普段の会話などではあまり使うことはありませんが、ビジネス文書やお礼の手紙など、かしこまった文書を出す場合においては季節の挨拶(時候の挨拶)が重要です。

季節感あふれる言葉を使いこなしたいところですが、同じ11月の中でも、時期や挨拶を送る相手によって、季節の挨拶として使用する文言は異なります。

本記事では11月にふさわしい季節の挨拶をピックアップ。文書の冒頭で使える季節の挨拶や例文、結びで使える挨拶を、ビジネス/カジュアルシーンごとに紹介。11月の季語も見ていきましょう。

  • 11月の季節の挨拶

    季節の挨拶を用いて、この時期ならではの雰囲気を伝えよう

11月とは

霜月(しもつき)とも言われる11月。朝晩もめっきり寒くなり、朝露(あさつゆ)が霜(しも)に変わる季節です。

11月7日頃には「立冬(りっとう)」を迎え、暦の上では冬が始まります。そして22日頃には「小雪(しょうせつ)」を迎え、山の方では初雪の便りが届きはじめます。

3日には文化の日、15日前後には七五三などの行事もあるため、お祝いや挨拶状などを書く機会もあるかもしれませんね。

季節の挨拶文(時候の挨拶文)の基本の書き方・構成

「季節の挨拶」とは「時候の挨拶」ともいい、四季折々の季節感を重んじる日本において、手紙やはがき、書面などの冒頭に用いる挨拶文のことを指すとされます。また、結びの文にも季節感を取り入れるといいでしょう。

以前と比較すると手紙を書く機会は少なくなりましたが、改まったメールでも用いることがあります。

[ビジネス]季節の挨拶文の基本の書き方

手紙やメールにもさまざまな表現があります。同じ時期に書く手紙であっても、ビジネスシーンとプライベートでは季節の挨拶の表現も使い分けが必要です。

ビジネスシーンや目上の人への手紙では、一般的に「◯◯の候」などの漢語調の挨拶が使われます。少し硬い表現にあたりますが丁寧な印象となるため、気を遣わなければならない相手やかしこまった内容の手紙やメールで使うようにしましょう。

なお主にビジネスシーンでは、「拝啓」など文章の最初の書き出しである「頭語」の後に季節の挨拶を書きます。そして頭語を使う場合、文末には「敬具」などの「結語」で文章を結ぶのが原則です。

  1. 頭語(「拝啓」など)
  2. 時候・季節の挨拶
  3. 主文
  4. 結びの言葉
  5. 結語(「敬具」など)

[カジュアル]季節の挨拶文の基本の書き方

親しい友人などへの手紙で漢語調の表現を使うと、堅苦しい印象を与えてしまいます。カジュアルなシーンでは口語調が使われるのが一般的です。

口語調の表現はとてもわかりやすく、親しみを感じさせてくれるので、家族や親しい友人などへの手紙にぴったりです。

また、頭語や結語も同様に堅苦しいため省略して、季節の挨拶から書き出すこともできます。

  1. 時候(季節)の挨拶
  2. 主文
  3. 結びの言葉

ビジネス用、カジュアル用の季節の挨拶の例は、後ほどそれぞれ紹介します。

11月の季語一覧(酉の市、紅葉など)

季節・時候の挨拶を送る際、本文にその月を表す季語を入れるといいでしょう。

11月に行われる行事や季節の風物詩、季節の動植物、「酉の市」や「十日夜」「新米」「亥の子餅」などが季語に含まれます。季語を使うと、11月の雰囲気が感じられますね。

「紅葉」は地域によって見頃の時期が異なるため、10月に使用する地域もあれば、11月に使用する地域もあります。また紅葉したままの葉が散っていく状態を表す「紅葉かつ散る」も季語として有名です。

植物 椿・山茶花・紅葉・紅葉かつ散る・石蕗(つわぶき)
生き物 鮭・河豚・鷹・隼
風物詩 時雨・新嘗祭・七五三・酉の市
  • ビジネスでも使える! 11月の季節の挨拶

    11月を連想させる言葉はたくさんあります

[ビジネス]11月の季節の挨拶(書き出し) - 漢語調(改まった文書や目上の人用)

ここからは、実際にビジネスメールなどで使える例文を交えながら、11月にふさわしい季節の挨拶をご紹介します。

前述のように、ビジネスメールやかしこまった文書では、漢語調を使うことが多いです。

漢語調の季節の挨拶は、上旬・中旬・下旬など、月のいつの時期かによっても使う言葉が異なります。11月のそれぞれの時期別に、季節の挨拶をご紹介しましょう。

11月全般(上旬・中旬・下旬) - 1日~月末まで使える言葉

霜月の候(しもつきのこう)を用いた例文

11月の上旬から11月下旬まで、ほぼ全般わたって使えるのが「霜月の候」です。

その名の通り霜が降る季節を指した言葉で、11月を意味しています。朝夕の冷えが強くなっていく11月の様子がイメージしやすい言葉です。

【例文】
拝啓 霜月の候、貴社益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

11月上旬

晩秋の候(ばんしゅうのこう)を用いた例文

11月上旬に使用する時候の挨拶としては、「晩秋の候(ばんしゅうのこう)」が使えます。晩秋は立冬の前日(11月6日頃)まで使うことができます。

【例文】
拝啓 末枯野美しき晩秋の候、貴社におかれましては益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます

暮秋の候(ぼしゅうのこう)を用いた例文

「暮秋(ぼしゅう)」とは「秋の暮れ、秋の終わり頃」を意味の言葉です。また旧暦の9月をあらわす場合もあります。晩秋と同じく、立冬の前日(11月6日頃)まで使うことができます。

