2020年9月23日から27日の4日間、「TOKYO GAME SHOW 2020 ONLINE(東京ゲームショウ 2020 オンライン / TGS2020)」が開催されました(9月23日はオンライン商談のみ)。コロナ禍により、幕張メッセでのリアルイベントは中止。初のオンライン形式です。
オンラインなので、試遊台で遊ぶことも、趣向を凝らしたブースを見てまわることもできませんが、朝から深夜まで配信される公式動画を楽しむことができました。
公式チャンネルでの動画配信だけでなく、自社チャンネルで動画を配信しているTGS2020参加企業もありました。すべての動画を観るにはかなりの時間がかかりそうなほどで、年に一度の一大イベントらしい盛り上がりを見せていました。
試遊はできないが、得られる情報量は多い
オンライン化がすべてマイナスに働いたかというと、思わぬ恩恵もあったように感じます。まず、遠方に住んでいる人にとって、東京ゲームショウはそもそも参加が難しいイベントでした。2019年は延べ26万人以上が来場していましたが、当然、足を運べない人のほうが多いわけです。その人たちにとって、家でも参加できるオンラインは、ある意味リアルイベントよりもありがたい存在だったのではないでしょうか。
出展を検討する企業も同様です。オフラインの場合、海外のパブリッシャーやデベロッパーは、東京ゲームショウに参加しにくいもの。しかし、オンラインであれば、日本にやってくることなく、自国から情報を発信できるので、参加コストや、参加ハードルは従来よりも低いでしょう。
来場者にとっても、人気タイトルの試遊ブースはどこも長蛇の列なので、1日かけても2~3タイトル遊び、情報を得るのが関の山でした。オンラインであれば、試遊はできないものの、家でくつろぎながら好きな番組を好きなだけ観られるわけです。
動画配信になったことで、閉館時間の制限もなくなりました。25日金曜日は、なんと深夜2時まで配信。この深夜配信のおかげで、これまでの東京ゲームショウにはないお祭り感を味わえたように思います。
閉幕後も楽しめるアーカイブ動画
また、配信動画は、各社とも力を入れており、2020年いっぱいアーカイブとして残るそうなので、時間を作って観てほしいところです。
ここでいくつか個人的にオススメしたい動画を紹介していきます。人気新作ゲームについては、それだけで視聴する理由になると思いますので、それ以外の見どころがある動画をピックアップしました。
まずは9月24日にオープニング前に配信された「JeSUの活動発表会」です。2019年での同プログラムでは、景品表示法の高額賞金についての発表でしたが、今回は風俗営業法について。参加費を運営費のみに充当するのであれば、別の財源で確保した賞金を支払う大会を開催できると明確化されました。
また、eスポーツ施設については、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの汎用性がある機器が風俗適正化法で定める遊戯設備に該当しないと考えられるとし、事実上、営業が認められたことになりました。eスポーツイベントやeスポーツ施設を運営したい人にとっては重要な案件なので、確認をしておいて損はないですよ。
次に26日の19時から配信された「日本ゲーム大賞2020 年間作品部門 Day1」です。そのなかで特にゲームデザイナーズ大賞は必見。これは、日本のトップクリエイター10名による独創性、斬新性などを評価軸に選出する賞で、今回受賞した『Baba Is You』はゲームシステムが秀逸なパズルゲームでした。Nintendo Switchのストアで、1,500円(税込)で販売されているので、動画を観て興味を持った人はぜひプレイしてみてください。
ただ、紹介されたゲームの素晴らしさだけが、この番組の見どころではありません。とりわけ、審査委員長の桜井政博氏の紹介ビデオが秀逸。『Baba Is You』の特殊なゲーム性をわかりやすく説明するとともに、魅力を最大限に活かすトーク力には感服しました。
続いては、27日10時から配信していた主催者番組の「Nintendo Switchでゲームを作って『ゲームクリエイターになろう!』」。Nintendo Switchのプログラミングソフト『プチコン4 SMILE BASIC』を使って、プログラムを体験する動画です。
わかりやすいハゲ頭とヒゲのハカセが、プログラム初心者のお姉さん「うい」にプログラムを教える内容で、子ども向けとしても、その親御さん向けとしてもわかりやすい番組でした。作り込みもしっかりしていて、ファミリーで楽しめると思います。
最後に紹介するのは、最終日のエンディング番組前のラストを飾った『PUBG』です。これは先に言ったタイトルごとの番組ではありますが、番組終盤に行った企業対抗戦が秀逸だったので紹介したいと思います。
企業対抗戦には、プロチームではなく、あくまでも各企業の社員が有志で集まってPUBG大会に参加していました。しかも、eスポーツやゲーム関連だけではなく、業種もさまざま。通常業務で接点がなさそうな企業がひとつのゲームで戦う様子は、なかなかシュールな展開です。
優勝賞品は、なんと、『PUBG』のゲーム内に企業の看板が掲載されるというもの。個人に対して何かをもらえるわけではありませんが、宣伝できるのであれば会社としても社員の活動を認めざるを得なくなるでしょう。うまくいけば、回り回って大きな恩恵を得ることになります。参加企業の業態に即した実況もおもしろく、eスポーツ初心者にぜひ観てもらいたい配信です。
初めてのオンライン開催となった東京ゲームショウですが、動画配信のコンテンツとしては、なかなか見応えがあったのではないでしょうか。ただ、やはり“イベント感”はオフラインよりも薄れていますし、東京ゲームショウのすべてを再現するには難しかったと思います。2021年はオフラインイベントが復活することを願いつつ、オンラインの良いところも継承してほしいところです。