあたりについて、ロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋 北部地域で広報マネージャーを務めるローズマリー ミッチェルさんに聞いてみた。
――脱・贅沢という考え方って、富裕層の間で主流になりつつあるんですか?
ローズマリーさん:まず、この考え方がどこから来ているかをお話ししますね。
今って、何でも「ラグジュアリー」といいますよね? プレミアムとか、プチ贅沢とか。ラグジュアリーが手に入りやすくなっているんです。ただ、ラグジュアリー自体がありふれたものになってしまうと、ラグジュアリーではなくなりますよね。
――特別感がなくなりますもんね。
ローズマリーさん:そうです。そこで、本物のラグジュアリーとは何かを考えました。それは表面的なものではなく、中まで高級といいますか、素材もそうですし、職人が手で作っているというクルマの作り方もそうです。本質に戻る、あえてシンプルにするという現象が出てきているんです。これは以前からの流れではあるんですが、例えば最近、京都や日光にラグジュアリーなホテルができましたけど、内装などはとてもシンプルなんです。そういった流れは、ますます顕著になってきています。
日々の生活が忙しくなればなるほど、リラックスするときには、何にも考えなくて済むように、シンプルな空間にいたくなるものです。リラックスしたいとなったら結局、座禅とかメディテーション(瞑想)といったことに行きつきます。なので、ゴーストもリラックスできるシンプルな環境に仕上げてあります。
――見せかけのものを含め、ラグジュアリーなものが氾濫する世界に、まれであることと、本質的であることを信条に作ったのがゴーストだと。
ローズマリーさん:レアであることは、ロールス・ロイスの普遍的な価値です。さらに、細かいところにもこだわりつつ、シンプルに作る。特にゴーストはそういうクルマです。お客さまによって求めるものが違うので、ファントムは従来どおり、もう少し目立つクルマになってはいるんですけどね。
ゴーストの主な顧客はグローバルに仕事を展開する事業家や起業家で構成されているとのこと。現代の忙しくて違いの分かる富裕層の方々には、シンプルでありながら本質的な価値を追求するゴーストのようなクルマが好まれるようだ。