米労働省が2020年10月2日に発表した9月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数66.1万人増、(2)失業率7.9%、(3)平均時給29.47ドル(前月比+0.1%、前年比+4.7%)という内容であった。

(1)市場の注目が集まった9月の米非農業部門雇用者数は前月比66.1万人増と、前月の148.9万人増から減速。市場予想(85.9万人増)も下回った。3カ月平均の増加幅は130.4万人となり、こちらも前月(267.7万人)から大きく減速した。業種別では、娯楽・ホスピタリティが大きく伸びた反面、州や地方政府の教育関連職員がオンライン授業への移行などを背景に大幅に減少した。

(2)9月の米失業率は7.9%となり、前月から0.5ポイント低下。市場予想(8.2%)以上に改善した。また、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は12.8%となり、前月の14.2%から1.4ポイント改善。ただ、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.4%へと低下した。

(3)9月の米平均時給は29.47ドルとなり、前月から0.02ドルの増加にとどまった。伸び率は前月比+0.1%、前年比+4.7%となり、いずれも予想(0.2%、+4.8%)を下回った。

米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加幅が5月以降のコロナ禍からの回復局面では最小にとどまった。失業率は改善したが、「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータの歪みとなっている模様で、実際の失業率はより高い水準にあると見られている。

また、労働参加率の上昇は労働市場からの退出者が増えたことを意味する。平均時給の伸びも鈍っており、今回の雇用統計は米労働市場の回復ペースが鈍化していることを示す内容であった。新型コロナウイルスの感染が一部で再拡大していることや、政府の財政支援策が一部失効したことなどが鈍化の背景と考えられる。

もっとも、市場は失業保険申請件数の高止まりなどから、米労働市場の回復鈍化を予め見越していた。さらには、新型コロナウイルスに感染したトランプ米大統領の症状に関心が向かったこともあって、株・債券・為替ともに、米9月雇用統計には大きな反応を示さなかった。なお、次回米10月雇用統計は11月6日に発表される。今回は、米大統領選挙(11月3日)前としては最後の雇用統計であった。雇用問題は、選挙戦最終盤の争点のひとつとなる公算が大きい。