プレッシャーを感じる場面で体が思うように動かなかったり、思考が停止してしまったりした経験を持つ人も少なくないでしょう。一方で、常に結果が求められるプロアスリートのように、プレッシャーを克服して己の力に変えることができる人たちもいます。では、私たちはどのようにプレッシャーと向き合えばいいのでしょうか。
本記事では、プレッシャーを感じやすい方の性格特性や日頃の積み重ねでできるプレッシャーに打ち勝つための手法について解説していきます。
プレッシャーの正体
プレッシャーを感じる場面は、仕事上・日常生活でも多々あると思います。一般的にプレッシャーという言葉は、周囲の期待などから来る精神的な重圧を指します。それに対して、ストレスは、外部からの攻撃なども含めた要因による、精神的な苦痛や身体的影響を指します。つまり、プレッシャーはストレスの要因の一つとも考えられます。
プレッシャーをはじめとする何らかのストレス要因(ストレッサー)を抱えているとき、人はコルチゾールというホルモンが副腎皮質から分泌されます。コルチゾールは身体や脳のエネルギー効率を良くしてくれるホルモンであり、心身がストレスを受けると急激に分泌が増えることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
しかしながら、過剰なプレッシャーを受け続けると、ストレスにより、コルチゾールの分泌が慢性的に高くなり、これが不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患の一因ともなりうると言われています。プレッシャーの正体は、このコルチゾールの分泌過多とも言えるでしょう。
プレッシャー自体にプラスもマイナスもない
プレッシャーの捉え方として、それ自体にはプラスもマイナスもありません。フラットです。ただし、考え方や捉え方一つでプレッシャーはプラスにもマイナスにも変えられます。
プレッシャーは悪いものとして、「失敗したら取り返しがつかない」というマイナスの考え方や捉え方をすると、プレッシャーはマイナスに働きます。一方で、プレッシャーは自分を成長させてくれる良いものとして、「失敗してもやり直せばいい」というプラスの考え方や捉え方をすると、プレッシャーはプラスに働きます。
つまり、考え方や捉え方次第で、プレッシャーを味方につけることも可能なのです。
プレッシャーに弱い人の特徴
続いて、プレッシャーを感じやすい人の性格を紹介していきます。
せっかちな性格
せっかちな性格の方は、些細なことでイライラしやすい傾向があります。感情のコントロールが苦手なことから、自己評価が低くなり、プレッシャーを感じやすくなるとされています。
完璧主義な性格
完璧主義な性格の人は、完璧に物事を進めることに執拗にこだわる傾向があります。常に完璧な状態を求めてしまうため疲れやすく、プレッシャーを感じやすくなってしまいます。
責任感が強い性格
責任感が強い性格の人は、そうでない人に比べ物事や課題を抱え込んでしまう傾向があります。強い責任感からくる自責思考があるため、プレッシャーを感じやすくなってしまいます。
心配性な性格
心配性な性格の人は、些細なことや未来のことまで過剰に心配する傾向があります。他者からの評価にも敏感であるため、プレッシャーを感じやすくなってしまいます。
自分の気持ちを言えない性格
自分の気持ちを言えない性格の人は、自分の中だけで感情を整理しようとするため、物事をひとりで抱え込みやすい傾向があります。何かトラブルに見舞われた際にも人に相談することができず、プレッシャーを感じやすくなってしまいます。
負けず嫌いな性格
負けず嫌いな性格の人は、周囲に対して強い競争心を持っている傾向があります。他者の評価を気にしすぎるあまり、プレッシャーを感じやすくなってしまいます。
プレッシャーに弱い人あるある? 仕事でプレッシャーを感じる原因
さまざまな場面で体験するプレッシャーですが、多くの社会人はビジネスシーンにおいてプレッシャーを感じる傾向にあるのではないでしょうか。それではなぜ、仕事でプレッシャーを感じるのでしょうか。
仕事でプレッシャーを感じる要因は主に2つに分けることができます。それは「自己評価と仕事上求められる業務のレベルが合わないこと」「要求を達成できなかった場合の恐怖に駆られていること」です。
自己評価と仕事上求められる業務のレベルが合わないことの例
