8月17日、ライブ配信アプリ「17LIVE (イチナナ)」を提供する17 Media Japanの代表取締役 小野裕史氏が、親会社であるM17 EntertainmentのグローバルCEOに就任した。小野氏がグローバルCEOに就任した経緯、そしてイチナナの魅力とライブ配信の未来について話を聞いてみたい。
小野裕史氏は、東京大学で生物学を専攻したのち、2000年にIBM システムズ・エンジニアリングに入社。その後シーエー・モバイルに転職し、2008年に同社専務取締役を退任するまでに約200億円の売り上げを達成したという経歴を持った人物だ。退社後はインフィニティ・ベンチャーズLLPを設立し、「ジモティー」や「MUSE & Co.(ミューズコー)」、「freee」といったさまざまな分野のベンチャー企業へ投資を行っている。
ライブ配信アプリ「17LIVE (イチナナ)」を展開する17 Media Japanもその1つであり、初めて投資を行ったのは2012年のこと。株主だった小野氏とJoseph Phua氏のディスカッションが盛り上がり、小野氏が日本においてイチナナの展開を主導することになる。
小野氏はもともと2008年から個人的にライブ配信を行っており、Ustreamにも投資していたという。とくに有名なのが、2009年にWii Fitをきっかけに始めたランニングのライブ配信だ。
「イチナナは、ライブ配信のインタラクティブコミュニケーションに特化したアプリです。インタラクティブコミュニケーションの魅力は、1999年に誕生したi-modeから基本的に変わっていないと思います。それは、手のひらの端末から即座にコミュニケーションが取れるということです。当時はそれがメールでしたが、ライブ配信はこれに肉声がついて、映像がついてと進化してきたものにすぎません」
その手腕によって、イチナナを日本No.1ライブ配信アプリに成長させた小野氏。役目を終え、自身に変わる経営者を探し、17 Media Japanを引き渡そうと考えていたところ、2019年の夏あたりにJoseph Phua氏から別の相談を受けた。その内容こそ、M17 EntertainmentのグローバルCEOとして辣腕を振るってほしいというものだった。
17LIVE (イチナナ)が提供するのはコミュニケーション
インタラクティブコミュニケーションに軸を置いたイチナナは、他のライブ配信アプリと比べて配信者のハードルが圧倒的に低いのが特徴。ボタンを押すだけで配信でき、編集も不要。視聴者は配信者の視点、肉声、そして表情を見ながら双方向にコミュニケーションが行える。そして、リアルタイムでライブ配信コンテンツに関われることが大きな魅力といえる。
「人間にとってコミュニケーションは欠くことのできない重要なエンターテインメントです。新型コロナウイルスの流行によってWeb会議サービス『Zoom』が普及し、オンライン飲み会が流行りました。生のコミュニケーションの価値というのはとても高いのです。ですが、Zoomでは決まった人と示し合わせて繋がることしかできません。それに対してイチナナは突発的にでも繋がることができます」
実際、日本で緊急事態宣言が発令されてから、イチナナでのライブ配信の数は順調に伸びているという。その流れは緊急事態宣言が解除された今でも変わらず、ライブ配信は解除後もむしろ広がりを見せている。一度ライブ配信の利便性を理解したら、離れられない。
同時に、コロナ禍によってライブ配信の内容も多様化した。ペットショップや格闘家など、これまで生で活動していた人たちが次々にライブ配信を開始し、可能性を広げている。ライブ配信によって商品をアピールしていく「ライブコマース」も今後はさらに伸びていくだろう。
「日本においてライブ配信はいまだ広まっているとはいえず、まだ黎明期に近いかもしれません。ですが、そのぶん伸びしろが大きいサービスと言えます。中国や台湾では、すでに街中でご飯を食べながら配信したり、観たりしていますが、同じようなことが日本でも起きると考えています。すでにYouTuberの動画配信は当たり前のようになっていますが、同じようなことがライブ配信者にも起きるのです。ライブ配信がもっと身近になれば、例えば地方のゲートボール大会が当たり前のようにライブ配信を行う、という世界になるでしょう」
ライブコマースが普及することで「ライブだから売れる」という認識もまた広がっていくだろう。いまはまだ個人のパフォーマンスによって商品を見せるという形だが、実経済においても影響力を広めていきたいと小野氏は語る。
小野氏が考える仕事、そして人生の楽しみ
投資家として、先進的なベンチャー企業を育ててきた小野氏。多くの成功を収めてきた同氏の成長の秘訣を次のように話す。
「個人の成長なくして会社の成長はあり得ません。そして難しい仕事をこなしてこそ成長があります。筋トレをするとき、重いダンベルをもって筋肉に負荷をかけますよね。それと同じで、タフな環境に自分の身を置くことができる人が成長を続けることができるでしょう」
そして20~30代のビジネスパーソンに対して、次のようにメッセージを贈った。
「イメージの良い会社に入るのも、お金を稼ぐのも間違いではありませんが、自分が本当に面白いと思って心を燃やしたいと思えることに打ち込んでほしいと思います。人生において、心が躍らない仕事をする時間はとてももったいない。情熱を傾けられるものに出会えたらそれに対して打ち込むべきです。ビジネスの時間は人生において非常にシェアが大きいのですから、そこに自分の時間を費やすことで人生を楽しむことができるでしょう。自分の心の声に従う、これは意識しないとできないし、とても大切なことなのです」
「イチナナはまだそれほど中身を知られていないし、どうなっていくかわからないと思っている人も多いでしょう。ですが、ライブ配信は大きな可能性を秘めたサービスです。業界を変えたいと思う人を当社はお待ちしています」