日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’20』(25:25~)では、『パパって呼んで…~女の子の難病 レット症候群に薬を~』(読売テレビ制作)を、きょう27日に放送する。
大阪府枚方市に住む谷岡哲次さん(43)は、工務店に勤務する営業職。妻の陽子さん(42)、長男の3人に、新たな家族が増えたのは12年前のことだ。目の大きな笑顔のかわいい女の子に、「紗帆(さほ)」と名付けた。しかし、異変に気付いたのは生後半年の頃。どこの病院をたずねても原因はわからず、2歳半の時にようやく、神経性の難治性疾患「レット症候群」だと診断された。
「レット症候群」とは女の子に発症し、言語・運動能力に遅れがみられる進行性の難病。できていたことができなくなる「退行」や手の動きが特徴で、生後6カ月から1歳半の間に発症する。1万人から1万5千人に1人の発症率で、日本では推定1,000人(20歳未満)とされている。
紗帆さんは現在12歳だが、立つことも、言葉を話すこともできない。「この病気になった娘を不幸な1人ととるのか、社会を変えるために生まれてきた1人だと考えるのか」…谷岡さんは、後者を選択した。
2011年にNPO「レット症候群支援機構」を立ち上げ、現在会員は約70人。思いに賛同する患者・家族や研究者は増え続けているが、肝心の治療薬の開発はなかなか進まなかった。
そんな中19年10月、新たな光が見え始める。谷岡さんの熱意に打たれた自治医科大学の2人の医師が、レット症候群の遺伝子治療実現に向けて、本格的な研究開発に乗り出すことにしたのだ。資金や安全性、厚生労働省の認可など課題は山積みだが、5年後の2025年をプロジェクトのゴールとし、今年4月からミッションがスタートした。
谷岡さんたちのように、患者団体が、寄付を集め、資金面で研究者を後押しするという活動には前例がない。父親としての願いはただひとつ。「いつの日か、紗帆から“パパ”って呼んでほしい…」
小児の進行性の難治性疾患を取り巻く医療行政や研究開発には、幾多の壁が立ちはだかる。ゴールは見えないが、娘の笑顔を信じて、あきらめない父と、懸命に生きる少女…親子の絆を伝えていく。