初めてやる仕事を依頼された場合
初めて行う仕事を遂行する際には、「頑張らないといけない」というプレッシャーを受ける傾向があります。そのため、自分のキャパを超えていると感じている仕事でも、無理をしてでも完遂させようとし、その結果として「仕事から逃げたい」「会社そのものを辞めたい」という気持ちになりかねない場合があります。
仕事の量や労働時間が多すぎて疲れている場合
休む暇もないくらいの業務過多の状況では、疲れからプレッシャーを感じやすくなる傾向があります。疲労が積み重なっていくことで、本来発揮できるパフォーマンスも発揮できなくなり、心の面でも余裕がなくなってきます。
実力に見合わない仕事を任されている場合
自分のスキルや経験に見合わない仕事を任されることは、初めて行う仕事同様に「多少、無理してでも達成しないといけない」とプレッシャーを感じやすくなる傾向があります。無理をし続けることで、キャパシティーを超えてしまい、結果的に大きな負担がかかってしまいます。
要求を達成できなかった場合の恐怖に駆られていることの例
上司や周囲から過度に期待されている場合
あまりにも高い目標を決められると、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込んでしまう可能性があります。「仕事ができる人」と良い意味で周囲から期待される場合も、時間の経過とともに、周囲の過度な期待はやがてプレッシャーや不安感に変わることが少なくありません。
自分の評価が下がるのを怖がっている場合
組織で働く上で、常に付きまとう評価。同期や後輩たちが活躍している姿を見ると「ミスはできない」と不安になることもあるでしょう。こういった仕事への捉え方から、プレッシャーを感じるようになってしまうのです。
ミスが許されない仕事を任されている場合
ミスが許されない仕事は、失敗すれば大きな損害や損失が出る可能性もあり、「絶対にミスができない」という不安感からプレッシャーを感じやすくなります。
プレッシャーに打ち勝つ方法
プレッシャーが負の方向に働くと、さまざまな悪影響が出現してきます。ただ、仕事をするうえでのプレッシャーは避けては通れない存在。そのため、有事に備えて仕事のプレッシャーを克服する方法を把握しておきましょう。
プレッシャーを感じている原因を明確にする
まず、プレッシャーを感じている原因を知ることが重要です。原因を明確にすれば対処法を模索することができ、状況を好転させるきっかけになります。
とはいえ、自分を取り巻く状況を客観的に見ることは難しいものです。そのような場合は、紙とペンを用意して蓄積した感情をただ思うままに書き出すとよいでしょう。俯瞰して書いた内容を見ることで、何がプレッシャーを引き起こしているのか、その原因が見えてきます。
上司や同僚など周囲に助けを求める
プレッシャーを感じやすい人の多くに共通しているのが、責任感が強いあまり物事を一人で抱え込んでしまうことです。仕事に責任感を持つことは良いことである反面、背負い込みすぎることで、本来のパフォーマンスを出しきれなく場合もあります。
仕事の悩みは、一人で抱え込むことはなく、組織として解決をすべき課題であると考え、上司や同僚に相談を持ち掛けましょう。
成功したときの自分を思い描く
プレッシャーを感じているときは、精神的にマイナス面ばかりに目が行きがちです。ネガティブなことばかり考えた結果、事態もマイナスな状況になる可能性もあります。
先の見通しを立てること自体は良いことであるため、なるべくポジティブな側面を見つけ出せるようにして、仕事を好転させるようにしましょう。
仕事を細分化して一つずつ着実に進めていく
プレッシャーを感じ、不安感に押しつぶされそうなときは、タスク管理も疎かになり、何から手を付けていいかわからなくなってしまうこともあります。
そのようなときだからこそ、まずは仕事の内容を俯瞰し、細分化することでやるべきタスクを明確化し、一つずつ解決していきましょう。タスクに一つずつ着実にていねいに取り組むことで精神的にも集中ができ、気持ちもおのずと落ち着いてくることでしょう。
失敗も成長につながる良い機会であると前向きに捉える
「失敗したらどうしよう」「ミスをしたらどうしよう」と考えてしまうことは、仕方がありません。しかし、考え方や捉え方を変えれば、失敗自体を成長の糧として捉えることもでき、その結果として仕事を順調に進められる可能性も高めることができます。
