9月10日に初の書き下ろしエッセー集『行った気になる世界遺産』を上梓した俳優・鈴木亮平。大の世界遺産マニアとしても知られる彼だが、本書はなんと自分が訪れたことのない世界遺産について詳細かつ情感たっぷりと、また直筆のイラストも添えて、まるで行ったかのように書かれていいるという非常にユニークな内容になっている。
コロナ禍の状況のもと、「旅行」というものがすっかり遠い存在になってしまった今。まだまだ不自由な生活が続くが、本書への思い、そして旅への思いについて語ってもらった。
コロナで変わった「旅」の在り方を先取りした一冊
――もともとは雑誌に連載していたものを今回まとめたとのことですが、こうして一冊の本になっていかがですか。
本を書く人ってすごいなって思いました。まず「締め切り」ですよね。俳優という本職をやりながらの執筆だったので、撮影最中に締め切りが近づいて来ると、もうどうしようかという気持ちになりますよね(笑)。
――とはいえ、やっぱり感慨深いものがあるのでは?
そうですね。思ったより分厚くなって「こんなに書いていたのか!」と驚きましたし、こうして形になるとちょっと恥ずかしさもあります。変わった本じゃないですか。行きたくてもなかなか行けない場所に思いを馳せて、夜な夜な繰り広げていた僕の秘密の趣味を世の中に出して良いものかと(笑)。世界遺産となるとマチュピチュとかどうしても有名なところになりがちですが、ほかにもたくさんいいところはあるんです。でも、なかなか行きにくかったりするので、今回はそういう世界遺産も紹介出来て満足しています。
――なにより行ったことのない場所への思いを一冊の本にまとめたところに、鈴木さんの想像力のたくましさを感じます。
俳優という仕事と直接つなげたことはないですけど、同じ「想像する」仕事でもあるので、どこか通じるところはあるかもしれないですね。ただ、フィクションとはいえ「ウソ」はつけないじゃないですか。そのためにリサーチにはかなりの時間と労力をかけましたので、一番良い形でその世界遺産を紹介できる旅日記が書けたと思います。行って書く方が楽ですけど(笑)。
――そこらへん、鈴木さんのマニアックな面が垣間見えて面白いです。
あんまり言うとイメージがぶり返してしまいますが、まぁ変態的ですよね(笑)。
――ところで、コロナによって社会が激変し「想像力」の大切さが叫ばれていますが、鈴木さん的にはどう意識してますか?
コロナの前に書いたものですが、この本に関して言えば「五感」ですね。温度、音、湿度、匂い……みたいなものは意識しました。この時期に行くと気温は何度で、どれくらいの湿度かイメージするだけで表現も変わっていきますし。ほかにも、すでに現地に着いた状態から書いた方が良いのか、空港から行く段階を書いた方が良いのか、アプローチのスタイルもそれぞれに違うので、そこもぜひ読んで感じて欲しいです。
――同じように「旅行」というものも変化を余儀なくされてしまいました。
僕は旅行が大好きだったので、いかに旅行が贅沢なものだったのか改めて思いますね。その上で強がりではありますが、行けないなら脳内で行けばいいじゃない、というささやかな抵抗のひとつでもあります。もちろん、早く気軽に旅に行ける状態になって欲しいですが、ある意味、飛行機もなかった時代、書物や絵から想像を張り巡らせていた時代に戻ったと思えば少しは楽しめるのではないかと。
――そう考えると、この本はまさに令和の『地球の歩き方』とも言えますね。
いやいや! そこまではちょっとおこがましいです(笑)。
鈴木亮平が読者にオススメする"行った気になる世界遺産"
――では、マイナビニュースの読者に、この本の中からオススメの世界遺産を教えて下さい。
僕、けっこうロマンチストなので(笑)、女性にオススメしたいのはイタリア・ヴェローナ。ここは『ロミオとジュリエット』の町として知られていて、ぜひともバレンタインの時期に恋人と行けたら最高かなと。町の中がバレンタイン一色に染まり、午前0時になるとハートの赤い紙吹雪が降ってくるんです。それはもう素晴らしい光景ですよ。
――確かに。でも……鈴木さんは行ってないんですよね?
はい。けど、僕の中ではほぼ行ってます(笑)。
――男性へのオススメは?
世界最大の滝と呼ばれているアルゼンチン・イグアスの滝ですね。この本では僕が滝の前で何を思うか綴ってますが、地球上でこれほど大量の物質が移動している場所って、おそらく滝しかないと思うんですよ。イラストも「グオォォォー!」とか「バッシャァァァー!」と声に出しながら描いてました(笑)。男性って自分も含めて頭が凝り固まっているところがあるので、問答無用でダイナミックなものを目の当たりにすると人生観変わるんじゃないかなと。これも僕は行ってませんけどね(笑)。
――改めて最後に読者へメッセージをお願いします。
自分でも前代未聞の本だと思いますので、みなさんがどう楽しんでくれるか正直分からない部分もありますが、コロナ関係なく同じ思いの人って意外といるんじゃないかなと思うんです。そんな僕が抱く未知なるものへのロマンを共有してもらいつつ、どの世界遺産も「この日」「この季節」という、行くならまさにベストのタイミングで書いてますので、「世界にはこんな場所があるんだ」と、驚きながら楽しんでもらえたら嬉しいです。
想像力を働かせて旅に出よう
コロナの影響はまだしばらくは続くと思うが、彼が豊かな想像力をフル稼働して創り上げたこの本をゆっくり読みながら、まだ見ぬ世界に思いを馳せてはいかがだろう。きっと家に居ながらにして、あなたを遠い異国の地に連れて行ってくれるはずだ。
カメラマン/カワベミサキ
スタイリスト/八木啓紀
ヘアメイク/宮田靖士(THYMON Inc.)
『行った気になる世界遺産』鈴木亮平 著
『行った気になる世界遺産』(ワニブックス)は、世界遺産に詳しいことでも知られる俳優・鈴木亮平が、熱い想いをめぐらせながら自ら絵・挿絵を描き下ろし、妄想爆発で文章も全て書き下ろした前代未聞の<旅行記>。雑誌『プラスアクト』での連載に新たな挿絵や記述等も加え、計288ページにも及ぶ大ボリュームな一冊。9月10日発売。