ザイアンス効果とは、心理学の法則の一つで、別名「単純接触効果」と呼ばれるもの。効果の概要は、初めのうちは興味関心がなくても、何度か触れる(接触する)うちに強い印象を受け、好感を抱くようになる――というものです。
同効果により好感を抱く対象は、人・物・サービスなど幅広く、特にビジネスシーンで活用することで、消費者に自社サービス・製品などに好印象を与えることが可能です。また対人関係においては、交友関係・恋愛関係・仕事関係など幅広い場面で有効であることが証明されています。
ただし、ザイアンス効果を活用するにあたってはいくつかの注意すべき点が存在します。例えば、相手との接触回数をいたずらに増やすとむしろ逆効果になってしまう、など。
本稿では、ザイアンス効果を発揮するための方法や注意点について紹介します。
ザイアンス効果の由来
そもそも「ザイアンス効果」という名前は、同効果を唱えた論文の発表者にちなんで付けられたものです。同効果が初めて発表されたのは、1968年。アメリカの心理学者によって発表された『単純な接触についての態度の効果』というタイトルの論文でのことでした。
この論文の発表者がロバート・ザイアンス氏であったため、同効果は後にザイアンス効果と呼ばれるようになったのです。
ザイアンス効果の実験内容
論文の中で紹介されている、ザイアンス氏が行った実験の一部をご紹介します。まず、被験者に異なる12人の写真をランダムに見せていきます。写真を見せる回数は、1~25回の範囲でバラつきをもたせます。
最後に写真をすべて並べて見せ、「どの写真が印象に残ったか」を尋ねると、見た回数の多い写真ほど印象に残ったと答える傾向がありました。この実験により、「接触機会が多いほど強い印象をもつ」ということが証明されました。
ビジネスにおいてザイアンス効果を発揮させる方法
ザイアンス効果は、ビジネスにおいて大いに活用できます。より効果的に活用するため、まずは正しい理解を身に付けましょう。誤った理解は、逆効果となりますので注意が必要です。
以下では、「ビジネスにおいてザイアンス効果を発揮する方法」を紹介します。即日実施できる内容も多いので、ぜひ参考にしてみて下さい。
方法1 : 短期間で接触する
ザイアンス効果は、短期間のうちに接触の回数を増やすとより大きな効力を発揮します。また、一度強い印象をもって貰えれば、その効果はしばらく持続すると言われています。
新商品やサービスの発売時に「○○キャンペーン」などと称して、短期間に集中して広告を出したりするのは、この方法を用いている具体例の一つです。
方法2 : 足しげく通う
ザイアンス効果の理論に当てはめれば、初めて会っていきなり売り込みを始めるのは非合理的です。タイミングとしては、何度も諦めずに通い続け、複数回にわたって接触の機会を持った後の方が適しています。
そういう訳で、ザイアンス効果を活用するためには、初対面の際にはあえて、自己紹介や雑談程度に留めておくのが良いでしょう。何度か面会を重ね、相手が自分に好感を抱いてくれた(と感じる)タイミングで、商品・サービスを売り込んでみて下さい。
方法3 : リターゲティング広告を活用する
インターネット上では、一度サイトを訪れたユーザーがサイトを離脱した後も、そのユーザーを追跡して広告を出すことがあります。このようにして出される広告は、改めて狙い打ちするという意味で、リターゲティング広告と言われます。
一度サイトを訪れているということは、少なからず興味や関心を抱いている状態と言えます。そういった状態のユーザー(顧客)に対する広告はより効果を発揮します。
方法4 : 何度も広告を目にとまらせる
何度も同じ広告を目にするうちに、その広告への印象が強くなっていきます。この印象が徐々に興味関心へと変化し、広告に関するより詳細な情報を求めるようになると言われています。
このように、何度も目にとまらせることで心理的な欲求を掻き立てる手法は、インターネット広告やテレビCMなどで多く採用されています。何度も目にする広告に対しては、知らず知らずのうちに好感を持っていることがあります。
方法5 : メールマガジンを利用する
日々さまざまな種類を受け取るメールマガジンにも、実はザイアンス効果が関係しています。定期的なアプローチが自動で行われることで、手間なく相手との接触機会を得られるためです。
