俳優の長谷川博己が主演を務めるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)で、将軍・足利義輝を演じている向井理。混迷する京の情勢に翻弄され、近江と京を出入りすることを余儀なくされた悲劇の将軍をどのように演じているのか。役作りについて、また、明智光秀役の長谷川博己らとの共演について語った。
■「没落してゆく将軍家を感じながら、武家の棟梁であるプライドも」
13日に放送される第23回「義輝、夏の終わりに」は、サブタイトルに義輝の名前が入っている。光秀(長谷川)は、京で三好長慶の子らによる義輝暗殺計画の噂があると聞き、裏で糸を引いているという松永久秀(吉田鋼太郎)に真意を問いただすと、松永は「義輝はもはや将軍の器ではない、このままでは世が治らないので、殺しはしないが追放するつもりである」と告げる。
向井は、義輝について「長く続く足利の時代にあって、その終焉の始まりにあたる人物だと思います。重んじてきた伝統と、時代と共に押し寄せる新たな勢力の狭間で揺れる難しい情勢の中で懸命に生きていたのだと想像します。争い事の無い世の中を願う所が魅力なのではないでしょうか。その姿を見て、光秀も何かを感じたのかもしれません」と語る。
演じる上では「没落してゆく将軍家を感じながら、武家の棟梁であるプライドも持ち併せているところ」を大切に。「13代目まで続いてきた重みと、いずれ滅びる儚さを両立させることは意識してきました」と明かし、「いつまでも麒麟が来る道を模索していたように思います。ただ、どこか達観している部分もあり、終盤は自分の行く末をわかっているような気持ちでいました」と説明する。
そして、義輝の波乱万丈な人生について、「新しい時代が来るということは、古い時代が終わるということです。その時代の中心にいた人物で、自分の力や想いだけでは抗えず、時代に搦めとられたような人です。ただ可哀想という気持ちはなく、その時代の中でも懸命に生きることでその生き方を踏襲する人物もいたと思うので、その功績はあったのかと思います」と冷静に分析する。
■長谷川博己のリアクションに助けられた
長谷川とは本作が初共演。「役柄の立場はありますが、こちらが色々と吸収できればと思っていました。長谷川さんとのシーンは私が話すことが多く、長谷川さんはそれに対してリアクションする事が多かったです。リアクションはとても難しく、一つのリアクションでシーンが左右されます。それをとても丁寧に演じておられて、とても助かりました」と振り返り、「とても実直で、裏表が無い光秀です。本能寺の変を起こす張本人ではありますが、成すこと全てに説得力がある長谷川光秀さんなので、今までの光秀像を根本から変えられるのではないかと拝見しております」と長谷川演じる光秀の魅力を述べた。
また、三淵役の谷原章介と藤孝役の眞島秀和との共演について、「谷原さんはドラマでは初めて共演したのですが、お芝居はもちろん、普段話している会話もとても多彩で、スタッフ、キャスト分け隔てなく接する姿が印象的でした。眞島さんは10年振りの共演でしたが、相変わらず誠実な性格とお芝居で、役柄上ではありますが、とても支えられました」と語った。
義輝について描かれる第23回。向井は「十兵衛(光秀)とのシーンは、将軍とはいえ一人の人間の危うさのようなものがあり、印象的でした」と述べ、今後の見どころについて「足利家が失墜していく様です。人間は移り気で、その時や周りの環境で変わります。いろんな義輝をお見せできれば幸いです」とアピールした。
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