「コールドリーディング」は、事前に情報を収集せずに相手の気持ちを言い当てるようなテクニックのことです。コールド(cold)は「準備なしに」、リーディング(reading)は「心を読む」という意味です。一方、あらかじめ相手のことを調べておいてから言い当てる技術は「ホットリーディング」と呼ばれます。
この記事ではコールドリーディングの方法やメリットをご紹介します。
コールドリーディングの基本的な技術
コールドリーディングは、何の前情報もなしに相手の感情を読み取り、それを言い当てることで相手の信頼感を得るための会話上のテクニックです。テクニック自体はさまざまな場面で応用できるものであり、人に心を開いてもらうためのスキルとしても使えます。具体的にみていきましょう。
あいまいルーズ
「あいまいルーズ」とは、意味を限定せず、相手の性質を言い当てるような技術のことです。「適当」「多少」「一般的な」など、言葉には複数の意味に解釈できるものが多くあります。また、「~てしまう」「~することがある」などの表現を使うと、余計に意味がぼんやりします。
これらの言葉を多用することで、聞く人に「自分に当てはまることを言っている」と思わせるのが「あいまいルーズ」の手法です。
おだてルーズ
「おだてルーズ」とは、相手の長所を褒めるテクニックです。人は褒められると、当然嬉しくなります。褒めてくれた人の言葉は信じやすくなるといわれています。
人は、「あなたはとてもストイックな人です」といったように褒められると、自分の隠れた努力や美点を見つけてくれたように感じて相手に好意を抱くそうです。
不満ルーズ
「不満ルーズ」とは、「あなたは今の状況に不満を抱いています」というように、相手の心の中にある不満を言葉にする方法です。
現状に満足していて、ひとつも不満がないという人はまれなのではないでしょうか。そのため、多くの人がこのように言葉をかけると、「実は」と具体的な不満の内容を話し出してくれるそうです。
向上心ルーズ
「向上心ルーズ」とは、「あなたは今よりも人間的に成長したいと思っています」といったように、相手の持っている向上心を指摘するテクニックです。
人は誰でも今よりもいい環境、さらに上のステージを望んでいるでしょう。そのため、「上に行きたいですよね」と聞かれると多くの人が頷くでしょう。
相手が否定的な返答をしないと考えられる問いかけは、「不満ルーズ」と同様、コールドリーディングの基本的な話術です。
弱点ルーズ
「弱点ルーズ」とは、相手の欠点や弱点を指摘する手法です。このテクニックのポイントは、ただ弱点を指摘するのではなく、その前後にフォローを入れる点です。
否定的なことだけを言われたら相手は傷ついてしまいますが、そのあとに「この部分は誰よりも優れている」「問題点を克服している」といったように「おだてルーズ」と組み合わせることで、褒め言葉が信憑性を増して聞こえるようになります。
自己幻想ルーズ
「自己幻想ルーズ」とは、相手が自分に抱いている理想や幻想を指摘する方法のことです。誰でも、「あのときあちらを選択していたら今よりもっといい生活を送っていたかもしれない」と思うことはあるでしょう。
自己幻想を刺激することは、よりよい自己像を提供することです。自分を評価してくれる相手には共感性が増し、心理的な距離が近くなるという効果が期待できます。
ダブルバインドルーズ
「ダブルバインド」は、選択肢をこちら側で用意して、どちらかを選ばせることで相手に意思決定をさせないといった会話技術です。
例えば、ご飯を食べに行く際に「どこに行きたいか」ではなく「AとBどちらがいいか」と聞かれるといった場合がこの技法に当てはまります。
この技法を使って聞かれた側は、選択肢を自分で選んだ気持ちでいても、実際は選択肢自体がこちらで用意したもののため、あらかじめ用意した回答に誘導されただけということになります。
コールドリーディングを使うメリット
コールドリーディングの基本的なテクニックをご紹介しましたが、誰もが多かれ少なかれ会話の中で使っているのではないでしょうか。以下ではメリットについて2つ、解説します。
情報を引き出せる
メリットの1つ目は、情報を引き出せるということです。例えば「不満ルーズ」と「おだてルーズ」を組み合わせると、相手は具体的に現状のどこが不満なのか、これからどうしたいのかを説明してくれるでしょう。
相手に心を開いてもらうのがコールドリーディングの手法です。心理的に近いと感じる相手には、様々な情報を提供してくれるでしょう。
短時間で信頼関係を築ける
コールドリーディングを使うメリットの2つ目は、短時間で信頼関係を築けるということです。人は、個人的なことを聞いてくれる相手を信頼しやすくなるからです。
コールドリーディングを身につけるために
コールドリーディングのメリットについてご紹介しました。ここではどのような点に注意しながら実践したらいいかをお伝えします。
観察する
コールドリーディングの練習の第一は、話し相手をよく観察することです。コールドリーディングのどのスキルが相手に有効なのかを知るためには、相手が使う言葉や仕草、癖などをよく観察する必要があります。
コールドリーディングは初対面の相手に特に効力を発揮します。普段から人を観察し、短い時間で分析できるような練習をしておくと、いざというときに役に立つでしょう。
タイプ分けする
次にタイプ分けをします。人は大きく「Meタイプ」と「Weタイプ」に分けられるといわれています。
「Meタイプ」は「私」を中心に考える人で、意志が強く、リーダーシップがあります。「Weタイプ」は「私たち」を中心に考える人で、協調性があり、人の意見を受け入れやすいという特徴があります。
このように人を分類することで、効果のあるコールドリーディングのテクニックが活用しやすくなります。
仮説を立てる
次は仮説を立てます。コールドリーディングのどのテクニックが相手に有効なのか、どんな質問をすれば会話がスムーズに進むのかを考えます。
タイプが違えば、適している問いかけも変わってくるでしょう。相手を観察してわかったことをもとに、この質問をしたらこんな答えが返ってくるだろうと想像します。推測しておけば、実際の会話の場面にも余裕を持って臨めるでしょう。
検証する
仮説を立てたら、検証です。自分が立てた仮説に基づいて、コールドリーディングのテクニックを実践します。
ただし、自分の考えた通りに会話が進むとは限りません。特にコールドリーディング初心者は、難しいテクニックよりも「不満ルーズ」や「向上心ルーズ」といった、多くの人が肯定するような問いかけから試してみるといいでしょう。
反応を見る
コールドリーディングを実践している間は、相手の反応に注目しましょう。できるだけ細かく覚えておくことで、コールドリーディングのテクニックを向上させることが可能になります。
反応を見る際には、自分の立てた仮説が正しかったのか、推測した通りの答えが返ってきたかに気をつけます。
コールドリーディングを活用して信頼関係を築こう
コールドリーディングは会話上のテクニックですが、人との距離感を縮めたり、親近感を持ってもらったりするのに役に立ちます。特に会話に自信のない人には、一つのヒントになるでしょう。
ビジネスの場面でも恋愛の場面でも、コールドリーディングを応用することでコミュニケーションの円滑化が期待できます。さまざまな方法を活用して、相手との信頼関係を築いてみてください。