新型コロナウイルスの流行や記録的な猛暑など、日々の過ごし方が大きく変わった今年。連日のコロナ報道によるストレスや暑すぎた夏からの寒暖差など、例年より疲れを感じやすい方もいるのではないでしょうか。

今回は、「疲労外来」の医師として数多くのテレビ出演や書籍の出版を行っている内科医・工藤孝文先生に、夏の疲れからなかなか抜け出せないときの対処法や季節の変わり目に起こりやすい不調の解消法などについて教えていただきました。

  • 季節の変わり目に感じやすい不調の原因と対処法とは?※画像はイメージ

――今年の夏は例年よりも気温が高く、いまだに夏バテからなかなか抜け出せない方もいるようです。対処法としておすすめの食事法はありますか?

工藤先生:たしかに、最近は胃腸の症状を訴える患者さんが多くなっています。夏バテの原因は胃腸に負担がかかることで、とくに下痢の症状を訴える方が増えています。こうした場合の対処法としては、「絶食」がおすすめです。ここでの絶食というのは、お茶やお味噌汁など消化のよいものをとって、消化管を休めることですね。

反対に食べない方がいいものは、食物繊維の豊富な食べ物です。食物繊維は消化しにくいため、下痢の症状をより強くしてしまうことがあります。また、バナナやマンゴーなどの南国系の果物も控えましょう。南国系の果物は食べると体温を下げる働きがあるため、消化機能も低下してしまいます。逆に寒冷地で生産されるリンゴなどの果物は、体温を上げる働きがあるのでおすすめです。

また、体が疲れていると「甘いものなら食べられる」とチョコレートやお菓子などを食べる方もいますが、チョコレートや油っこい食べ物などの脂肪分が高い食べ物は消化に時間がかかってしまうので、こちらも控えておきましょう。

――最近朝晩は涼しくなってきましたが、朝晩と昼間の気温差が大きくなると疲れやすくなる方もいます。この気温差による疲れはなぜ起こるのでしょうか。

工藤先生:それは、交感神経と副交感神経の切り替えが多くなるからです。たとえば、暑いところから涼しいところに行くと、体温が急激に下がります。そうすると下がった体温を上げるために、体は熱を作ろうとするんです。そのとき交感神経が優位に切り替わるのですが、また暑いところに出ると逆の現象が起きて、今度は副交感神経が優位になります。

こうして切り替えの回数や程度が大きくなるほど、心身が疲れてしまいます。結果として寝つきが悪くなったり肩が凝ったり、鬱っぽくなったりする方もいます。

なるべく寒暖差が出ないよう、服装などで調整することが大切ですが、すでに体が疲れていると感じるときは、入浴はシャワーで済ませるとよいでしょう。湯船につかると水圧で体力が奪われてしまい、心臓にも負担がかかるからです。

――ほかにも、季節の変わり目に感じやすい疲れの原因はありますか?

工藤先生:夏から秋に季節が変わることで日照時間が減っていくと、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されにくくなり、心の疲れの原因になります。「秋になると寂しくなる」と言う方もいますが、この現象も日照時間が減ることに関係しています。

対処法は、日光に当たる時間を増やすことです。あまり外に出られない場合や日焼けが気になる場合は、手のひらを日光にかざすだけでも構いません。1日に20分ほど日光に当たると効果的です。リモートワークの方など、できる方はお昼寝の時間を20分ほど作り、窓際で手のひらだけでも日光に当てながら寝ると、なおよいでしょう。

日光に当たるのが難しい場合は、「間接照明ではなく直接照明を使う」「壁紙やカーテンを白くする」など、部屋を明るくするだけでもセロトニンが増えやすくなります。実際、ウインターブルー(冬季うつ)の治療法として「光療法」という光を当てる治療法があり、光療法の機械も市販されているほどです。


気温の変化が大きい季節の変わり目には、寒暖差で体に負担をかけすぎないこと、また、意識して日光に当たることが大切なのですね。後編では、新型コロナウイルスに関するストレスや疲れへの対処法について話を聞きます。

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工藤孝文

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。糖尿病・ダイエット治療・漢方治療を専門とし、NHK「ガッテン! 」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか! ?TV」へ肥満治療評論家・漢方治療評論家として出演するなど、メディア出演多数。日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本抗加齢医学会・日本東洋医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会・小児慢性疾病指定医。