本記事では、営業などビジネスシーンで使える心理テクニック、フット・イン・ザ・ドアについて解説していきます。意味はもちろん、活用事例も参考にイメージをつかみ、実際に使えるようになりましょう。

  • フットインザドアとは

    フット・イン・ザ・ドアとは何かや活用事例を紹介していきます

フット・イン・ザ・ドアの意味とは

フットインザドアとは、階的要請法とも言われており、最初に小さな要求を承諾させてから段々と要求内容を大きくしていき、最終的に目的である要求を承諾させる方法です。フットインザドアは一貫性の原理を活用した心理テクニックであり、一貫性の原理とは、人は最初から最後まで矛盾がない行動や言葉のやりとりをしたいという傾向性を指します。

フット・イン・ザ・ドアの由来

フット・イン・ザ・ドアはセールスマンが交渉するにあたり、玄関の外側から相手先のドアの内側へと足を運びいれている様子が由来です。

セールスマンはまず、相手先のドアの向こうから「ご挨拶だけでも」などと話しかけます。そして、相手の様子をみて「パンフレットをご覧になりませんか」「お時間があればゆっくりご説明させていだきます」などと、少しずつ着実に要求を上げていきながら、最終的な目標(販売)へとつなげていくのです。

フット・イン・ザ・ドアは一貫性の原理を利用した心理テクニック

フット・イン・ザ・ドアは、心理学の一貫性の原理が活用されています。一貫性の原理とは、人は最初から最後まで矛盾がない行動や言葉のやりとりをしたいという傾向があることです。

先ほどのセールスマンの例で言えば、「ドアを開けて話を聞くことをOK(承諾)したのだから、このパンフレットを見ることも同じようにOKした方がいいんじゃないかな……」といった具合に働く一貫性の原理を巧みにつき、徐々に要求のレベルを上げていくことがフット・イン・ザ・ドアのテクニックと言えます。

フット・イン・ザ・ドアの注意点

ビジネスシーンでも日常生活でもフット・イン・ザ・ドアのテクニックを利用する際には、注意をしなければいけないことがあります。一つずつ詳細にみていきましょう。

  • フットインザドアの注意点

    フット・イン・ザ・ドアの注意点に気を付けて使用しましょう

注意点1:初めの要求を小さくしすぎない

最終的に相手に受け入れてもらう要求の大きさをベースに、最初に要求する内容の大きさを逆算しましょう。

例えば、相手に仕事を手伝ってもらうことを要求とします。1時間手伝ってほしいと思っている場合、最初の要求を5分としてしまうと、要求が小さすぎます。この場合、最初の要求は15分とか20分とかにした方が1時間の手伝いにも心理的に受け入れやすいものとなるでしょう。

注意点2:段階を踏んで要求していく

要求はだんだんと大きなものにしていきましょう。前の要求との差が大きくなりすぎないようにも注意します。

例えば最初に100円のお金を借りることに成功するとします。100円借りることに成功したため、5,000円でも10,000円でも貸してくれるだろうと、いきなり金額を大きくすると相手は「そんな大金は貸せない」と断られる可能性は高いです。

このように、急に大きな要求をすると断られる可能性もあるため、要求するときは段階をしっかりと踏むようにしましょう。

注意点3:アンダーマイニング効果に注意する

フット・イン・ザ・ドアを実践するときは、アンダーマイニング効果には注意が必要です。アンダーマイニング効果とは、内発的な動機づけによって行われた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的な動機づけを行うことによって、動機づけが低減する現象を言います。

例えば、「料理の知識や技術を学びたい」という思い(内発的な動機)から無償である食堂で働いていた若い男性に対し、「これからも頑張ってほしい」とオーナーが給料(外発的な動機)を与えたとしましょう。普通に考えれば、有償になったことでモチベーションが上がると思うかもしれません。ただ、実際はこの若い男性のやる気は低下し、徐々に給料なしでは働かなくなってしまう……というのがアンダーマイニング効果と考えられています。

先ほどのセールスマンの例で言えば、最終的な目標である販売に至るまでの要求(パンフレットを見てもらうなど)において、交渉相手が要求を承認した際にセールスマンが何らかの報酬を渡してしまうと、相手のモチベーションが下がってしまうことが危惧されます。

