これまでも日常生活のちょっとしたことで印象を変えるコツをお伝えしてきましたが、最終の3回目は上司から部下への「コミュニケーションをより深める簡単なテクニック」についてお伝えしたいと思います。
愛されビジネスパーソンは実践する誉めテクニック
ある企業研修で知り合ったT部長は、とても気さくで、見るからに人望が厚い「ザ・部長」といった感じの方でした。しかし、コロナの影響で社内会議がオンラインに移行したことはいいが、部下との距離感の取り方に悩んでいると言います。
リアルな空間で会議を行っていた時は、その場の空気を見てジョークをいったり雑談をしたりとテンポ良く話ができていたのに、web会議になった途端に会話の「間」がもたなくて困っているとのこと。
業務がオンライン化し、より時間短縮や業務効率化という点が求められると、コミュニケーション面でなんとなく部下との距離が遠く離れていっている気がするな、なんて感じたことはありませんか? そんなみなさまへお勧めしたい3つの小さなこころがけをご紹介いたします。
当たり前のことを口に出して伝えてみる
オンライン会議が時間通りに始められたことや、コロナ禍でも全員が元気に業務に取り組んでいることなど、つい指摘するのも忘れがちな「当たり前」をオンライン上でしっかり部下に伝えてみましょう。
それを聞いた部下の皆さんは何をいまさら、、、と思う方もいるでしょうが、その反面、日ごろの業務の確認・承認だけでなく、自分の一つひとつの積み重ねに対して心を配る上司の変化を嬉しく思うはずです。
期限より早く提出された書類があったら「思いがけず早くて助かったよ。見直しの時間が増えたから今度のコンペうまくいきそうだ」や、企画書に対して「チェックはもちろんするけれど、いつも安心して任せられる」などリアルな場では当たり前になっていることをあえて言葉にして届けることで、日常の感謝を伝えることができます。
日頃伝えていた「ありがとう」に含まれていた言葉を取り出す作業と言ってもいいかもしれません。Thank you for~をオンライン上で伝えます。
ペップトークで自分も相手もポジティブに
ペップトークとは、もともとアメリカでスポーツの試合前に監督やコーチが選手を励ますために行っている短い激励のスピーチのことで、仕事や家庭などでも使えるシンプルでポジティブな言葉を使ったコミュニケーションのことです。
以前の記事で、自分の口癖を知ることは大切だとお伝えしてきましたが、否定的語が口癖の上司は総じて嫌われる傾向にあります。
例えば、納期がギリギリの案件があった際に「来週15日までに仕上げないと、間に合わないぞ!」のような「ない、ない」を連呼する上司は、受け手の脳が勝手にできないイメージとして共有されて、結果間に合わないことが多くなります。
人は聞いた言葉を脳に思い浮かべるとそのまま行動に移してしまう傾向にあるので、危険な目に遭った時など、とっさに「危ない! 右!(に行ったら危ない)」と言われた人はつい右方向へ動いてしまうのは、人間の本能のようなものです。
この理屈が分かったら、ネガティブな言葉をポジティブ変換して「来週15日までにみんなで協力して仕上げよう。そうすれば絶対期限に間に合うよ!」というような言葉でチームを引っ張ってみましょう。聞くほうも耳障りが良く、前向きに仕事に取り組むことができるはずです。
話す側もポジティブな言葉を口にすることによって、忙しい毎日でも気持ちよく部下とコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
陰で支えてくれる人こそ大事にする
オンライン会議中に黙っているが必死に議事録を取る人、口数は少ないけれど確実にプロジェクトを進めてくれる部下など、コミュニケーションでのアピールが弱い人ほどチームを大きく支えてくれているパターンがあります。
コロナでテレワークが主流になる前は、目に見える形で仕事をしていたので気にならなかったことが、オンライン化により、自己表現が苦手だった人との接点をより持ちづらいということはあると思います。
そんな人だからこそ感謝の気持ちを伝えることは上司の必須事項です。部内のミーティングであえてみんなの前で言うことはなくとも、個人チャットで「陰での活躍に感謝しています」や、「見えないところで動いてくれていること、知っています。ありがとう」など労いの言葉を届けることもありです。
最初は照れ臭く感じるかもしれませんけれど、お互いの気持ちに新しい風が吹いて、オンラインでも意思疎通ができ距離を縮めることができるでしょう。
今回の連載を通して、小さな気遣いや、言葉の選び方でコミュニケーションスキルを確実にアップするコツをお伝えしました。大変な状況ではありますが、これを機にスキルを高めて円滑なコミュニケーションを楽しんでいただければ幸いです。
執筆者プロフィール:福山真由美(ふくやま・まゆみ)
イメージコンサルタント 「Grace」代表
大学卒業後、大手電力会社で秘書、広報を担当。結婚を機に退社するも、7年後の離婚をきっかけに再度就活。キャリアなし、特技なしの状態ながら、身に付けてきた「見せ方・振る舞い」のスキルを発揮し受けた会社すべて内定。2016年に独立。印象管理をテーマにしたセミナー、研修が好評。最新刊に『ずるい美人』(WAVE出版)