失敗やミスは、決して悪いことだけではありません。失敗は成功の糧と、前向きに考えることで、失敗に対する不安を軽減することができます。
仕事を休み、リフレッシュしてみる
心身ともに余裕がないときは、一旦仕事から離れることも大切です。無理に仕事を続けていても、思った成果が出せずにまたプレッシャーを感じてしまうという悪循環に陥ってしまった場合は、まず休みましょう。
休んでいる期間は、できるだけ好きなことに打ち込むことでリフレッシュでき、再度仕事に戻る際も落ちついて業務に取り掛かれるほか、仕事に対する意欲も上がることでしょう。
仕事のプレッシャーを乗り越えることによって生じるメリット
私たちの多くを苦しめるプレッシャーですが、その大きな重圧を乗り越えた先に得られるものも少なくありません。ここでは仕事のプレッシャーを乗り越えることによって生じるメリットをまとめました。
成長できる良いきっかけになる
現在の実力で達成できるかどうかわからない仕事に対してプレッシャーを感じている場合、全力で取り組み完遂する、あるいは取り組む過程においても、自身のスキルアップなどの成長につながります。
経験のない仕事に取り組むことは、結果として貴重な経験にもなります。仮に、目標達成することができなくとも、その経験は次に同じような仕事に従事する際に自身を助ける強力なサポーターになることでしょう。
仕事に対して自信がつく
プレッシャーを乗り越えた経験は仕事を進めるうえで重要な自信へと変わります。さらに、目標を達成するための、勉強や周囲への相談といった努力はスキルへと転化します。ここで身につけたスキルも経験同様、仕事を進めるうえでの強力なサポーターとなることでしょう。
達成感が次の仕事へのモチベーションへと変わる
プレッシャーを感じるほどの仕事をやり遂げた際の達成感は、次の仕事へのモチベーションへと変わるでしょう。より困難で、難解な仕事であるほど、達成感は大きくなります。
チームで取り組むプロジェクトなどでは、チーム自体の結束も高まり、この達成感は次の仕事へ向かうモチベーションにもなります。
プレッシャーを感じにくくさせるためにできる習慣
プレッシャーは時には味方にもなる、仕事を進めるうえでのサポーターです。とはいえ、できる限りプレッシャーを感じにくくなることで、本来のパフォーマンスがどのような状況でも発揮できることに越したことはありません。
プレッシャーは、日頃の訓練によってコントロールできるようになります。強大なプレッシャーを感じにくくさせるために今日から実践可能な習慣を紹介します。自身ができる範囲から始めてみてください。
深呼吸する(呼吸を深める)
呼吸は、人の精神状況と密接に関わっています。呼吸とともに変化する心拍数は、人が感じているプレッシャーのバロメーターの一つです。
人はプレッシャーを感じる中で、呼吸が浅くなり心拍数が高くなる傾向にあります。深呼吸は心拍数を落ち着かせる効果があるため、日頃の習慣として取り入れることでプレッシャーに負けないための身体づくりを助けます。
瞑想を行う
プレッシャーを感じたとき、冷静な精神状況を作り出せれば、パフォーマンスを改善することができます。瞑想は冷静な精神状況を作り出すための強力なツールです。
人は重圧を感じるほど、思考がかき乱され、冷静な判断を下すことが難しくなります。そういうときにこそ、あえて時間を取り瞑想をしましょう。
日々の習慣に取り入れることで、客観性を高めることや感情をコントロールする力を強める作用もあると考えられています。
体を鍛える
体を鍛えることも、プレッシャーに打ち勝つための有用な方法の一つです。体を鍛える筋肉トレーニングや適度な有酸素運動は自律神経に刺激を与え、感情のコントロール力を高めてくれるでしょう。
デスクワークが多い方こそ、日頃から運動の習慣を積極的に取り入れることで、プレッシャーに負けない身体づくりをしましょう。
プレッシャーを味方につけよう
プレッシャーと聞くと、ネガティブなイメージを持つ方も多いことでしょう。しかし、プレッシャー自体に良い・悪いということはありません。考え方・捉え方一つで、仕事を進めるうえでの強力なサポーターにすることが可能です。 プレッシャーを味方につけ、仕事の経験を重ねさらなるスキルアップを図り、プライベートともに充実した生活を送れるようになることを願っています。