ある上司と部下のオンライン会議上でのやり取り――

上司「あの件、なるべく早く頼んだよ!」
部下「分かりました。できるだけ早くに作成いたします」

――数日後

上司「あの件、もうできているよね?」
部下「コンペの件ですね。もう少しでプレゼン資料できあがります」
上司「違うよ、見積もりを急いでいた件だよ!」
部下「え、まだ全然内容聞いていませんが、、、」

これは、私がコンサルティングを行う現場で実際にあった行き違いの例です。従来のリアル会議では、「間」を調整し、「空気を読む」ことができました。しかし、オンラインでは伝えられる情報に限りがあるので雑談もままならないのが現状です。

  • 上司とのオンラインコミュニケーションに苦戦していませんか?

上司の評価はオンラインコミュニケーションのスキルで上がる

急速に進むリモートワーク化の影響で、「仕事ができるか、できないか」が明確に判断される状況になりつつあります。特にオンライン会議の場ではお互いに得られる情報が限られてくる為、効率よく業務の調整をするコミュニケーションスキルがより必要になっているでしょう。

このスキルは別に難しいことではなく、言葉を変えて置き換えることで解決します。自分が言いたいことをはっきりと相手に伝えれば、コミュニケーションは見違えるようにスムーズになります。

これからオンライン上のコミュニケーションの際に意識するだけで上司からの評価がぐんと上がる3つのポイントをお伝えしたいと思います。

「あいまい言葉」は信頼度を下げる

上司からの印象をすぐに変えるには、まず「あいまいな言葉」を具体的に変換することです。

冒頭の事例にあった「あれ、それ、これ」などのあいまいな表現は、社内のリアルな現場では、書類などが近くにある為、雰囲気で察することができました。しかしそれをオンラインで行うのは非常に難しいです。

上司から「あの件」と問われたら「A社プレゼンの件ですね」と必ず確認をするとよいでしょう。同じ業務に取り組んでいてもお互いに思い浮かべているものが必ずしも一致するとは限りません。もちろんこれはオンラインだけでなく、リアルなコミュニケ―ションでも行き違いが防げるため、意識しておけば非常に有効です。

また、上司が考える「できるだけ早く」と、自分が考える「早く」は違う可能性もあります。「明日午後までに」や「遅くとも3日以内、木曜終業時間までに」など、より具体性を持った提示を部下の立場からすると、上司も指示がしやすくなりますし、感覚の相違を修正することができます。

さらに、日本企業でよく使われる「なるはや」(なるべく早く)にもそれぞれの思いがあるので注意が必要です。「本日中に」も残業して翌朝に確認できる書類なのか、終業前にできあがり今日中に内容が確認できるのかでは大きく違います。

期限、期日を守ることは仕事における信頼度に大きく関わってきます。あいまい言葉を明確に変換することで、上司からの印象はぐっと変わるでしょう。

そして、上司にお世話になった時に御礼を伝える際にも具体性を持たせると印象が良くなるでしょう。「すごく感謝しています」より、「○○部長のフォローがあったおかげで契約が取れました」と何に対して感謝しているのかを具体的に伝えると、相手によりよい印象が残すことができます。

万人に共通する口癖「すみません」

上司など目上の人とのやり取りで、特に叱られていたり、指摘されたりしているわけでもないのに枕詞のように「すみません」と付けてしまう人が非常に多い印象です。

「すみません」という言葉は、基本的に謝るときに使うワードなので、仕事でミスをしたのかなと悪い印象が流れていきますので、日常でよく使ってしまう方は注意が必要。

例えば、訪問先でお茶を出してもらった時に「すみません」と言ってしまう行為は非常にもったいないです。「すみません」を「ありがとうございます」というポジティブな言葉に置き換えてみる。すると、感謝の気持ちが相手に伝わり、相手だけでなく自分も心地よくなるものです。

何か言われるたびに「すみません」が習慣になっている場合、相手の言葉にしっかり耳を傾けて受け取るべき言葉が何かを頭で考えてみましょう。特に日本では遠慮が美学と思われている節が多いと思いますが、賞賛の声を貰った時には素直に「嬉しいです」「光栄です」と答えるのが適切な回答です。

その場その場で自分の気持ちを適切に相手に伝えるために、言葉のストックを増やしておくのも周囲からの印象をよくする一つのきっかけになるでしょう。

上司の好きなものをそっと背景に飾る

オンライン会議の背景は、バーチャルな宇宙や、南の島にするのも良いですがちょっとした工夫で上司との距離が縮まります。例えば、上司が好きな作家の本や絵をさりげなく飾るなども効果的。

あれ? もしかしてと思わせるような気の利いた配慮により、上司とオンライン会議の締めくくりが少し楽しくなる期待できるかもしれません。これは社外に対しても使えるワザです。

クライアントの商品や、代表の書籍などを背景にさりげなくレイアウトしておくことで思いがけず話が弾むことがあります。言葉以外の情報で、相手に関心があることを伝えることで、たとえオンラインだけのコミュニケーションでも十分に良い印象を与えることができます。

明確な言葉を使い、印象の悪い口癖を変え、背景に少しだけ気を利かせた工夫するだけで、上司や周囲から自分の印象ががらりと変わり、相手から話しかけてもらいやすい好印象な自分を作りだすことができます。

次回は「部下や年下社員との距離を近づける」テクニックをお伝えいたします。

取材協力:福山真由美(ふくやま・まゆみ)

イメージコンサルタント 「Grace」代表
大学卒業後、大手電力会社で秘書、広報を担当。結婚を機に退社するも、7年後の離婚をきっかけに再度就活。キャリアなし、特技なしの状態ながら、身に付けてきた「見せ方・振る舞い」のスキルを発揮し受けた会社すべて内定。2016年に独立。印象管理をテーマにしたセミナー、研修が好評。最新刊に『ずるい美人』(WAVE出版)