【例文】
拝啓 暮秋の候、貴社には益々ご発展の段、大慶に存じ上げます

11月中旬

立冬の候(りっとうのこう)を用いた例文

毎年11月7日頃に訪れる二十四節季の立冬(りっとう)。この立冬はそのまま時候の挨拶として使用できます。

【例文】
拝啓 立冬の候、貴社におかれましては、益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

落葉の候(らくようのこう)を用いた例文

「落葉(らくよう)」とは落ち葉が舞い散る木々の様子をあらわす言葉です。秋の終わり、冬の始まりの時期に使用するのにふさわしい挨拶と言えるでしょう。

【例文】
拝啓 落葉の候、貴社におかれましてはいよいよご隆盛の趣、慶賀の至りに存じます

11月下旬

向寒の候(こうかんのこう)を用いた例文

小雪の頃(11月22日頃~12月6日頃)の時候の挨拶には、「向寒の候(こうかんのこう)」が使えます。日増しに寒くなる様子をあらわす言葉です。

【例文】
拝啓 向寒の候、貴社におかれましては、益々健勝にお過ごしのことと存じます

霜寒の候(そうかんのこう)を用いた例文

「霜寒の候(そうかんのこう)」とは文字通り、霜が降りて寒くなる頃に使える挨拶です。「向寒の候」と同様に11月下旬~12月上旬(11月22日頃~12月6日頃)に使うのにふさわしい挨拶と言えるでしょう。

【例文】
霜寒の候、平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます

[ビジネス]11月にふさわしい結びの言葉

漢語調の場合、結びの文に季節的な要素を入れなくても問題はありませんが、11月にあった結び文を入れることで、より季節感のある文書となります。

11月にふさわしい結びの例をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・日一日と寒さが深まってまいります。ますますのご活躍をお祈りいたします
・小春日和が続くこの頃、貴社のさらなるご繁栄をお祈り申し上げます

健康に関する結び

・朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりました。どうかご自愛専一になさってください
・向寒の折、皆様のご健康をお祈りしております

  • ビジネスでも使える! 11月の季節の挨拶

    自分なりの発想で11月を表現することも大切です

[カジュアル]11月の季節の挨拶 - 口語調(やわらかい表現、学校のおたよりや親しい人用)

次に、前述の通り親しい人などカジュアルなシーンに用いる口語調の季節の挨拶について、時期ごとに見ていきましょう。

漢語調に比べて自由度が高いので、送る相手や状況に合わせて内容をアレンジしてもいいでしょう。

11月全般(上旬・中旬・下旬) - 1日~月末まで使える言葉

・暦の上では立冬を迎えましたが、小春日和のお天気が続いております。皆さま、お変わりありませんでしょうか
・日々、寒さが深まってきています。○○様はお風邪など召されていませんでしょうか

現代において、11月は寒さが募りはじめる、冬の始まりとも言える時期です。気温の変化も激しく体調を崩しやすい時期でもあることから、相手の体調を気遣うような言葉を盛り込むのがおすすめです。

11月上旬~中旬

・菊花のみぎり、皆さまお変わりなくお過ごしかと存じます
・今年も残すところあと2カ月となりましたね。ますますお元気でご活躍のことと存じます
・冬とは名ばかりの暖かい日が続いております。風邪などお召しになっていらっしゃいませんでしょうか

11月下旬~大雪(12月7日頃)まで

・山々に雪化粧が見られるようになり、冬の訪れを感じる季節となりました。お変わりありませんでしょうか
・いよいよ師走も近づき、あわただしい季節となりました。皆様にはつつがなくお過ごしのことと存じます

  • 11月の季節の挨拶と例文

    ビジネスとプライベートで季節の挨拶をうまく使いわけましょう

[カジュアル]11月にふさわしい結びの言葉

口語調の文書にあう、11月にふさわしい結びの言葉をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・年末に向かい何かとご多忙のことと存じます。またお会いできるのを楽しみにしております
・今年も残り少なくなってまいりました。悔いのない一年になるよう、お互い頑張りましょう

健康に関する結び

・年末に近づき、仕事も一段と忙しくなる時期かと思いますが、無理をしすぎることなくお体を大切にお過ごしください
・朝晩はめっきり寒くなり、暦の上ではもう冬です。どうぞお体に気をつけてお過ごしください

[番外編]11月に送る、コロナ禍における手紙・メールの文例

ようやく落ち着きを見せてきた、2020年頃より世界中で蔓延した新型コロナウイルス感染症。

2023年5月には感染症法上の位置づけの「5類」に移行したこともあり、コロナ禍についてわざわざ言及する必要はないでしょう。

しかし相手の体を気遣う言葉として、文頭や結びの言葉で軽く触れる程度ならばいいかもしれません。

【例文】
拝啓 霜月の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。
さて…(主文)
朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりました。風邪やコロナなどを召されませんように、皆さまのご健康と、益々のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。 敬具

11月らしい季節の言葉を入れたはがきやお礼状などを送りましょう

いよいよ本格的な冬の始まりとなる11月という季節。寒さが深まるこの時期には、相手の体調や状況を気遣う言葉を入れるといいいでしょう。

また、11月独特のものがなしさを伝える表現や、冬の訪れを楽しむ表現などを加えると、さらに深く気持ちが伝わります。相手への敬意を表しつつ、自分らしさが伝わる手紙を出してみましょう。