舞台『女の一生』製作発表記者会見が30日に都内で行われ、大竹しのぶ、高橋克実、風間杜夫、段田安則(出演・演出)、安孫子正(松竹 代表取締役副社長)が登場した。
同作は昭和20年4月の終戦直前に、森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が初演、生涯に947回にわたって主人公の布引けいを演じ続けた名作。明治38年(1905)から昭和20年(1945)までのある女の40年間を描いている。
新橋演舞場にて11月2日〜26日に上演されるが、1,428席のところを679席で上演。出演・演出の段田は戦時中に初演を迎えた同作について「命がけの時でもお客さんは舞台を見たいと思っていた、役者も命がけで舞台をやるもんなんだなあと思って、そういう力を演劇が持っているのかなと思いました」としみじみ。
主演の大竹も「戦時中にこの芝居が生まれたんだと思うと、本当にいろいろなことを考えさせられます。劇場にお客さんが来るのが当たり前じゃない世の中になった時、杉村先生が『芝居中に空襲警報が鳴るとか、うしろにおまわりさんが立って不当なセリフがあるかないかチェックして、そういう中で私たちは芝居をやってたのよ。あなたはいいわね、自由な時代に生まれて、自由に芝居ができるんですもの。頑張りなさいね』とおっしゃってくださったことを思い出しました」と振り返る。「私たちは今、不自由な時代に突入したわけですけども、それでもやっぱり芝居をやりたいと思いました。稽古場では万全の対策を練って、いつものようにあーでもないこーでもないと大声で手を取り合って笑い合える事は全くできない状況だけども、その中でもできるだけの条件の中で、布引けいがいきいきと生きられるような芝居をみんなで作っていきたいなと思います」と意気込んだ。
また、高橋は今回19歳から59歳を演じるために、「カツラが3パターンくらい。終わったあとに買い取るかどうかの打診があるかと思います」ととぼけて見せる。風間も「『演舞場はやりますよ』という力強い言葉を聞いた時、役者を続けてて良かったなと思いました」とこのコロナ禍での上演について思いを馳せた。
大竹は令和という時代について改めて「どこに向かっていくのかはとても不安ですけど、演劇というものは絶対に滅びないと信じて頑張ってきたこの半年間だったなと思います」と心境を表す。改めて「4月公演の『桜の園』がゲネプロの直前まで行ったけどそこで中止になって、あの時の喪失感。こんなに面白い芝居が見てもらえることなくセットも全てが散っていくというあの悲しみは一生忘れられないものでしたね。そこからは自粛期間に入って、息子が一緒に暮らしているので、日常をこなしているので終わってしまいました。でもいつか、と思っては生きていました」と語った。