4月はビジネスでもプライベートでも、一年でもっとも変化の多い月の一つ。そのため手紙やメールなどを送る機会も多いのではないでしょうか。
手紙やメールを送る場合、四季の変化が豊かな日本では季節の挨拶・時候の挨拶と呼ばれる文面の最初に書く文章があります。季節の挨拶は時節ごとの語句を使うことで季節感を出し、送る相手の健康を気遣うなど、ビジネスレターやメール、プライベートでも目上の方へ送る場合などに欠かせません。
4月の上旬/中旬/下旬にそれぞれ適した季節の挨拶・結びの文について、ビジネスシーン・カジュアルシーンごとに詳しく見ていきましょう。
季節の挨拶文(時候の挨拶文)の基本の書き方・構成
時候の挨拶文(季節の挨拶)は、通常「頭語」の後に書きます。「頭語」とは、「拝啓」など文章の最初の書き出しのことで、頭語を使う場合必ず文末には「敬具」などの「結語」で文章を結びます。
ただし「拝啓」「敬具」と書くことで、文書が堅苦しく感じられることもあるので、親しい間柄の人へ向けた手紙やメールでは、頭語・結語を省略して季節の挨拶から書き出すケースもあります。
基本的には、ビジネス用の時候の挨拶文の書き方を覚えておけばいいでしょう。
文章の流れ・構成は下記となります。
- 「拝啓」
- 「時候・季節の挨拶」 ※例:陽春の候
- 「主文」
- 「結びの言葉」
- 「敬具」
カジュアル、あるいはやわらかい表現にするのであれば「拝啓」から書き始めると文章が硬くなりすぎてしまう傾向にあるので、下記のようにするといいでしょう。
- 「時候・季節の挨拶」 ※例:色とりどりの花が咲き競う…
- 「主文」
- 「結びの言葉」
4月の季語
季節・時候の挨拶を送る際、本文にその月を表す季語を入れましょう。
季語というと堅苦しいイメージですが、4月の恒例行事である「花見」「遠足」なども季語に含まれますよ。季語を使うと、ぐっと季節の挨拶の要素が色濃くなりますよ。下記に一例を記します。
植物 | 桜・チューリップ・アネモネ |
---|---|
生き物 | 蝶・虻・蚕・鰊 |
風物詩 | 花見・遠足・種蒔・茶摘 |
[ビジネス]4月の季節の挨拶(書き出し) - 漢語調(かしこまった文書や目上の人用)
ここからは、実際に使える例文を交えながら、ビジネス用の季節の挨拶や結びの文を紹介します。ビジネスメールやかしこまった文書では、漢語調を使うことが多いです。
上旬・中旬・下旬など、月のいつの時期かによっても使う言葉が異なります。4月のそれぞれの時期別に、使える季節の挨拶をご紹介しましょう。
4月全般、上旬・中旬・下旬(1日~月末)
陽春の候(ようしゅんのこう)を用いた例文
陽春の候とは「陽気に満ちた暖かい春の時候」を意味し、4月全般に使うことができます。
【例文】
陽春の候、貴杜ますますご隆盛のこととお喜び申しあげます
桜花の候(おうかのこう)を用いた例文
桜花の候とは「桜の花が咲いている時候」を意味し、実際に桜が咲き始めてから散り始めるまで使うことができます。日本列島は南北に長いので南の方では桜が咲き始める3月から、また北の方では4月下旬でも使えるなど、実際の桜の開花状況に応じて使いましょう。
【例文】
桜花の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます
春爛漫の候(はるらんまんのこう)を用いた例文
春爛漫の候とは「春の花が咲いて光に満ちている時候」を意味し、こちらも実際に多くの花が開花する時期に、手紙やメールを送る相手の地域に合わせたタイミングで使うといいでしょう。
【例文】
春爛漫の候、◯◯ 様におかれましては一段とご壮健のことと拝察いたしております
4月上旬(1日~10日)
春暖の候(しゅんだんのこう)を用いた例文
春暖の候とは「春の暖かさを感じる時候」を意味し、4月の上旬ごろに使われることが多いです。
【例文】
粛啓 春暖の候、貴社にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます
春陽の候(しゅんようのこう)を用いた例文
春陽の候とは「春の日差しを感じる時候」を表現したい際に用います。
【例文】
拝啓 春陽の候、貴殿におかれましてはいよいよご清祥の段、お喜び申し上げます
4月中旬(11日~20日)
麗春の候(れいしゅんのこう)を用いた例文
麗春の候とは「日が柔らかくのどかに照る春の季節」といった意味合いを持つ時候の挨拶です。
【例文】
謹呈 麗春の候、貴社ますますご清栄のことと慶賀の至りに存じます
春風駘蕩の候(しゅんぷうたいとうのこう)を用いた例文
春風駘蕩の候は「春の暖かい風が穏やかに吹く時候」を表現したい際に用います。駘蕩という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、「さえぎるものなどがなく、のびのびとしているさま」「 春の情景などが平穏でのんびりとしているさま」という意味があります。
