働く世代に多い体の悩みとして挙げられる「腰痛」。長時間のデスクワークや立ち仕事によって腰痛になってしまった方も多いのではないでしょうか。実際、厚生労働省による「国民生活基礎調査」(2019年)では「病気やけが等で自覚症状のある」と答えた人のうち、男性では「腰痛」を訴える人が多く、女性では「肩こり」の次に「腰痛」を挙げる人が多いという結果でした。

本記事では、腰痛とストレスの関係、そして腰痛を改善するストレッチをご紹介します。

  • 腰痛とストレスの関係とは

    腰痛とストレスの関係とは

ストレスが原因で腰痛になるのか

腰痛にはいくつか種類があります。腰痛を感じたらまず疑うべきなのが、体のどこかの部位に肉体的・物理的に原因がある「器質的腰痛」です。例えば、背骨と背骨の間にある椎間板が突出して神経を刺激することで痛みが起こる「腰椎椎間板ヘルニア」は器質的腰痛の代表例です。そして、こうした体の異常がないのに腰痛が3カ月以上続くケースの腰痛は「慢性腰痛」と呼ばれます。

腰痛の原因としてはヘルニアが広く知られていますが、近年、腰痛の原因として注目されているのがストレスです。治療によって痛みが引かない場合、ストレスや不安感、うつなどの心理的な要因が腰痛を起こしている可能性があると考えられます。

主な腰痛の原因

では、ストレスと腰痛はどのように関係するのでしょうか? 腰痛の要因は大きく3つあります。

1つは、悪い姿勢や重いものを持ち上げる動作などによって腰に物理的な力がかかり不具合をもたらす場合です。2つ目は、さきほどご説明した腰椎椎間板ヘルニアなどの疾患によるものです。そして3つ目として、仕事や人間関係の悩み、痛みへの不安や恐怖といった心理的なストレスにより脳機能が不具合を起こし、腰痛を引き起こすことがわかっています。

腰痛による痛みが長引くと「もう治らないのではないか」「もっと悪化するのではないか」など悲観的に考え、腰痛に対する不安感や恐怖感から必要以上に腰を大事にする行動をとってしまうことがあります。こうした考えや行動は腰痛の回復を妨げる可能性があるので、腰痛があっても心配しすぎずになるべくいつも通りに生活することが重要です。ただし、心身の疲労が大きい場合には、まずは適度に休養をとるようにしましょう。

危険な腰痛の見分け方

内臓の病気や骨折などが原因の腰痛の場合、マッサージやストレッチをしたり、湿布薬を貼ったりしても腰の痛みは引きません。また、神経に障害がある場合も痛みが長期化します。これをレッドフラッグ(緊急性要因)といってすぐに病院に行ったほうがよい腰痛の分類になります。

レッドフラッグ以外の多くの腰痛はグリーンライト(非特異的要因)で時間と共に変化していく腰痛ですが、上記にあるようにイエローフラッグ(心理社会的要因)が関わることで、腰痛が改善しにくくなることがあります。

ある程度の期間、腰痛対策をしても痛みが和らがない場合は、腰以外の部位に原因があることも考慮し、早めに病院・クリニックで診察を受けましょう。 「よくならないのではないか? 」という不安も消すことも大事です。

腰痛を改善するストレッチ

ストレスによる腰痛を慢性的に抱えていると、以前なら平気だったストレスにも腰痛という形で反応してしまうようになるケースがあります。腰痛が重症化すると「集中できない」「休みがちになる」など、仕事にも悪影響が出てきます。ストレスを感じたら早めに解消するようにするなどして、ストレスをためないようにしながら、ストレスのもとにもなる腰痛を改善するようにしましょう。

腰痛には無理しない程度の運動が効果的です。運動不足によって腹筋や背筋が衰えると、腰を正しい姿勢で支えられなくなり、腰痛を悪化させる要因になります。ウォーキングなどの軽い運動を習慣化するのがおすすめです。 また、ストレッチをして筋肉や関節の柔軟性を高めるのも腰痛改善や予防におすすめです。

デスクワークや立ち仕事で同じ姿勢を長時間とる人は、筋肉が緊張した状態になります。緊張して固まった筋肉をストレッチで緩めることはストレス解消にもつながるといわれています。

そこで、腰痛改善におすすめのストレッチ方法をご紹介します。

腰をねじるポーズ

  1. 両手両足を伸ばせるスペースであお向けになる
  2. 右脚を膝から90度に曲げ、左側にひねる
  3. 左手で右膝を押さえる
  4. 右手を右側によく伸ばす
  5. そのままのポーズで20秒ほどキープする
  6. 反対側も行う

腰を伸ばすポーズ

  1. あお向けになる
  2. 両膝を立てる
  3. 右膝を胸のほうに引き寄せて膝を両手でかかえる
  4. 息を吐きながら、膝を胸のほうに引き寄せる
  5. 息を吸うときは、お腹を少し持ち上げるようにする
  6. 20秒ほど呼吸を続ける
  7. 反対の脚でも同様に行う

脊椎全体を動かすようなポーズ

  1. 四つん這いになり、つま先を立てる
  2. 手を肩幅、膝とつま先を腰幅程度に広げる
  3. 息を吐きながらお腹をのぞき込むように背中を丸め(肩甲骨の間を広げるイメージ)、尾骨を下げる
  4. 息を吸いながら背中を反らせる(肩甲骨の間に背骨を落とすイメージ)。天井を見上げて首を伸ばし、尾骨も天井のほうに上げるようにする
  5. 呼吸をしながら3~4の動きを5回ほど繰り返す。頭から骨盤までの脊椎全体が一体になってスムーズに動くイメージで動かす

ストレッチをするときは、次の3つのポイントを意識しましょう。

  • 伸ばす部位を意識しながら、20秒以上かけて伸ばす
  • 無理に伸ばさず、痛くなくて気持ちよく感じる程度に伸ばす
  • ゆっくり深い呼吸を続ける

ストレッチは運動強度が低く、動きも少ないので安全な運動だと言われています。正しい方法で実施することで効果が実感できます。しかし、無理をしたり誤った方法で行ったりすると、体を痛める可能性があるので気をつけましょう。 腰痛がある方は、まずはかかりつけ医・整形外科医の受診をし、ストレッチや運動は医師の許可を得てから行うようにしてください。

まとめ

ストレスと腰痛の関係についてご説明しました。腰痛の原因はさまざまですが、心理的なストレスが慢性的な腰痛につながることがあるため、過度なストレスには注意が必要です。

ストレッチは腰痛改善にもストレス解消にもよいとされています。柔軟性を高めることで腰痛予防にもなるので、腰痛が気にならないときも習慣的に続けてみてくださいね。

参考 :
(※1) 厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況 Ⅲ 世帯員の健康状況