フット・イン・ザ・ドア法の活用事例

フット・イン・ザ・ドアのテクニックは私たちが気づいていないだけで、いろいろなシーンで活用されています。具体例をみてきましょう。

  • フットインザドアの活用事例

    フット・イン・ザ・ドアの活用事例を紹介します

フット・イン・ザ・ドアの活用事例1:お試し期間を設ける

いきなり商品を購入させずにお試し期間を設けるという方法も、フット・イン・ザ・ドアの活用例です。

例えばコーヒーメーカーなど、利用してみなければ使い勝手がわからない商品や、高額であり即購入とはいかない商品など、顧客が購入に踏み切れないときにこの方法は有効です。

フット・イン・ザ・ドアの活用事例2:メルマガ登録をしてもらう

メルマガの登録をしてもらう場合にもフット・イン・ザ・ドアは有効です。

メルマガを登録してもらうには、メルマガの存在を知らせる必要があります。そのためにまず、目を引く誘導バナーをデザインしたり、誘導バナーの掲載位置を検討したりしましょう。目を引き興味の引く内容であれば、メルマガをクリックしてもらえる確率は高まります。

そして、訪れた人がメルマガに魅力を感じれば登録をして、商品を購入する機会の増加につながります。

フット・イン・ザ・ドアの活用事例3:試供品を受け取ってもらう

街頭などでサンプリングをする方法は必ず受け取ってもらえるとは限りませんが、フット・イン・ザ・ドアを活用すればその確率は格段に上がります。

例えば、シミに悩んでいる人に向けたランダムなweb広告を出します。シミに悩んでいる人は、その広告を目にして「広告を見てみようかな」と思うことでしょう。

この際、商品広告のページに無料サンプルの情報を載せておけば、「無料サンプルなら試してみようかな」と試供品を取り寄せることにつながります。

フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイスの違い

実はフット・イン・ザ・ドアの対とも言えるドア・イン・ザ・フェイスという心理テクニックも存在します。そちらもあわせて紹介します。

  • フットインザドアと比較されるドアインザフェイスとは

    フット・イン・ザ・ドアと比較されるドア・イン・ザ・フェイスとはどんなテクニックなのでしょう?

ドア・イン・ザ・フェイスとは、「相手が譲歩を示したら自分も譲歩を示さないと自分が悪い人に見える」という心理効果を活用した譲歩的依頼法のことです。

フット・イン・ザ・ドアが段階を踏んで交渉の大きさを上げていくのに対して、ドア・イン・ザ・フェイスは、最初に大きな要求をして徐々に要求を小さくしていくといった交渉方法を取るのが違いです。

ドア・イン・ザ・フェイスの注意点

身につけておけばフット・イン・ザ・ドアと同様に、ドア・イン・ザ・フェイスも仕事にもプライベートにも役立つテクニックですが、活用する際には注意することがあります。

初めの要求を大きくしすぎない

あまり大きな要求を最初にしないようにします。最初の要求を大きくしてしまうと無理難題を押し付けてくる相手だと判断されてしまい、それ以上の話を聞いてもらえなくなります。そのため、はじめの要求は断った相手が罪悪感を持つような大きさの要求にしましょう。

すばやく次の要求をする

ドア・イン・ザ・フェイスを活用するにはスピードが大切です。最初の交渉後すぐに次の交渉を行いましょう。長い時間を空けてしまうと、相手が交渉のことを忘れてしまい罪悪感も薄れていってしまうからです。

ドア・イン・ザ・フェイスを活用するのなら、相手が「交渉を断ってしまった」といった罪悪感を持っているうちに、次の交渉を行うことが重要となります。

同じ相手に多用しない

ドア・イン・ザ・フェイスを同じ相手に多用しないようにしましょう。同じような交渉方法で商品を売れば、相手もこちらの手法に気がつきます。そして交渉も慎重になっていき、やがて交渉ができなくなることも考えられます。

ドア・イン・ザ・フェイスは交渉相手との関係性も大切であり、相手と良い関係を築くことで効果を発揮します。そのため活用するときは頻度に気をつけて効果的な場合にのみ活用しましょう。

フット・イン・ザ・ドアを営業などのビジネスシーンで賢く活用しよう

今回は、フット・イン・ザ・ドアの意味、注意点や活用事例について紹介しました。フット・イン・ザ・ドアという交渉術は、営業だけでなく他のビジネスシーンや、恋愛などのプライベートにも活用できる交渉術となるため、覚えておくと便利でしょう。