俳優の長谷川博己が主演を務めるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)で、演歌歌手の石川さゆりが主人公・明智光秀(長谷川)の母・牧を好演している。大河出演は、1シーン出演を果たした2006年の『功名が辻』以来、2回目。このたび、現場のエピソードや役作りについて語った。
石川は「私はいつもミュージシャンの方とアンサンブルをしながら音楽を作っていますが、大河ドラマは、それぞれの役者さんがそれぞれの個性を持った楽器でアンサンブルをしますので、とても面白かったです。『こんな感じかな』と思いながら台本を読んで、スタジオに入らせていただいても、役者さんとアンサンブルをとったときに、突然違う音程や間合いが出てきたりします」と音楽と重ねながら撮影を振り返る。
そして、「私には楽しいことばかりです! もちろん初めての空気感の中でお仕事するのはいろいろな緊張感もありますし、戸惑いもありますが、とにかくスタッフのみなさんの情熱がありますし、優しいです。ドラマもエンターテインメントですが、音楽のエンターテインメントとは違う、『人間エンターテインメント』みたいな感じで、それが心地よく楽しかったです」と充実した様子。
「どうしても私は声も音楽に聞こえてしまうのですが、お芝居の中でも、言葉を交わすセリフの中にちゃんと音があるんだと気がつきました。いろんな声があり、そこには感情の中の間合いやテンションの音があることをたくさん感じさせていただいたので、今度はこれを音楽の世界に、自分のところに戻るときにちゃんと持って帰りたいなと思います」と歌手ならではの気づきがあったようだ。
本作でいろんな家族が描かれているが、石川は「その中で唯一、この明智家というのは穏やかで、安らぎのある一家なんですよね」と明智家に言及。「いつ親が子を殺すか子が親を狙うか兄弟を狙うかというような本当に恐ろしい家族がたくさん描かれる中で、明智家ではそこに仕える人たちももちろん親子関係もすべてが『こんなところがあったんだな』とホッとするところですから、何かそういうものを皆さんにお届けできたらいいなと思います」と意気込む。
自身が演じている牧については、「息子を育てるという感覚とは違い、ちゃんと家を譲っていく、その家をしっかりと継いでいく、その長となる者を育てていきます」と説明。「十兵衛(光秀)はいつどこで命を取られるかという日々を過ごして大人になっていきますが、十兵衛が帰ってきたときに『おかえり!』と声をかけるセリフにも、『けがはしてないか、ちゃんと無事か』と、その一言に気持ちを込めながら演じています」と語った。
途中から地毛で牧を演じるようになったことも告白。「カツラをつけて演じるよりももっとナチュラルに光秀・十兵衛の母になっていけるのかなと思いました。カツラでお芝居をしてきましたが、髪の毛がだんだん長くなってきて、『あ、これ地毛でもいけるかも』と床山さんとお話して、『もう少し頑張っていただけたら』って言われたので、やってみました」と説明し、「髪の毛が伸びていく中で役が自分に染みていき、そしてまた自分の身体の中でも牧という役が腑に落ちていくというものを体感しました」と明かした。
そして、「きっと絶対に麒麟は来ますので、どうぞ楽しみにしていてください。でもいきなりは来ないんですよね。いろんな日があった先に、麒麟がくると思いますので、来るまでの過程、みなさんが作る人間模様、世の動き、そういうものを楽しんで、感じていただきながら、最後まで見届けていただきたいです。私も十兵衛の成長を、母としてちゃんと見守っていきたいと思います」と視聴者にメッセージを送った。
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