前期はあと1勝でタイトル奪取まで迫った広瀬八段。リーグ初戦で佐藤天彦九段を矢倉の将棋で破る
渡辺明王将への挑戦権を争う、第70期王将戦挑戦者決定リーグ戦(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)の▲広瀬章人八段-△佐藤天彦九段戦が9月24日に東京・将棋会館で行われました。結果は101手で広瀬八段の勝利。2期連続挑戦へ幸先のいいスタートを切りました。
矢倉の将棋となった本局は、序盤で広瀬八段が駒組み勝ちとなりました。4四に進出してきた佐藤九段の銀を2度△5三銀と退却させることに成功し、のびのびとした陣形の構築に成功します。一方の佐藤九段は、囲いの頭上である4五に拠点を作られてしまい、作戦失敗です。
苦しい形勢の佐藤九段は、銀取りに歩を打たれた局面で飛車を切って金を取る勝負手を繰り出します。しかし、すぐに飛車を取らずに、銀を先に取ったのが広瀬八段の好判断でした。歩で銀を取った手が、さらに銀取り。飛車取りも変わらず残っており、優位の拡大に成功します。
駒得を果たした広瀬八段は、持ち駒の銀2枚を自陣に投入して盤石の形を作り上げました。大駒を抑え込まれては勝負所がなくなるとみた佐藤九段は、飛車角交換から角を敵陣に成り込みます。しかし、飛車を渡した反動は大きく、王手で飛車を打ち込まれた手が激痛となりました。
佐藤九段は飛車角を自陣に打って粘ろうとしますが、広瀬八段の寄せは正確でした。攻防ともに見込みがなくなった佐藤九段は101手目を見て投了。広瀬八段の快勝となりました。
前期はリーグ最終戦で藤井聡太七段(当時)との挑戦者決定戦を制し、渡辺王将への挑戦権を勝ち取った広瀬八段。七番勝負では3勝4敗とあと一歩のところまで渡辺王将を追い詰めましたが、タイトル奪取には届きませんでした。リーグ戦からの再スタートを最高の形で決め、2期連続の挑戦を目指します。