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【この記事のエキスパート】
書道師範/筆耕士:ぺんらいと
筆耕士として贈答用熨斗紙表書き・名入れ、封筒など宛名書き等の代筆。書道歴15年以上。子育てをしながら書道教室に通い師範取得。現在書道展覧会の出品にも意欲的に取り組み中。冠婚葬祭において、前準備等に関する仕事にも携わっております。
学校での書道の授業や、お正月の書き初めなどで使う「墨汁(ぼくじゅう)」。書道界では「墨液」と呼ばれ、呉竹やサクラクレパス、開明など有名メーカーからさまざまな商品が販売されています。この記事では、書墨汁の選び方とおすすめの商品を厳選!
用途と成分と文字の色がポイント
墨汁の選び方とは?
書道師範・筆耕士のぺんらいとさんに取材をして、墨汁を選ぶポイントを教えていただきました。成分や種類をよくチェックすることが大切です。ぜひ墨汁選びの参考にしてください。ポイントは下記の5つ。
【1】配合されている糊の成分
【2】用途
【3】洗濯で落とせるか
【4】煤(すす)の種類
【5】容量
上記のポイントを押えることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
天然膠と合成樹脂の2種類
【1】墨汁に配合されている糊の成分で選ぼう
墨汁を選ぶときには、まず使用されている成分を確認しましょう。おもに「天然膠性」のものと「合成樹脂系」の2種類があります。
開封したら早めに使い切る
「天然膠性」は固形墨に似た書き心地
動物の皮や骨からは天然のたんぱく質「膠(にかわ)」が取れますが、それを使用したのが「天然膠性」の墨汁です。
書道のときには固形墨を使用するのがよいといわれますが、天然膠性の墨汁には固形墨と似たような心地よい書き味があります。
さらに墨汁に固形墨をすり足すこともできます。ただし長持ちしないので、天然膠性の墨汁は開封したら早めに使い切ることが大事です。
天然膠性のような心地よい書き味にはならない
「合成樹脂系」は早く乾いて長く使える
「合成樹脂系」の墨汁は劣化が少なく、開封後も長く使い続けられるのが特徴です。たまにしか墨汁を使わない方に適しています。
ただし、天然膠性のように固形墨をすり足して使うことはできません。合成樹脂系の墨汁はねばりのある書き味を好む方に向いています。
天然膠性のような心地よい書き味を求める方には適していません。
練習用か作品用かそれ以外か
【2】用途により選ぶ
墨汁の用途には、書道用と書道用以外があり、書道用は、練習用と作品用に分かれます。用途ごとに特徴が異なりますので、見ていきましょう。
価格が安い
書道練習用
練習用の墨汁は、作品用に比べて墨の色が濃くなくて灰色がかった黒色になります。価格も安いため気軽に思う存分使えるのがメリットです。
漢字用、かな用、写経用と用途別の墨汁がある
書道作品用
作品用は、練習用に比べて色に深みがあり、紺や赤を含んだ墨色の美しさが違います。書道用紙に書いたときのにじみや散りなども起こりにくいのが特徴です。
また、さらに漢字用、かな用、写経用と用途別の墨汁も用意されています。それぞれの用途において最適な筆勢が出せるよう、成分である煤(すす)の粒子の大きさが調整されています。
墨絵・漫画・版画・水墨画・魚拓・染色など
特殊用途向け
墨絵や漫画など、書道以外の特殊な目的に使う墨汁も発売されています。それぞれの用途により、書きつける対象の素材(紙・木・布など)や筆記具(筆・ペン・工具など)も違ってきます。用途別の専用墨汁があれば、それを取り入れるのがベターです。専用の墨汁がない場合には、書く対象の素材や使用予定の筆記具に対応しているかを確認するようにしましょう。
清書用には向かないので、練習用として使う
【3】洗濯で落とせるタイプなら汚れても大丈夫
書道の授業で子どもが服に墨をつけてしまうことはよくあります。墨汁も固形墨もなかなか汚れが落ちません。墨汁を選ぶときは、洗濯で落とせるかどうかもひとつの基準になります。
最近は洗濯で落ちる墨汁も販売されていますが、色味が落ちるので清書用には向かないようです。もっぱら練習用として使用するのに適しています。
また、洗濯で落ちる墨汁を使用すると、額に飾ったりはできないので注意してください。
原料の違いで黒色の濃さやツヤが違う!
【4】煤(すす)の種類もポイント
墨汁に使われている煤(すす)には、おもに「カーボンブラック」「油煙墨」「松煙墨」の3種類があります。それぞれの特徴を知っていると墨汁を選びやすくなるので、説明しましょう。
長期間の保存には向いていない
「カーボンブラック」は安価で黒色が強い
油やガスを使って工業的に製造されたものが「カーボンブラック」です。炭素がメインの微粒子ですが、墨汁だけでなくインクなど幅広く使われています。
カーボンブラックを使用した墨汁はリーズナブルな価格でありながら、強い黒色を得られるのが特徴です。ただし経年劣化しやすいため、長く保存したい書には向いていません。
薄めて使うと青い色合いに
「松煙墨」は深く、重い書き味が特徴
「松煙墨」は松材を燃やしてできる墨汁で、古い松材を使用した墨汁のほうが質がよいといわれます。製造量がすくないため、カーボンブラックより値段は高いです。
松煙墨の墨汁は深くて重みのある味わいで、燃焼温度によって墨の粒子にムラが発生するため墨色に幅があるのが特徴です。
薄めて使うと青い色合いの書になります。
伸びがいい
「油煙墨」は濃くてツヤのある墨色
「油煙墨」は植物性の油を燃やしてできた煤が成分になっており、この墨汁を使うとつややかで濃い黒色になります。
油煙を作るために使われる油にはごま油や椿油がありますが、値段の高い菜種油を使うことも。
油煙墨は松煙墨のような墨色に幅はありませんが、粒子がこまかいので伸びがいいのが特徴です。薄めると茶色っぽい色合いになります。
初めて購入するものは少量タイプを確認
【5】容量で選ぶ
墨汁には、子どもが書道学習のときに使いやすい少量タイプから、書画作品を制作している方などに向く大容量タイプの商品が販売されています。用途に合わせて使い切れる容量を選びましょう。
墨汁の色や濃さなどは使ってみなければわからないため、はじめて購入するなら少量タイプを選んで試してみるのもおすすめです。
書道師範・筆耕士がアドバイス
書道の上達にあわせて墨汁を変えましょう
【エキスパートのコメント】
墨汁には初級練習用から高級作品用まで種類がたくさんあります。また、墨汁の色は黒といっても青みががった黒や茶色ががったもの、漆黒など微妙な違いがあります。成分にも違いがあるので、書道教室で習うならば教室の先生が薦めるものを使ってください。
一般的に書道を楽しむ方や専門的に使う方、水墨画用などそれぞれの墨汁があるので、ご自分にあったものを選びましょう。