2020年の4月に海外で発表されていたKingstonのハイエンドNVMe SSD「KC2500 NVMe PCIe SSD」が国内でも発売となった。公称リード最大3,500MB/秒、ライト最大2,900MB/秒とPCI Express 3.0 x4に対応のNVMe SSDとしてはトップクラスのスペックを備える。XTS-AES 256bitのハードウェアベースの暗号化方式に対応。Windows 10のBitLockerなどを使用して、高いセキュリティ環境を作れるのも魅力と言える。
KC2500は250GBから2TBまで容量別に4モデルをラインナップ。リードはすべて最大3,500/秒、ライトは2TB/1TBが最大2,900MB/秒、500GBが最大2,500MB/秒、250GBが最大1,200MB/秒となっている。そのほか主なスペックは下記の表にまとめている。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
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希望小売価格 | 7,460円 | 10,560円 | 21,030円 | 46,790円 |
フォームファクタ | M.2 2280 | |||
インタフェース | PCI Express 3.0 x4 | |||
NANDフラッシュメモリ | 96層 3D TLC NAND | |||
コントローラ | Silicon Motion SM2262EN | |||
シーケンシャルリード | 3,500MB/秒 | |||
シーケンシャルライト | 1,200MB/秒 | 2,500MB/秒 | 2,900MB/秒 | |
総書き込み容量(TBW) | 150TB | 300TB | 600TB | 1,200TB |
保証期間 | 5年 |
コントローラはSilicon Motionの「SM2262EN」を採用。これは8チャンネル接続に対応したハイエンドモデルだ。3D TLC NANDはKingston製で「FB12808UCT1-7F」と刻印されていた。キャッシュ用のDRAMもKingston製で「C90808839-06」と刻印があった。TBWは1TBで600TBと耐久性も十分高い。
価格に見合った高い実行性能と安定性
ここからは、KC2500の1TB版を使って性能テストを行う。まずは、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大性能をチェックしてみたい。テスト環境は以下の通りだ。
■テスト環境 | |
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CPU | Intel Core i9-10900K(10コア20スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
グラフィックス | CPU内蔵グラフィック(Intel UHD Graphics 630) |
システムSSD | Corsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600(M.2/PCI Express 4.0 x4、2TB、※PCI Express 3.0 x4で動作) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
シーケンシャルリードは3,479.68MB/秒、シーケンシャルライトは2,894.48MB/秒とほぼ公称通りの性能を発揮した。データサイズは1GiBと16GiBの両方で測定したが、どちらも速度はほぼ変わらないことから、大容量のファイルを扱っても安定して高速データ転送が保てると言えそうだ。
次は、実際のアプリケーションを使用するPCMark 10のStorageテストを実行する。スコアは「2,396」と好成績だ。同じ環境で測定した同じくハイエンドNVMe SSDのCrucial P5(1TB版)のスコアが「1,972」(これでも十分高いスコア)なので、比べると優秀さが分かる。単純な最大速度だけではなく、アプリの起動や処理など実作業でも高い性能を持っていると言っていいだろう。
HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、その3D TLC NANDの一部をSLCとして扱うことで速度を高める「SLCキャッシュ」の容量と、そのキャッシュが切れた時の速度もチェックする。
下の画面が200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを実行した結果だ。青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。SLCキャッシュは書き込み時に利用されるのでオレンジ色のラインに注目してほしい。連続書き込み150GB付近で一気に速度が落ちたので、そこでSLCキャッシュが切れたのが分かる。そして、SLCキャッシュが切れた後は、約1,200MB/秒のデータ転送速度を維持とそれなりに高速だ。150GB以上のデータを一気に書き込む機会は少ないと思うが、もし大容量のデータをバックアップすることがあっても、約1,200MB/秒の速度は出るので、それほど不満を感じることはないだろう。
最後に温度をチェックしたい。TxBENCHでシーケンシャルライト(データサイズ32GB)を5分間連続して実行した時の温度とデータ転送速度の推移をHWiNFO64で測定している。パターンは2種類。KC2500の標準状態、つまりヒートシンクを搭載していない環境と今回のテストで使用しているマザーボード、MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFIのM.2スロットに搭載されてるヒートシンクを装着した状態で測定を実施した。なお、ケースに組み込んでいないバラック状態でテストを行っている。
ヒートシンクのない標準状態では、テスト開始から100秒あたりで55℃を超え、240秒前後で58℃まで上昇。それでもハイエンドNVMe SSDとしては非常に低い温度で、速度を落として温度上昇を抑えるサーマルスロットリングも発生せず、安定して2,800MB/秒の速度を維持。エアフローがしっかりとしているPCケースなら、ヒートシンクがなくても問題なく運用できそうだ。
また、マザーボードのヒートシンクを装着した状態なら最大54℃とまったく心配のいらない温度になる。ハイエンドNVMe SSDはその速度ゆえにコントローラが高熱になりやすいが、KC2500はそれほど温度が上昇しない。小型のPCケースでも使いやすいと言える。
KC2500は、最大速度、実アプリでの使用感、コントローラの温度ともPCI Express 3.0 x4対応のNVMe SSDとして極めて優秀だ。1TB版で21,030円という価格も競争力は十分。安心してオススメできる製品だ。