【例文】
拝啓 春風駘蕩の候、貴殿におかれましては、益々ご健勝のことと存じ上げます
4月下旬(21日~月末)
惜春の候(せきしゅんのこう)を用いた例文
惜春の候とは「過ぎゆく春を惜しむ時候」を意味し、一般的に春が終わるとされる4月中旬から4月末くらいの間に使います。
【例文】
拝啓 惜春の候、◯◯ 様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます
[ビジネス]4月にふさわしい結びの言葉
漢語調の場合、結びの文に季節的な要素を入れなくても問題はありませんが、4月に合った結び文を入れることで、より季節感のある、趣のある文書に仕上げることができます。
4月にふさわしい結びの例をご紹介しましょう。
春に関する結び
- 陽春のみぎり、さらなるご活躍をお祈り申し上げます。
- 春陽麗和の好季節、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
新生活に関する結び
- 新天地でのさらなるご活躍を、心より祈念しております。
- 新年度を迎え、諸事ご多用のことと存じますが、ご返事賜りたくお待ち申し上げております。
健康に関する結び
- 花冷えの折、くれぐれもご自愛くださいませ。
- 天候不順の時節柄、ご自愛くださいますようお願い申し上げます。
[カジュアル]4月の季節の挨拶(書き出し) - 口語調(やわらかい表現、学校のおたよりや親しい人用)
それでは次に、カジュアルシーンの季節の挨拶や結びの文を見ていきましょう。カジュアルシーンでは、やわらかい印象の口語調を使うことが多いです。
4月全般
- 春爛漫の好季節、お健やかにお過ごしのこととお察しいたします。
- 桜花満開の、うるわしい春の日がやってまいりました。
- 色とりどりの花が咲き競う、美しい季節を迎えました。
実際の桜や花の開花状況に合わせて使いましょう。
4月上旬~中旬
- 春の嵐に翻弄される今日この頃、つつがなくお過ごしのことと思います。
- 春宵一刻価千金の頃となり、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- どんよりとした花曇りの日が続いておりますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
4月中旬~下旬
- 若草の緑が眩しい季節となりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
- 葉桜のみぎり、お健やかにお過ごしでしょうか。
- 夜のおぼろ月に、春の風情を感じる季節となりました。
4月下旬~5/5(ゴールデンウィークごろ)
- 花の盛りもいつしか過ぎて、葉桜の季節を迎えました。
- 雨に濡れた新緑がますますあざやかな今日この頃、お健やかにお過ごしでしょうか。
- 春風にさそわれて、つい外出をしたくなる今日この頃です。
[カジュアル]4月にふさわしい結びの言葉
口語調の文書に合う、4月にふさわしい結びの言葉をご紹介しましょう。
春に関する結び
- うららかな季節、どうぞ心穏やかにお過ごしください。
- 過ぎゆく春を惜しみつつ、ますますのご活躍を祈念しております。
新生活に関する結び
- 心機一転、新しい環境でのますますのご活躍を願っております。
- 新天地での生活が、実り多いものとなりますように。
健康に関する結び
- 春雨が続きますが、どうぞご自愛くださいませ。
- 花冷えの頃ですが、健康にはくれぐれも御留意ください。
[番外編]4月に送る、コロナ禍における手紙・メールの文例
2020年初頭より世界中を騒がせている新型コロナウイルス感染症。コロナ禍についてわざわざ触れる必要はありませんが、文頭や結びの言葉で軽く触れるのもいいでしょう。
例文:
陽春の候、貴社におかれましてはコロナ禍においてもますますご活躍のことと、お慶び申し上げます。
さて、~~。(主文)
何かと不便の多い日が続きますが、皆さまのご健康と、益々のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。
春らしい表現を使ったお便りやはがき、お礼状などを送りましょう
日本では4月から新年度とする企業や学校も多く、さまざまなターニングポイントとなる時節。また日も一日ごとに長くなり、咲き誇る花や桜の姿、そしてすぐそこまで見えている大型連休など、多くの人が心躍る時期でもあります。
4月の季節の挨拶や結びの文を上手に取り入れた手紙やメールを送ることで、受け取った相手も春の息吹やよろこびを感じるような、粋な文章に仕上げましょう。