シリーズ成績は永瀬王座の2勝1敗に。初防衛に王手をかける

永瀬拓矢王座に久保利明九段が挑戦中の将棋のタイトル戦、第68期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)の第3局が9月24日に宮城県「仙台ロイヤルパークホテル」で行われました。結果は117手で永瀬王座の勝利。シリーズ2勝目をあげて、自身初防衛まであと1勝としています。

本シリーズの注目ポイントの1つとして挙げられるのは、久保九段がどこに飛車を振るのかという点です。タイトル保持者の永瀬王座、渡辺明名人、豊島将之竜王、藤井聡太二冠は全員居飛車党ということから分かる通り、タイトル戦に登場する棋士は居飛車党であることが多く、タイトル戦で対抗形が見られるのは久しぶりのことです。

本局、久保九段は三間飛車を採用するも、すぐに四間飛車に振り直し、振り飛車ミレニアムに囲いました。振り飛車ミレニアムは第1局でも採用した陣形です。第1局では右銀を5四に配置していましたが、本局は5三銀型。銀を△4二銀~△5三銀とスムーズに活用するために、三間飛車に振ったのでしょう。

永瀬王座は相手の仕掛けを封じつつ、玉をどんどん固めていきます。最終的には金銀4枚の松尾流穴熊の堅陣を築き上げました。あとは仕掛けるだけです。永瀬王座は角交換を挑んで、激しい戦いとなりました。

穴熊を崩しながら攻めていく永瀬王座。終盤戦を迎えたときには、永瀬玉を守る駒は銀2枚と香だけになってしまいました。松尾流穴熊の強固な囲いは見る影もありませんが、穴熊の武器は堅さだけではありません。玉が盤上の隅っこにいるという遠さも強みです。本局ではこの遠さが存分に生きました。

永瀬王座は大駒を次々と切り飛ばし、久保玉の守りを薄くしていきます。飛車・角2枚・香という豊富な持ち駒を手にした久保九段も飛車を敵陣に打って反撃に出ましたが、永瀬玉は遠く、攻めがあと一歩届きません。最後は攻防に角2枚を打つ粘りを見せたものの、永瀬王座に即詰みに打ち取られてしまいました。

本局を制した永瀬王座は、シリーズ成績を2勝1敗とし、防衛に王手をかけました。先日、3勝4敗2持将棋という激闘の末、叡王のタイトルは豊島竜王に奪取されてしまいましたが、王座戦では防衛なるでしょうか。注目の第4局は10月6日に兵庫県「ホテルオークラ神戸」で行われます。

防衛に向けて大きな勝利を手にした永瀬王座(提供:日本将棋連盟)
防衛に向けて大きな勝利を手にした永瀬王座(提供:日本将棋連盟)