企業の情報や商品・サービスに関して、メールマガジンを発行するケースも多いでしょう。最初は読み流していても、徐々に関心が高まり、内容を確認し、商品・サービスを利用するに至るケースがあります。
方法6 : アプリのプッシュ通知を利用する
普段何気なく利用しているスマホアプリのプッシュ通知にも、ザイアンス効果の活用が意図されています。天気予報アプリで雨雲が近づいていることを通知するように、プッシュ通知はアプリの利用目的により通知内容が異なります。
上記の通りアプリユーザーは、プッシュ通知により何らかの情報を定期的に受け取ります。情報が提供される回数に応じてユーザーの関心が高まり、ザイアンス効果が発揮されるのです。
方法7 : テレビCMを活用する
一度により多くの人に広告を届けるには、テレビCMの活用が有効です。最近ではYouTubeやインターネットテレビも台頭していますが、まだまだテレビの大衆人気は健在と言えます。
番組の視聴者層に合わせてテレビCMを流すと、より効果的です。毎週視聴する番組の合間に、何度か同じ広告を目にすると、自然とその広告に強い印象を持つようになります。多くの人の目に触れやすいテレビCMを有効活用しましょう。
方法8 : SNSを有効活用する
最近では多くの企業がSNSを利用した情報発信を行っています。発信される情報が有益であれば、ユーザーはその企業をフォローし、コメント機能を活用してコミュニケーションを取るかもしれません。
このように、日々何気なく目にし、コミュニケーションが気軽に取れるSNSの有効活用が進んでいます。企業とユーザーが手軽に繋がることができるSNSのメリットを活かしましょう。
方法9 : セブンヒッツ理論を利用する
セブンヒッツ理論とは、「7回同じ広告を目にすると、その商品を購入する確率が高まる」という理論です。ただし、ここで言う「7回」というのは、あくまでも統計的な根拠に基づく回数のため、7回が常に最適とは言い切れません。
この理論の背景には、接触回数が増えると好感を持つというザイアンス効果が隠されています。具体的には、テレビCM・メールマガジン・SNSなど日頃からよく目にする広告手法には、手軽に接触回数を増やす役割があります。
方法10 : 回数上限に気をつける
際限なく接触回数を増やすことは、得策とは言えません。接触回数の上限は、10回が目安と言われています。
好感度は、10回目をピークにそれ以上は上がらないとする研究結果があります。この研究結果をもとにすれば、それ以上の接触は非効率です。また、反って煩わしさや鬱陶しさを与えてしまい逆効果となる場合も考えられます。
ザイアンス効果の注意点
ただ接触回数を増やせば、無条件に好感を得られるというものではありません。ザイアンス効果を発揮するためには、いくつか注意点があります。
以下、ビジネスにおいて、この心理学の効果を充分に発揮するための注意点をご紹介します。
やりすぎには注意
ザイアンス効果を発揮する上で重要なのが、「接触の回数及び頻度」と「1回あたりの情報量」です。接触の回数については、先述の通り10回を上限に考えると良いでしょう。頻度については、あまり頻繁過ぎず、適度なスパンを空けることが大切です。
1回あたりの情報量については、受け手が手軽に理解しやすいボリュームを心掛けましょう。読み切るのに何分も掛かるメルマガなどは、逆効果になりやすいので注意が必要です。
関係性に注意
相手との接触を試みる前に、相手との関係性を確認しておきましょう。関係性が良くない相手と接触回数を増やすと、悪いイメージをより強めてしまう可能性があります。
ザイアンス効果は、好き嫌いの感情が芽生える前にこそ有効です。相手のイメージが固まってしまってからでは、その効果は期待通りに発揮されません。むしろ逆効果となる場合が多いです。
ザイアンス効果を有効的に活用しよう!
ザイアンス効果について正しい理解を得ることで、ビジネスにおいての有効活用が可能です。やみくもに接触回数を増やしても、相手の好感を得ることはできません。 厳選してご紹介した「効果を発揮させる方法」と「注意点」を参考に、ザイアンス効果への理解を深めましょう。